犬や猫のいる風景 2008年春

こちらに引っ越してきてから最終的な散歩ルートが確定するまで様々な道を歩き、近所に飼い犬が多いことに初めて気が付いた。 どの犬も性格がおとなしいのか、しつけが行き届いているのか、普段の生活では 「ワン」 とも吠えず、これほど多くの犬がいるなんて気づきもしなかった。

あまりにも吠えまくる犬は近所迷惑になってしまうが、こんなに静かだと果たして番犬の役目を全うできているのかいささか疑問である。 飼い主としては普段はおとなしくても知らない人が近づいてきたり、不審者が家に入ろうとしたときくらいは激しく吠え立てて知らせてほしいだろう。

散歩中に自分たちに向かって吠えてきた犬は一匹だけであり、それ以外の犬は興味深そうにこちらを眺めていたり、吠えずに近づいてきたりするだけだ。 なかには遊んでほしそうにモソモソと近寄ってくるやつまでおり、ますます番犬が務まっているのか心配になってしまう。

毎朝の散歩コースにしている公園にも多くの犬がいる。 以前の独り言にも書いたように遠くから車に乗って散歩に来る犬もいるくらいだ。 その中に、片方の前足を失ってしまった犬がいる。 最初は気づかず、遠くから見ていて 「ずいぶんノロノロと動く犬だな~」 などと思っていたのだが、近づいてみると右前足がなく、三本の足で必死に歩いていたのだった。

しかし、その犬の顔は穏やかであり、毛艶も良く、愛情たっぷりに飼われていることが分かる。 飼い主である男性は無理にリードを引くこともなく、犬の歩行速度にあわせて歩き、犬が何かに興味を持って立ち止まったら、満足して犬が再び歩き出すまで待ってあげている。 足を失った原因は病気なのか事故なのか分からないが、いつまでも長生きしてもらいたいものである。

近所に小学生の住む家が続けて二軒あり、毎朝さそいあって登校している。 その向かいにある家には犬が飼われており、小学生が楽しそうにしているのを毎朝のように羨ましそうに見ている。 一緒に遊びたいのか、尻尾をふって必死に愛想をふりまいている姿が可笑しい。 子供たちが学校に向かってしまった後、うつむいてしょんぼりしている姿を見たときには声を出して笑ってしまった。

散歩帰りに通る薬屋さんで飼われてる犬はとても寝坊で、起きている姿など 10日に一度くらいしか見ることができない。 昼間でも寝ていることが多く、犬小屋から離れた庭の木陰で丸くなっていたり、犬小屋から後頭部だけを見せて寝ているのが常だ。 先日、珍しく起きているときに家の横を通ったら、のそのそと近づいてきてこちらを見ていた。 やっぱり番犬には向かないらしい。

タイトルには 『犬や猫の・・・』 と書いたが、実は猫の姿を見かけることは極端に少ない。 千里丘周辺は特に猫が多く、野良猫が問題にすらなっていたので近所をウロウロすれば必ず何匹かの猫の姿を見ることができた。 しかし、この街に住んでから猫を見たのは一度くらいしかないのではないだろうか。

猫は犬と違って勝手に家を出入りする。 夜中に遊びに出かけて近所を走り回ったり集会を開いたりするものであるが、ここは北国。 万が一でも冬季に家から閉め出されたならば、生命の危機に直面することになるだろう。 それ故に外出する猫が少ないのか、そもそも飼い猫自体が少ないのか。

その辺は深い謎であるが、もし飼い猫がいるのであれば暖かくなったこの季節、散歩中に猫に会えることもあるかもしれないと、すこし期待している。