水菜

「嫌いな食べ物はありません。」と言っているが、実は”水菜”は少し苦手だった。2〜3年前から全国的に売られてるいるようだが、大阪に来てから初めて見たものだったし、当然食べたこともなかった。スーパーで見かけても1束の量が多すぎて、試しに買ってみようとも思っていなかった。

当時は自宅にパソコンもなかったので、今のようにネットで簡単にレシピの検索をするという訳にもいかなかった。やがて、関西ローカル番組のお店や料理を紹介するものを見てから、「ハリハリ鍋」の存在を知り、その鍋に使われているのが”水菜”であるという事を知った。量が多く安かったので、買ってみたいと思いつつ、毎年スーパーに並ぶと立ち止まっては眺めていた。しかし「ハリハリ鍋」以外の使い方がわからなかったので、結局は手を出さないということが、数年間続いた。

その後、いつも仲良くしてもらっているご近所のおばあさんから、”水菜”をいただいた。大根、ナス、キュウリ、玉ねぎなど、おじいさんが作っている美味しい野菜をいただいたことはあったが、水菜はその時初めていただいた。これは「ハリハリ鍋」を作ってみるしかないと思ったが、正確に記憶していなかったので、何となくハリハリ鍋風のものを作って食べてみたが、入れる量が多すぎたのか水菜のほろ苦い味と香りしかしない鍋になってしまった。

いつもならば「ご馳走様です。美味しかったです!」と、おばあさんに会った時には挨拶をしていたが、この時ばかりはどう言っていいのか分からなくなってしまった。ただ当時ご近所に住んでいた新婚さん夫婦に率直な感想を言ったら、「嘘はいけない。苦手ならば今後は貰うべきではない。」と言われ、深く反省をした。

そして、「水菜は食べたことがなかったので、鍋に入れてみたけれど苦手だった。」という事をちゃんと伝えた。おばあさんは少し悲しげな表情をしていたが、うちで貰うより他の方に差し上げて下さい、と言うしかなかった。翌年も、水菜あげようか?と言っていただいたが遠慮をした。

毎年のように、水菜あげようか?と言っていただき、せっかくですがとお断りをしていた。昨年は、「水菜は油で炒めて、少し醤油で味を付けたら美味しいよ。少しだけ試しに作ってごらん。」と、ほんの一握りの水菜を渡された。ここまで言っていただいたら、作って食べてみるしかないと思い、数年ぶりに水菜をいただいた。おばあさんから聞いた通り、サッと湯通ししてから適当な長さに切り、油で炒め醤油で味を付けると、美味しかった!ご飯にも良く合う!これなら食べられる!

今年も、おじいさんが畑で作った水菜を何度かいただいた。毎回同じ作り方しか出来ないが、全く飽きることはない。今は油揚げや人参の千切りを加えたりして、すっかり定番のおかずになっている。という訳で、苦手だった水菜を克服できた。ただ、お買物日記に書いているが、お店で買ったことは一度もないのであった。