傷薬

とても年代物の傷薬を持っている。薬にも使用期限があるので、古い物は使わないほうがいいと言われそうだが、これは市販されているものではなく手作りなので、その辺りはよく分からない。薬と言っても、焼酎に”とちの実”を漬け込んだものなので、ビンの蓋を開けるとプ〜ンと焼酎の匂いがする。お酒には何十年前に造ったものがあるし、飲む訳ではないので古さは気にしていない。

これを、すり傷や切り傷に綿棒で付けると、あ゛〜っ!と声が出るくらいに染みる。傷の痛みよりも、痛いかもしれない。ただ、非常によく効く。数回付けると、傷口はふさがってしまう。料理をする時にバンソウコウを貼るのはイヤなので、よく手の切り傷に使っている。

両親の知り合いの方が毎年大量に作り、あちこちに分けて下さっていたのだが、私の両親も亡くなっているので、その作り方を知るすべはない。どうやって作るのだろうかと思っていたのだが、今ならネットで調べられる。とちの実と薬をキーワードに検索をしてみた。

そうすると、青森あたりで焼酎にとちの実を漬け込んだものを薬として使っていた、と記載されたページを発見した。ただし、それは布に染み込ませて打ち身などに貼るという、湿布のような使い方だった。そんな使い方があるとは知らなかった。いずれにしても、”とちの実”が手に入らなければ作ることは出来ない。

先日、知り合いの方が飛騨方面へ旅行へ行ったそうで、お土産に「とちの実せんべい」をいただいた。どうやら飛騨にもとちの木は生えているようだ。このあたりにも生えているのだろうか、実の成る季節はいつ頃だろうかと、切り傷を作る度に思ったりしているのであった。