健康診断 2009 序盤戦

それは 16日から始まった

検便のための採取は提出日の 5日前からとの指示だったので、トイレで頑張ってみたのだが、まるで出る気配がない。

そう、自分は男のクセに便秘体質なのである。

そういえば子どもの頃、あまりにも便が出ないので何度となく病院に連れて行かれ、浣腸をしてまで排便させられていたのを思い出す。

毎日出ないのが普通であり、それでも極端な便秘にはならず数日に一度の割では出るのであまり気にしてはいなかったが、期日内に出さなければいけない場合には考えものだ。

しかし、期日までには何とかなるだろうとその日は諦め、なかば開き直った状態でフテ寝したりしてみたところ、翌 17日の夕方になってお腹がゴボゴボと音をたてはじめて明らかに出る兆候を示し始めたのでトイレに駆け込んで無事に採取することができた。

20日の朝 8時がリミットなので残り 2日でもう一度採取しなければならないのだが、翌日もその翌日もさっぱり出る気配がない。

19日の夜になって、いよいよ焦りも頂点に達し、何度かトイレに行って 「う~~~ん」 と頑張ったりしてみたものの、頭がクラクラするだけでまったく便意をもよおさない。

翌朝になって運良く出るなどということは考え難く、何としてでも今晩中に採取してしまうか、「すみません、一回しか出ませんでした」 と素直に謝るかのどちらかだと切羽詰った状態になって思ったのだが、特に女性はもの凄い便秘の人がいる訳で、2-3日どころか 5日も一週間も出ない人だっているはずであり、世の中には一度しか採取できない人、ひょっとすると期日までに一度も採取できないひとだっているかも知れない。

それならば何も必死になって肛門がはずれそうになるほど頑張らなくても良いのではないかと、開き直りにも似た思いで心を落ち着けて就寝前にトイレに向かうと、まるでウサギか鹿のフンのような硬くてコロコロしたものがポロリと出た。

検査のための準備も整い、翌朝は気合を入れて病院に向かう。

何せ生まれて初めての胃カメラをしなければならず、何日も前から不安と緊張の中で過ごしたが、もうここまでくれば覚悟を決め、ちょっと太いうどんを飲み込んでやるんだくらいの意気込みで向かわなければいけないのである。

受付を済ませ、やっとの思いでひねり出した検便のキットを提出し、着替えを済ませて尿検査のための採取をして検査ロビーのイスに腰をおろす。

この病院の施設は実に合理的にできており、廊下の受付カウンターの正面が着替えのロッカー室、そこから数歩のところに検尿用トイレ、その廊下から受付カウンターの横を通って中に入ると待合のロビーがある。

そのロビーを中心に身長、体重を計測する場所、視力検査の場所、腹回りの計測、聴覚検査室、心電図の部屋、胸のレントゲン室、お腹のレントゲン室、問診、触診のための診察室、採血のカウンターが左回りにぐるりと囲んでいる。

ロビーのイスに座っていれば、すべての部屋が歩いて数歩のところに配置されているため、流れ作業のように検査は進む。

まずは身長と体重の測定で、去年より約 1.5Kg ほど増えていたが、去年の夏に始めた禁煙が今も続いているので、それが原因であろうと容易に想像がつくし、増え続けた体重も今は落ち着いているのでこれ以上の増加をくい止めれば良いと思っている。

視力は去年より明らかに悪くなっており、自動車の運転をする場合にはメガネをかけなければいけないレベルになってしまったが、車には乗らないし普段の生活ではテレビに映し出される細かな文字が見えない程度であり、それ以上の不自由は感じていないので気にしないことにした。

聴力は耳が遠くなった気はしていないので問題ないし、心電図はたった 30秒くらいの検査で何もでるはずがないので、はなから気になどしていない。

胸のレントゲンは結果が出るまで分からないし、血液検査も同様だ。

診察室に入り、それまでの結果を踏まえて問診と触診を受ける。

あお向けに寝かされて腹をグニグニされたが痛みもなく、足を組んで金づちみないなものでヒザ下を 「コン」 とされるとつま先までビビーンと跳ね上がるので脚気(かっけ)にもなっていないらしい。

上述した部屋の今回は受けない腹部レントゲン室以外を全て回り終わり、ふと気づいたのだが胃カメラをする部屋がない。

そして、それ以外を先に全て終わらせたということは、途中でできないほど胃カメラとは大変な検査なのかもしれないと、不安感と緊張感に再び襲われる。

書類を持った女性がツカツカと近づいてきて、「それじゃあ胃カメラをするところにいきましょうか」 と、じっとこちらの目をみながら静かに言った。

そして無言のまま彼女の後に続き、冷たい廊下をスリッパのまま進む・・・・・

次週、いよいよ怒涛の 『胃カメラ挿入編』!!
そしてそこに映し出されたものとは!?