また日本はデフレに入ったかも知れないなどと言われているが、実のところバブル崩壊後のデフレから抜け出せていないのではないだろうか。
2002年の雑感にも書いたようにデフレと言う名の病魔は簡単に克服できるものではなく、何十年と言う歳月を要するものらしい。
事実、イギリスは産業革命によって我が世の春を謳歌していたが新興経済国の台頭によって競争力を失い、1873~1896年もの長期不況に陥った。
その後も競争力を回復させられないまま20世紀に入り、二度の大戦と世界恐慌を経て、1970年代にサッチャー政権が登場するまで、経済の長期衰退が続いた。
その期間は実に 100年。
はるか昔にローマ帝国がデフレになった時も克服するのに 50年くらいかかったという。
日本は大不況を経験してからまだ 20年しか経過していないので、デフレの病巣を突き止め、摘出しきれていない可能性がある。
2000年くらいから経済が持ち直して好景気だったと言われているが、庶民には何の実感もなかったのが事実だ。
実は好況になどなっていなかったのではないだろうか?
数十年先に現状を分析すれば、ずっと下降線をたどっていた折れ線グラフが一瞬だけ上向きかけたもののそれは10年とかのスパンであり、50年、100年単位で見るとグラフは下がり続けているのかも知れない。
2-3年前から少しずつ値上がりした製品も再び値下げに向かっており、チーズやバターなどの乳製品は下落傾向にある。
そして、にわかに注目を浴びているのは PB(プライベートブランド)商品。
イオン、セブン&アイ、ダイエーなどが販売する、自主企画、独自企画商品と呼ばれるものだ。
その品数は多岐にわたり、現在も増え続けている。
庶民としては同じ品質のものが安く買えるのは嬉しいことだし、販売店も利益が出るのであれば双方にとって好ましいことのように思えるが、NB(ナショナルブランド)と呼ばれるメーカーの利益は相当に圧迫される。
研究開発費を投じて新商品を開発、既存の商品に付加価値を持たせても、すぐに真似されて PB(プライベートブランド)商品が出回る。
消費者は安いものを選ぶのでNB(ナショナルブランド)商品が売れない。
メーカーは少しでも売り上げを伸ばそうと価格競争に入る。
適正な利益が得られないので研究開発費の元がとれないという悪循環になってしまう。
例えば食品用のラップ。
日本製は引き出したラップを切りやすくなっているし、丈夫なので途中でちぎれたりもしない。
ところがアメリカやヨーロッパで売られているものは切りにくく、耐久性にも乏しいので箱から引き出している間にちぎれたりもするらしい。
おまけに付きが悪く、ラップをしても剥がれてしまったり、めくれてしまったりするという。
日本の製品が優れているのは、メーカーが消費者の立場になってモノを作り、研究開発が進んでより利便性が高め、発売後にも改良、改善を続けてくれるからである。
どうして日本と同じことができないのかと言えば、それは上述したように巨大資本、巨大な販売力を持つウオルマートみたいな流通業がすぐに PB(プライベートブランド)商品を発売してしまうのでメーカーが適正な利益を得られないまま価格競争に突入してしまい、改良、改善する費用も情熱も失ってしまうからだ。
そしてメーカーの力はどんどん衰え、新商品、改良品が生み出されなくなる。
そして、より便利に、より使いやすくという概念が失われ、進化の袋小路に入ってしまう。
それはメーカーにとっても消費者にとっても不幸なことではないだろうか。
我が家でも PB(プライベートブランド)商品を選んで買ってしまうこと多くなっているが、それはジワジワとメーカーを苦しめているのかもしれない。