運命

昨夜の独り言にも書いたように世界経済は混迷の度を深め、一気にシュリンクしてしまいそうな気配バリバリな訳であるが、そこで大きな損害をこうむってしまうか否かは商才だったり嗅覚によるところも大きなウエートを占めるのであろうことは十二分に理解しつつも、やはり運、不運も多少は関わっているのではないかと思えてしまう。

韓国経済が相当にマズそうなのは 2007年から分かっていたことであるし、中国バブルがいつ弾けてもおかしくないことも同じ時期に懸念されていたことであるから、調子に乗って投資していたにも関わらず引き際を見誤った人は自業自得で 「ざまあみろ」 状態であっても、投資会社に資産を預けて運用を任せていた人にとってはババをつかまされたのも同然であって納得できない部分が大きいだろう。

証券会社や信託銀行に文句の一つも言いたくなるだろうが、資産の運用は自己責任が原則である以上、話は聞いてくれても絶対に金など返してくれるはずがないのであって、日本のバブルが弾けた当時にあったような損失補填などという夢のようなシステムを個人相手に起動してくれる奇特な会社や銀行など皆無であろうから、数日間は涙にむせぶしかないと断言できる。

自己に責任がないにも関わらず不況の波をまともにくらって全身びしょ濡れ状態になりつつあるのが就職活動中の学生たちであり、その光景を目の当たりにして日本経済のバブルが弾けた 90年代のことを鮮明に思い出してしまった。

バブル華やかりし頃に各企業は莫大な金額を投じて保養施設という名目の娯楽施設を建造したり、高級ホテルと見間違うほどの独身寮を完備したり、研修という名の海外観光旅行まで用意して人材確保に躍起になっており、超売り手市場だった学生は、よりどりみどりの中から就職先を 「選んでやっている」 意識が強く、さほどの苦労をせずとも簡単に入社することができた。

しかしバブルがパチンと弾けると世の中は一転し、就職氷河期と呼ばれる学生にとっては暗黒の時代に突入してしまった。

それと同様の歴史が今まさに繰り返されようとしており、サブプライム問題に端を発する世界同時不況の影がチラつく現在は一気に就職氷河期時代に突入してしまうのではないかという気配が色濃く漂ってきている。

たった一年、生まれるのが遅いのか早いのか・・・、いや、3月生まれか 4月生まれかという数日の違いだけで卒業年度が異なり、経済環境が大きく変化してしまったことで就職活動に多大な影響をこうむってしまうことは、不運以外の何ものでもないような気がする。

生年月日による占いなど信じていないが、これだけ多くの人数が一気に不幸になるのを目の当たりにすると、多少なりとも関係があるのではないかと微妙に心が揺れ動いてしまう自分がここにいたりする。

ネットの明日

どこかの大学の何とかいう先生が言っていた。

ネットに未来はないと。

これはインターネットという産業、またはその技術、その可能性を否定したものではない。

論点は、すでに文章化され情報化されてしまっているものはすべて過去のものであり、そこに未来など存在しないということで、つまりはネット上でいくら検索しまくっても、どれだけ時間を費やしても未来を知ることなどできないということである。

確かにそれはその通りであり、ネット上には何らかの予定なども掲載されているが、それらはすでに決定していることであって、テキスト化されてネット上にアップロードされた段階で過去に決定したことを公開しているのに過ぎない。

そして、そこからは、その予定が天災、人災によって中止されることなく無事に始まり、無事に終わるのかまで知ることはできず、仮にその予定が無事に始まり滞りなく終了したとして、それがいったい何になるのか、参加した人に何をもたらすのかなど知るよしもない。

一寸先は闇であり、ネットに限らず未来を知ることなどできないのは世の常であって、そんなものは至極あたりまえのことであるが、ネットには未来がありそうで、バーチャルな空間を漂っていれば未来を見通せるのではないかという錯覚に陥りやすいのが危険なのである。

今後、どれだけコンピュータの性能が向上して処理速度が速くなろうと、世の中の Web ページが 1億ページ、1兆ページ、1京ページ、いや、漢字文化圏における最大単位である無量大数というページが作成されたとしても未来を知ることはできないだろう。

従って、未来のことが知りたくてネット空間をさまようのは時間の無駄でしかない。

シェーバー

先週の金曜日のことになるが、シェーバーを新調した。

木曜日の夜にヒゲを剃っていると肌にジャリジャリした感覚と多少の痛みがあるような気がしていたが、無視してジョリジョリしていたところ左頬に激痛が走ったので慌てて鏡を覗き込むと、浅くはあるが縦一直線に傷ができて少しだけ血がにじんでいる。

手にしているシェーバーを良く見てみるとネットの一部が欠落して小さな穴が開いている上に内部の刃の根元もグラグラしている。

動作が怪しいと少し前から思っており部品交換する必要を感じてはいたりしたのだが、以前の雑感に書いたようにヒゲは濃くないどころか情けない状態であるため、シェーバーなんぞどうだって良いとの思いから (そのうちに) などと余裕の構えでいたのが失敗だったのかもしれない。

危険をかえりみず顔面に傷を負ってまで我慢して使い続けることもなかろうと思い、部品を購入しようと家電量販店に行ったのだが、それがビックリするほど高額であり、ネットと替刃を合計すると軽く 4000円を超えてしまうことが判明した。

