最近の技術の進歩は目覚しいものがある。数年先だと思われていた燃料電池車が今年の年末にトヨタから発売される。トヨタとしては 2003年末の発売を予定していたのだそうだが 1年前倒しになったそうだ。
将来的にはガソリンやディーゼル車がなくなり燃料電池車が主流になると言われているが、燃料電池の ”燃料” を何にするかで複数の方式がある。トヨタとしては他の自動車メーカより先行して発売することによって自社の方式をデファクト・スタンダード(事実上の標準)にしたいという思惑もあるだろうが、環境に優しく有害な物質を排出しない車というのは人間にとっても有益なことなので歓迎すべきことである。
燃料電池の研究開発を進めていくなかで小型・軽量化も進み、ノートパソコンや携帯電話への応用が実現化されそうだという。わずか 10ccのメタノール溶液で PDA(携帯情報端末)を 40時間駆動させることができるということは、現在主流であるリチウムイオン電池の 5倍も長持ちすることになる。電池(エネルギー)が切れても長い時間かけて充電する必要はなく、タンクにメタノール溶液を 「チュチュッ」 と入れればすぐに使えるのである。
この燃料電池はすでに試作品ができていて 2003年度中には製品化のメドがつくらしい。ただし、現段階では平均 5ワット、最大でも 8ワットの出力でしかないため、ノートパソコンを駆動させるのは無理だが、それでもすぐにノートパソコンを駆動させることのできる燃料電池は開発されるのだと思う。 携帯電話程度の機器であれば、連続待ち受け時間が 3,000時間(125日)、連続通話時間は 20時間が可能だそうなので、さらなる小型化と性能向上が必要になるが、それでさえも 2005年の実用化が視野に入っているらしい。
昔の映画に 「ミクロの決死圏」 というのがあった。ミクロサイズに縮小された医療チームが潜水艇に乗って人間の体の中に入り、レーザー光線で手術するというのがストーリーだ。人間をミクロサイズに縮小することは不可能だが、カプセル型の医療機器を飲み込んで体内を撮影する装置が開発された。
長さ 23mm、直径 9mmなので大きなカプセル入りの薬を飲むようなものだ。検査を受けるのが苦しいという ”胃カメラ” の代わりになる医療機器だが、小さなカプセルの中にはすごい技術が詰め込まれている。そのカプセルの中には撮影用の超小型カメラ、患部を照らすためのライトが搭載されている。ただし、それらを動作させるためのバッテリーなどは搭載していない。患部に到達する前にバッテリーが切れてしまったら診断には使えないからだ。
どうやって動作のためのエネルギーを確保するのかというと、体外からマイクロ波(電子レンジなどに使われている高周波の電磁波)を照射して、そのマイクロ波をカプセル内で電気エネルギーに変換するというのだ。小さなカプセルによくそれだけの装置を詰め込んだものだと感心してしまったが、実は患部に直接投与するための薬を入れておくタンク、患部を切り取る道具、切り取った患部を格納するタンクまで搭載しているとのことだった。
日本は小型化が得意なのは分かっていたが、これほどまで技術が進歩しているとは思わなかった。投薬や患部の切除は将来の計画で、当初は胃カメラとの代替を目的としているらしいが、胃カメラで苦しい思いをするのがイヤな場合はこのカプセルを飲めば良いのだから人間にとって嬉しい技術である。量産段階では一個 5,000円程度で作れるらしいので検査費がとんでもなく高額にならずに済むと思う。本当に人間のためになる小さくても偉い奴なのである。
2000年末の雑感で願ったように二足歩行のロボットでは日本が一歩も二歩も世界をリードしている。ロボットを二本足で歩かせて何になるんだ!とも思わなくもないが、アニメなどで鉄腕アトム以降、脈々と受け継がれている二足歩行ロボットの夢を是非とも実現していただきたいものだ。
足で歩くロボットの場合、常に三本の足が地面に接している六足歩行が一番安定するのだそうだ。六本足だと昆虫のようになってしまうが、それはそれで 「カッコイイ!」 のではないかとも思う。しかし、二足歩行にこだわるのには、それなりの理由があるのだろう。六本足だと安定して転ぶこともないのでセンサーなど余計な部品と困難な技術も必要ないのだが、あえて不安定な二足歩行に挑戦することで新しい技術が生まれたりするのだと思う。
何本であろうと足を使って移動するロボットが必要とされるのは、タイヤとかキャタピラでは走行不可能な悪路も進んでいけるからだ。移動手段が足であれば大きな段差があっても上り下りできる。技術が進めばジャンプだってできるかもしれない。そうなるとキャタピラでさえ乗り越えることができないような段差でもひとっ飛びである。急な斜面でも足の間接を上手に使えば本体は限りなく水平を保つことだってできる。
どんな山奥でも、瓦礫のなかでも入って行けるのであれば災害時に人命救助に役立つことができる。人類が到達する前の惑星探査をすることもできる。有毒ガスが充満する洞窟の調査だってできる。人間に役立つロボットに足は不可欠なのである。しかし、悲しいことではあるが、そのようなロボットが実用化された場合、真っ先に利用されるのは軍事目的なのであろう。
人間が進むのが困難な場所に分け入って敵を監視したり、武器を搭載して殺戮兵器として利用されるのが目に見えるようだ。現実としてアメリカがアフガニスタンを攻撃した時には無人の偵察機や爆撃機が投入されている。あれだって立派な ”鳥型” ロボットである。科学や技術の発展が人類の発展や平和にだけ利用できるのかは、それこそ鉄腕アトム以来ずっと考えなければいけないテーマになっているように思う。
文明の利器の ”利器” には 「便利な器具・機械。利用すべきもの。役に立つすぐれたもの。」 という意味のほかに 「鋭利な兵器・武器。よく切れる刃物。」 という意味もある。将来もそれが変わらないのか 「便利な器具・・・」 という意味だけが残るのか 「鋭利な兵器・武器・・・」 という意味だけが残るのか、それは利用する側である我々人類しだいなのである。