イジメ問題に背を向け、ことなかれ主義に徹する教師やイジメに荷担する教師、生徒を性の対象とする教師に登校拒否になる教師と、何かと問題の多い昨今ではあるが、確かに可哀想な面もないではない。 少しきつめに子供を叱ると鬼のような形相の親が学校に乗り込んでくるし、教育委員会に訴えるなどと脅される。 これでは登校拒否になってしまうのも仕方ないかもしれない。
子供のころ、躾(しつけ)に厳しく手も足も出る教師がいたが、決して嫌いではなかったし今から思えば良い先生だったと思う。 変にやさしくて授業中に笑いをとる教師もいたが、だからと言って教え方が上手な訳でもなく、生徒から信頼がある訳でもなかった。 教師も人間であるから色々な人がいるものである。 それぞれの教育があっても良いのではないだろうか。
中学で国語を教えていた女教師は、まともに授業を受けていないのに良い評価をしてくれた。 かと言って特別に自分が好かれていた訳でもなく、女教師と言っても定年が近そうな、中学生から見ると婆ちゃん先生だったので自分と特別な関係にあった訳でもない。
過去の雑感に何度か書いたように、当時は不良をしていたので授業などまともに受けたことがない。 席に座っていても寝ていることが多く、「眠いなら後ろで寝てなさい!」 と言われ、そんな時だけは ”素直” に 「はーい」 と良いお返事をしてカバンをマクラに横になり、休憩時間になるまでグーグー寝ていたことも一度や二度ではない。
おまけにテストなど白紙で提出するものだから、成績と呼べるような評価なんかもらえるはずがないのは自分でも分かっていた。 もちろん通信簿は最低評価である 1 のオンパレードで、中には手書きで 0 をつける教師までいた。 「なんだこれは」 と文句を言うと、「授業はまともに受けない、テストは白紙、そんな奴を評価できるか!」 と、ついでにゲンコツまで貰ってしまった。
ところが国語の教師だけは、そんな授業態度の自分にも 4 とかを付けてくれる。 不思議に思って理由を聞くと、「理由なんかないけど、本当はやればできるんでしょ?」 と言われた。 すると不思議なもので、授業をしっかり受けなければ申し訳ない気分になり、国語だけは寝るのをやめた。 今から思えば女教師の術中に陥ってしまった感があるが、それも更生させる手段だったのだろう。
後に知ったことだが、高校の校長が実家の斜め前に住んでいた。 そんなこととは知らず、タバコを吸いながらボーッと窓から外を眺めたり、悪友と遊んだりしていたのだが、ある日のこと校内放送で校長室まで来るようにと呼び出された。 友達は 「校長に呼ばれるなんて何をしたんだ?」 と聞いてくるが自分にも心当たりがない。 いや、ありすぎて何の件なのか予想もつかなかった。
校長室に入ると 「昨日お前の部屋から煙が出てたな」 と言う。 何を言っているのか分からず黙っていると、「いや、先生はお前の家の斜め前に住んでいるんだけどな」 などと、とんでもないことをさらっと言いのけるではないか。 それを聞いて慌てふためいた。 前日は悪友数人と遊んでおり、全員がタバコを吸っていたものだから窓からモウモウと煙が出ていたに違いない。
「いえ、あの〜蚊取り線香が、そ、その〜異常に燃えて〜あの〜」 と、しどろもどろに訳の分からないことを言っていると、「まぁ火事には気をつけろよ」 と言って、タバコを吸っているのがバレバレなのに、おとがめなしで開放されたのである。 そのことを悪友に伝えたところ、以降は誰も家に遊びに来なくなってしまった。
それからも、校長と顔を合わせるたびに 「蚊取り線香はどうだ?」 と嫌味を言われ、「いや、あの〜」 と言っていると、すれ違う瞬間に 「体に悪いぞ」 と小さな声で言われたりしていた。 それで改心してタバコを止めるまでには至らなかったが、いつも声をかけてもらったことは今でも心に残っている。
どんな教育が正しいのか分からないが、自分が悪いくせに教師に殴られたことを親に報告する子供も子供なら、学校に文句を言う親も親だ。 自分なんぞは、いったい何発殴られたか分からないほどだが、悪いことをしたという自覚を持っていたので、それは仕方のないことだと思っていたし、そんなことをいちいち親に報告などしなかった。
現代は子供も親に甘えすぎるし、親も子供を甘やかしすぎると思えてならない。