そんなに高いのであれば新しくシェーバーを買っても一緒なのではないかと売り場を物色すると、下は 2000円くらいから中には数万円もするような高価なものまでピンキリの品揃えなのが心を迷わせ、ろくにヒゲも生えないくせに自動洗浄・充電機能付きの商品を手に取ったりしてみた。

しかし、どう考えても自分には不釣合いで宝の持ち腐れ状態になってしまうことは自明の理であり、何だったら最低ランクである 2000円程度のもので十分なのではないかと予想される。

高価なシェーバーを陳列棚に戻そうと手を伸ばしているときに店員さんと目が合ってしまい、ひょっとしたら面倒なことになるのではないかという野生の勘がこんな時だけ見事に的中してしまったようで、店員さんはにこやかな表情を保ちつつこちらに向かってくる。

慌ててシェーバーを元の位置に戻してツツツーっと低額商品が並んでいる棚にカニ歩きで移動し、2980円とかの商品を手にとって 「う~む」 と難しい顔なんか作ってみたりしながら横目で店員さんを確認すると棚に戻した超高額シェーバーを手に近づいて来た。

「こちらの商品は切れ味も良く、深剃りもできますのでとても評判が良いんですよ」 との説明に対して 「いえ、ヒゲが薄いから深剃りなんかできなくていいんです」 と応えたが、“敵” はひるむことなく 「使い終わったらこちらにセットするだけでアルコール洗浄しますからとても清潔で…」 と続けてくるので 「そんな機能は必要ないんで」 とぶった切ってやる。

残念そうに商品を棚に戻す店員さんを尻目に棚を見ていると、少しテンションは下がったものの高い方へ高い方へと誘導しようと試みる積極的な攻勢をかけてきたので、「本当にヒゲが生えないんで剃れるだけで十分なんですよ」 と伝えると 「でも少しおヒゲが伸びてきてますよ」 と言うので 「これは二日前に剃ったきりなんです」 と応えたら 「えっ」 と言ったまま絶句してしまった。

結局、最低ランクではないものの部品交換するための金額に少し色をつけた程度の価格で新しいシェーバーを購入し、すっかり意気消沈している店員さんに別れを告げて帰宅したのであった。

禁煙の道

世の中には禁煙を補助するための薬やらグッズやらが溢れているが、なぜそれが必要であり、それを求める人が多くいるのかが分かった。

恐ろしいことに禁煙から約 70日が経過した今も喫煙の要求に襲われることがある。

08/09 の雑感にも書いたが、禁断症状は暴れだしたりもがき苦しんだりするほど過激なものではないのだが、軽い禁断症状がとにかく断続的に何回も、そしていつまでも襲ってくるもので、なかなか終わりが見えないのが困りものであり、小さな気の緩みからついついタバコに手を伸ばしたくなってしまう。

ひどい禁断症状ではないことと、割と苦しまずに何週間も吸わないでいられるので、その気になればいつでも止めることができるのではないかという変な安心感と妙な自信から、いま一本くらい吸ってもまた禁煙を続ければ問題ないのではないかという悪魔の声が左耳の奥から聞こえたりすることがある。

過去に禁煙を試みて失敗した人の話を聞くと一本吸ったが最後で元のもくあみになってしまい、タバコを吸う本数は以前と変わらなくなってしまうものらしく、ここが我慢のしどころであって、ここで我慢できるかどうかが禁煙の成否を分けるものらしい。

確かにそんなことを考えたり迷ったり、左耳から悪魔の囁きが聞こえたりすること自体、まだ中毒から脱しきれていない証拠であろうし、ここでフラフラとタバコに火をつけてしまおうものなら全てが台無しになってしまうので、右耳の三半規管付近から聞こえる 「いま吸っちゃダメだよ」 という天使の声に全面的に従うことにしている。

数十分に一度、数時間に一度、一日に一度と喫煙要求の間隔は広がり、今は数日に一度くらいの割合になっているが、この雑感を書いているときは確実にタバコが吸いたくなるのには閉口している。

以前まで、まるで売れない小説家のように雑感を書きながらバカスカとタバコを吸っており、それのクセが残っているものと思われるのだが、今でも数分に一度の割合でタバコが吸いたくなってしまう。

禁煙を完全なる成功に導くためには雑感を書くのを中止したほうが確実性が高まるのであるが、ここまで続けてきて半ば習慣と化していることを中断するのは余り気持ちが良くないし、この作業中にタバコが吸いたくなるのもセットで習慣化しているのが根本の原因であるものと思われ、禁煙状態が続けば潜在意識の中からも消える時が訪れて雑感を書くことと喫煙の要求が結びつかなくなる日が来るのではないかと期待している。

お買い物日記』 担当者の担当医に禁煙していることを告げ、それが一カ月程度であることを伝えると鼻で笑われてしまったので、そんなものは禁煙のうちには入らないのだろう。

喫煙によって汚れた肺は二度と元通りにはならず、ある程度まで綺麗になるのに 5年くらいはかかると言われているので一カ月や二カ月など、やっと緒に就いたばかりのところであってはじめの一歩に過ぎないのか。

これからも一歩、また一歩と進み、『お買い物日記』 担当者と一緒に肺を綺麗しようと思う。