需要と供給

資源は供給量を大きく増やしたり減らしたりすることが難しく、常に一定でしかない。

たとえば希少金属である金とかパラジウムなどは需要が多いからといって大量に供給できるものではないのである。

なにせ埋蔵量が決まっているので新たな鉱脈でも見つからない限りは全人類が限りある量を分け合うしかない訳だ。

そこで、高くてもほしいという欲求が生まれ、価格が高騰する。

たとえダイヤモンドであろうと、誰も必要としなければ一円の価値もなく、見向きもされない石ころに過ぎないが、それを欲しがる人がいるから値がつき、欲しい人が多いほど価格は高騰する。

それは石油にしても小麦粉にしても同じだ。

原油価格が高騰しているのは、これから先も中国は発展を続け、インドやブラジル、ロシアも経済が拡大していくものと予想されるためだ。

そうなれば電気が必要になり、発電に必要な石油も需要が膨らむし、中国北部やロシアなどは日本より圧倒的に寒いので暖房のための石油も必要になるだろう、プラスチックなど石油から作られる製品、石油由来成分が含まれる化粧品なども豊かになれば必要とされるだろうし、もっと発展すれば自動車の保有率も上がってガソリンも消費される。

それら全てのことを見込んで原油価格は高騰しているので、これから先も値下がりすることは考えにくい。

世界経済が回復すれば電子機器や自動車の生産も復調するだろう。

それが分かっているから製造に必要な希少金属や鉄などの価格が高騰する。

ところが、その資源を使って生み出される製品は値上がりしないどころか値下げ圧力が強いのがメーカーの頭を悩ませる。

たとえばエコカー減税で売れに売れたトヨタのプリウス。

あれだけ引き合いが強く、生産が追いつかない現状を資源に当てはめれば、大きな需要に対して供給が不足しているのだから値上がりしても良いはずなのに、メーカーは休日返上で増産して供給量を増やそうとする。

値上げどころかライバルのホンダ車、インサイトに負けないように値引きまでして販売している。

原材料価格が上がっているのに値下げしなければならないという矛盾。

今は食べ物の原材料から繊維まで何でも値上がりしているのに物価は上昇しないし、安売りが横行して再びデフレの様相まで呈してきた。

販売価格に対して原材料の占める割合が大きい豆腐とか納豆など、本来であれば現在の倍の価格で売らなければ適正な利益が得られないはずだ。

それなのにスーパーなどの特売の目玉にされることが多く、販売店側の圧力に屈して安く卸すしかないメーカーに明日はあるのか。

資源高と値下げ圧力に耐え切れずメーカーの数が極端に減った場合、大きな需要に対して供給量が極端に細り、今度は売り手側の言い値で販売されることになり、遥か昔にあった定価販売の時代に逆戻りするかもしれない。

この負のスパイラルを断ち切らなければ、メーカー側も消費者も結果的に誰も幸せになれないような気がする。

だからと言って、その解決策、特効薬を持ち合わせているわけでもなく、買いたいものがあれば一円でも安いものを選んでしまう自分だったりするのではあるが・・・。