テレビの行方

地デジ(地上デジタル放送)が始まり、ノイズのないクリアな映像を楽しんでいる人も多いだろうし、デジタル・ハイビジョンで超鮮明画像を見ている人もいるだろうが、我家では未だにブラウン管テレビでアナログ放送を観て、ビデオテープに録画している。 薄型テレビも DVDレコーダも低価格化が進んだので買い換えても良いのだが、いろいろと思う所があるのである。

『納得!買っとく?メモっとく』 にも書いているが、薄型テレビでは液晶でもなく、プラズマでもなく、有機ELが量産体制を確立し、低価格化が進むのを待ちたい。 DVDは 120分しか録画できないので、HD-DVD と Blu-ray(ブルーレイ)Disc の規格争いが決着するのを待ちたい。 おまけに現在はコピー制限によって一度しか録画できないデジタル放送が来年には 10回までに緩和されるので、それを待ちたい。

それもこれも、『管理人の独り言』 にも何度か書いているように、アメリカに住む義兄に日本のテレビ番組を録画して送っていることも大きな要因となっている。 現在は 120分のビデオテープを 3倍速で使い、計 6時間分を録画して、それを何本もまとめて発送しているのだが、DVDだと 120分しか録画できないので無駄が多い。 おまけにコピー制限があると、我家でも保存しておきたいというのが不可能だ。

そこで、長時間録画が可能な HD-DVD か Blu-ray が普及し、コピー制限が緩和された 『ダビング10(テン)』 規格のレコーダが発売されるのを何が何でも待ちたいところなのであるが、この計画を進めるためには義兄にも再生機を購入してもらう必要があり、だとすれば廃れる技術よりも普及が確実な方を選択せねばならず、したがって一刻も早く規格争いに終止符を打ってもらいたいと願っているのである。

しかし、こうやってあれこれと考えていること自体が無駄になる可能性も否定できないのが技術の進歩の早さだ。 アメリカでは 『joost(ジュースト)』 というインターネット上のサービスが爆発的に広まりつつあり、それが日本への上陸を目指している。 このサービスは 1万5千以上のテレビ番組を好きな時間に観られるもので、CMを早送りで飛ばすことはできないが、すべて無料で見ることができる。

日本からでも会員登録すれば 『MLB(メジャーリーグ)』 の試合を観たり、『MTV』 で最新の音楽情報を観れたりもする。 しかも、各番組は一カ月間程度は ”保存” されているので、好きな日の好きな時間に観ることができるのである。 このサービスが日本上陸を果たせば、番組を録画してアメリカに送る必要がなくなるだろう。 すでに日本のテレビ各局と交渉に入っているらしいのでサービスの開始は近いかもしれない。

『joost』 のサービス開始を待たなくても日本のサービスで 『Gyao(ギャオ)』 とか 『ドガッチ』 という無料番組配信サービスもあるし、各テレビ局が配信する 『第2日本テレビ(日テレ系)』、『みんなで特ダネ!(日テレ系)』、『動画6.1チャンネル(TBS系)』、『テレ朝bb(テレ朝系)』、『あにてれ(テレビ東京系)』、『ワッチミー!TV(フジ系)』 などや、マイクロソフトの Windows Vista で利用できる 『メディアオンライン』 でのサービスが拡大され、テレビなどなくても全番組が観られるようになるかもしれない。

プロテクトによって録画ができず、保存版にできないのが難点ではあるが、単に番組を楽しむ分には願ったりかなったりのサービスであり、録画したものをアメリカまで送る必要がなくなるかもしれない。 言語の違いこそあれ、各国が同様のサービスを開始すれば全世界で全世界のテレビが観られるようになり、仕事の関係や留学で海外に暮らす人にも便利な環境になるだろう。

そして、わざわざ基地局を建設しなくても、ネットを経由すれば全国、全世界に番組を配信できるのだからテレビ局の負担も少なく、『joost』 のように CM料が分配される仕組みであれば収入も得られるので、そういったサービスに番組を提供するテレビ局は加速度的な広がりを見せるかも知れない。

テレビ放送を受信する必要性が薄れたとき、視聴率競争などというのが無意味になり、ビデオリサーチ社の存在意義も問われることになるかもしれない。 何せ、ネットであれば、どれだけの人が視聴したのか正確な数字が把握できる。 テレビ局は多くの人に見てもらえる良質な番組を作ることに専念し、それの配信はネット業界がやって利益を分配する。

これこそが楽天の三木谷氏や元ライブドアの堀江氏が思い描くのとは異なり、真の相乗効果が発揮できるネットとテレビの融合ではなかろうか。