酔っ払い

花見のシーズンはとうに終わってしまったが、毎年のように繰り広げられる酔っ払い軍団の痴態は今年も各所で見受けられ、それが映像となってテレビで放映されたりしたのだろうか。 引越しやら何やらで慌しかったこともあり、裸で踊り狂う馬鹿とか桜の木から池に飛び込む阿保が今年も出没したのか、それがニュースで伝えられていたのかさっぱり記憶がない。

今は交通機関を使っての通勤などしていないし、酒を飲みに出かけることもないので酔っ払いの姿を見ることがなくなってしまった。 見ていて楽しい酔っ払いもいることはいるが、その多くは見苦しく、腹立たしさを通り越して殺意すら覚えるくらいなのでお目にかからないほうが精神衛生上も好ましいことであり、今後二度と会わなくても何の差支えもないことではある。

自分の場合は度を越すほど飲まないようにしていることもあり、酒を飲んで記憶をなくしてしまったことなどなく、次の日になって何も覚えていないと言う人が不思議でたまらない。 自分がそういう体質であると自覚したら酒の量を控えればよいのであって、自制できないのであれば例え勧められたとしても最初から酒を飲まなければ良いのである。

酒癖の悪い奴に限って飲むのが好きで、後々のことを考えると一緒になど飲みたくないのだが周りが渋々ながら誘いに応じるというパターンが常であり、本人も少しは空気を読んで酒の誘いを自粛すれば良いものを空気が読めなかったり自覚が足りなかったりするゆえに顔面を引きつらせながら作り笑顔で誘いを断っているのを無視して強引に宴席を仕立て上げようとする。

以前の仕事仲間にもそういうタイプの奴がおり、酒が進めば気が大きくなるのと同時にデリカシーまで失い、人の嫌がることなどを言い放って傷つけたり、一人では帰宅すらできないほど泥酔するものだから誰かが送って行かなければならなかったり、海に落ちて死にかけたりしていた。 どれほど人に迷惑をかけたのかなど本人が記憶を失っているのでまるで自覚がない。

勝手に溺れ死ぬくらいなら自業自得というものだが、喧嘩して人を傷つけたり死なせてしまったりしては取り返しがつかない。 そこまで重大な事件、事故に至らずとも電車などで痴漢行為をはたらいたりする不届き者もいるわけであるからして、やはり酒の飲み方を考えるか最初から酒を飲まないくらいの自制行動は強く求められるのではないだろうか。

暴れたり痴漢をしたりして覚えていないなどもってのほかであるが、本当に記憶がないのか怪しい事例すらある。 酒のせいにしておけばある程度は罪が軽減されるとでも思っているのか、本当は記憶があり、単に気が大きくなってやらかしてしまっただけなのに 「酔って覚えていない」 と言い張る場合がそれだ。 以前の仕事仲間もそれに該当し、本当は毎回のように記憶をなくしている訳でないらしい。

そのくせ都合の悪いことは覚えていないと言い張る。 酒の席で暴言をはいたりくだを巻いたりしたことを翌日になって注意すると 「記憶がない」 と言い逃れするくせに、それ以降の出来事に話題が移るとちゃっかりと話に乗って調子を合わせてくる。 それどころか自ら昨夜の出来事に触れて会話を続ける。 「記憶がないんだろ?」 と突っ込むと、しどろもどろになって訳の分からないことを言う。

酒癖が悪い上に卑怯な性格の持ち主とは二度と酒など飲みたくない。 そいつとはもう何年も会っていないが、あの性格からすると今でも自制することなく酒を飲んでは人に迷惑をかけたり不快な思いをさせたりしながらも、都合の悪いことの記憶だけを失い、楽しい部分だけを誇張して顔を引きつらせている周りの空気を読まず、身勝手に酒の誘いを繰り返していることだろう。