環太平洋戦略的経済連携協定、いわゆる TPPの交渉参加がようやく表明された。
農政、医政、その他の団体からの圧力も相当なものだっただろうが、すでに日本は世界的潮流に乗り遅れ、もうすぐ周回遅れになりそうなほどの差がついてしまっているので待ったなしだったのも事実だ。
農業関係者は、それが殺し文句、必殺の呪文でもあるかのように 『農業の壊滅』 を口にするが、このままでは TPPに参加しようがしまいが先細って壊滅してしまうのは時間の問題であり、国からの手厚い保護、補助金目当てのゴネ得を狙っていると疑われても仕方ないだろう。
農業従事者の高齢化、後継者不足から耕作放棄地面積は年を追うごとに広がっているし、日本の人口はピークアウトして今後は減っていく一方なので国内需要が拡大することはない。
以前から雑感で何度も書いているように、日本の国力は低下の一途をたどっているので、世界は日本のことなど眼中になくなるだろう。
中国、インド、ブラジル、そして最近になって注目され始めたバングラデシュ、アンゴラ、ナイジェリアなどが爆発的に経済発展し、同じく爆発的に人口が増加した場合、このままでは日本など二等国、三等国に成り下がり、貧国ゆえに購買力もなく、食料やエネルギーを輸入することすら難しくなる可能性が極めて高い。
その時になって
「関税撤廃するから食べ物ちょうだい」
などと言っても世界から無視されるだけである。
コメ農家が特に声高に農業壊滅を叫んでいるが、関税を撤廃したところで溢れんばかりの米が日本に入ってくることなどあり得ない。
日本の米の総生産量は年間約 900万トンだが、世界中で作られているジャポニカ米はわずか 30万トンにしかすぎず、それをすべて輸入したとしても全体の 3%にしかならないし、欲しくてもそれ以上は手に入らないではないか。
今は日本食ブームで世界各国に寿司バーがあり、その外食産業でもジャポニカ米を必要とすることから、日本には全量は入ってこないだろう。
残りのたかが1-2%を輸入したとして、なぜコメ農家が壊滅するのか疑問だ。
農水省でも農協でも米を作っている時次郎さんでも、その嫁の歌江さんでも誰でもいいから合理的な説明をしていただきたいものである。
医政にしても、新薬の認可が円滑で早くなれば、命を救われたり苦しみから解放される人がそれだけ多くなるのだから患者さんにとって朗報だ。
医療機器が安価に導入できれば中規模、小規模な病院でも最新技術の導入が可能になるかも知れず、それは田舎に暮らす人たちも高度医療を享受できるということでもある。
混合診療が認められたら今まで全額負担をしていた人たちは一部でも保険が適用されるので経済的負担が軽くなるし、高度で高額な医療を受けることを躊躇していた人の命も助かるだろう。
ただし、医者が損得勘定だけで今まで保険適用だった医療行為を適用外にする可能性も否定できないらしいので、それは監督官庁が厳しく規制する必要があるかもしれない。
TPP反対の声を上げ、医療崩壊、医療格差を問題視する人たちの論点はこの一点に尽きる。
つまり、デタラメに保険適用外にすることを禁じさえすれば問題はクリアになるのであり、声を枯らしてまでTPP反対を大声で叫ぶ必要性などないだろう。
医療にしても日本の人口減が続けば患者数も減り、今の病院数、医師の人数は必要なくなることは眼に見えているので、ここはTPPに参加して日本の高度医療をアジアに展開するくらいの気構えを見せるべきだと思う。
TPPに参加せず、このまま工業や生産設備が海外移転を加速させた場合、収入の 70-80%をしめる出稼ぎ、副業ができなくなる農家が続出するものと思われ、そうなれば農地を捨てざるを得なくなるであろうから、どのみち農業は壊滅するのではないだろうか。
変化を恐れず、関税撤廃はビジネスチャンスと捉え、今こそ日本の産業構造を一気に転換させるべきなのではないかと思う。