自分には収集癖というものがない。
子供の頃、切手収集している友だちに感化されたことがあるが、それも長くは続かず・・・というより、ごく短期間で興味を失い、わずかながら集めた切手を譲って収集をやめてしまった。
スナック菓子のおまけとして手に入るプロ野球カードも数十枚は持っていたが、存在するカードをすべて集めようなどという気はなく、その数十枚も集めている友だちに譲ってしまったし、仮面ライダーのカードもあったが結末は同じようなものだ。
以前の雑感にも書いたように子供の頃から芸能人の大ファンになることもなかったので、特定の人のポスターや CDなどを買い揃えたこともない。
ギリギリのガンダム世代で、確かにアニメは好きだったので複数のシリーズは見たものの、マニアのように DVDを買ったりガンプラと呼ばれるプラモデルを組み立てたり、何万円、何十万円もするようなフィギュアを買うこともなかった。
一から十まで揃えたものと言えば、ある作家の小説を単行本で何百冊も保有していたことはあったが、大阪から北海道に越してくる際に処分してしまったので今はない。
今は海外ドラマばかり見ており、中にはとても好きなドラマもあるが、録画したものを保存しているのは 2作品のシリーズのみで、その他のものはすべて消去してしまっている。
この、物に思い入れがなく、物に頓着しない性格は、どうやら親譲りらしい。
三歳の時に妹に死なれているため限りなく一人っ子に近いので、普通であれば溺愛されて宝のよう育てられ、ありとあらゆる思い出の品がありそうなものだが、そういったものは手元にも実家にも存在しないのは、親が自分と同じような性格だからなのだろう。
いや、この親にしてこの子ありといったところか。
実家を出て一人暮らしを始め、最初は年に何度も里帰りをしていたが次第に足が遠のき、一年に一度、二年に一度と間隔があいていった。
ある日、数年ぶりに帰省したところ実家が建て替わっている。
豪雪地帯に建つ実家の二階から落ちた凍り固まった雪が、一階の屋根に大きな損傷を与えてしまったため建て替えることにしたらしいのだが、そんな話しは聞かされていなかったので外観も変わってしまった実家に驚いた。
そして、さらに驚いたのは以前の家に存在していた子供部屋、つまり自分が子供の頃から実家を出るまで過ごした思い出の部屋もなく、そこに収められていた学習机やベッド、その他の置物や小物まで一切のものが残っていなかったことだ。
父親にも母親にも収集癖はなく、物に執着しないので我が子も同様であろうと勝手に処分した結果なのだが、それに対して自分は一瞬のとまどい、驚きを感じたものの、寂しさも腹立たしさもなかったので相談されてもされなくても結果は同じだったことだろう。
そして、それを機に処分したのか、最初から保存などしていなかったのか、子供の頃の成績表、持ち帰ったテスト用紙、卒業証書、学校で書いた絵、市が主催する絵のコンクールで最優秀賞をとった賞状、その時の絵、子供の頃の声が録音されているテープなどなど、ちょっと気の利く親、思い出を大切にする親なら保管しておくであろうものも綺麗さっぱりと無くなっていた。
さすがに我が子の誕生は嬉しかったらしく、生まれてすぐから小学校低学年までの写真は何枚か残っているが、それとてアルバム一冊に収まる程度の枚数でしかない。
そして自分も親と似たり寄ったりで、若かりし頃に遊びまくった友だちとの写真、仕事や社員旅行で何度か行った海外旅行の写真も残っていないし、そもそも撮影すらしなかった。
子どもの思い出の品を何ひとつ保存しておかないクールな親、それに腹も立たなければ悲しくもない子、やはり我が家には物に頓着しない血が流れているものと思われる。