5年半前にもテレビ離れについて書いたが、各局が必死に視聴者を惹きつけようとする努力にもかかわらず視聴率の低迷、業績の低迷に歯止めがかからないでいる。
そもそも努力の仕方が間違っているので回復するはずもない。
インターネットの普及、スマートフォンの普及によって動画視聴が当たり前となり、いわゆる違法アップロードなどによってテレビ番組が不当に視聴されているというのがテレビ業界の認識で、それを打破しようと『民放公式テレビポータル』を立ち上げ、ユーザーをそちらに誘導して動画再生させ、動画広告の収入を得ようとしているが、ユーザーはそこまでして番組を見たいとは思っていないだろう。
これは音楽業界が音楽配信や違法アップロードによって CD販売が低迷していると主張していた十数年前に酷似している。
デジタル配信の普及によって、いわゆる版権や原盤権を持つレコード会社の利益は激減したかもしれないが、著作者に支払われる対価が不当に減っていない限りはビジネスモデルが大きく変化しただけのことであって、ネットの普及や違法行為が問題なのではない。
つまり、流通の中間マージンを省いた物品販売と同様に、今まではプロダクションやレコード会社を仲介し、さらには CDをプレスして製品に仕立てる業者、CDの卸業者まで仲介してCDショップに並んでいた楽曲が、作者の手からダイレクトにネット販売業者の手に渡るようになり、間に入る業者が一掃されたに過ぎない訳だ。
そして、音楽プレーヤーを持ち歩かなくてもスマホに何千曲も入る時代になっては、CDというメディアを必要としなくなるのは当然だろう。
そんな単純なことに気づかず、ただネット憎し、違法アップロード許すまじと叫んでいた業界は衰退して当然である。
話を元に戻してテレビ業界。
ネットが業績低迷を引き起こしているのではなく、ネット時代について行けていない業界の古い体質そのものが問題であることを認識したほうが良いだろう。
それはネットで番組を見られるようにするとか、ネット連動型のテレビ番組を制作するとか、そういう小手先の解決法では決してない。
もう番組作りそのものが古く、見る側にとって何の魅力もなくなってしまったことを自覚すべきだ。
良質なドラマ、良質な歌番組、良質なドキュメンタリーはまだテレビで放送すべきコンテンツだと思われるが、すでに解決したり、もうすでに発生している事件などを伝えるニュース番組はネットニュースを見ている人たちにとって何の価値もない。
アメリカの CNNやイギリスの BBC、カタールのアルジャジーラのように、24時間ニュースを追い続け、今起きていることをリアルタイムに伝えるようなメディアでなければ生き残るのは難しいのではないだろうか。
そもそも、今の時事にしても芸能ニュースにしても、ネットで話題になったり、芸能人がネットで発表したことを後追いで放送しているだけなので報道でも何でもない。
それの原稿を書き、定時になって放送する時には多くの人がすでに知っているのでニュースでも何でもないではないか。
今はまだネット難民と呼ばれる人が存在し、テレビやラジオのニュース、新聞でしか情報を得られないこともあるが、現在 40代以下の人たちは、ほぼ 100%がネットでの情報取得が可能だと思われるため、あと2-30年も経たないうちに後追いのニュースは必要なくなるものと思われる。
それまでに海外のように 24時間ニュースチャンネルを軌道に乗せておかなければ新聞社、テレビやラジオのニュース番組は壊滅状態になるのではないか。
それ以外のテレビ番組も実につまらない物が多いのに加え、昔ながらの手法で視聴者を惹きつけようとするものだから見ていて鬱陶しくて仕方がない。
よく使われるのが俗に言われる CMまたぎというやつだ。
最近は報道番組もバラエティー化が進んでいるため、事件を伝えている途中、
「犯人の心の闇に迫った」
とか
「はたして犯行の動機とは」
などと盛り上げておいて CMに行く。
そして、CDが明けると心の闇に迫るとか言っておきながら高校時代の知り合いに話しを聞いてみたり、小学校や中学校の卒業文集に犯人が書いていた内容を紹介する程度だったり、結局は犯行の動機など分かるはずもなく、近所に住む人が最近は少しイライラしていたみたいだという程度の情報でお茶を濁す。
そんなことの繰り返しなので、CM前にどんなに話しを盛り上げてもバカバカしさしか伝わってこない。
ましてネット世代は解を求めて検索し、できるだけ早く答えにたどり着こうとする。
そんな世代を相手に CMまたぎなどの手法で惹きつけようとするのは無理だろう。
早く知りたいのに気を持たせるようなことをされては反感しか覚えない。
スポーツニュースも同様で、そのスポーツに興味のあるネット世代であればすでに結果は知っている。
それなのにサッカーであればシュートを放った瞬間、野球であればピッチャーが投げた瞬間、またはバッターが打った瞬間に
「結果はどうなるーーっ!」
と CMに行かれても
「アホかっ!」
と思われるだけだろう。
他のバラエティー番組でもそうだが、盛り上げに盛り上げておいて CMまたぎという手法は今の世代には通用しないし、逆効果だということに早く気づいたほうが良い。
パソコン、スマホを駆使する世代は途中経過など無視してでも早く結論にたどり着きたいのである。
そういうことを理解した上で、どのような番組作りをすべきか検討すべきだと進言しておくことにしようと思う。