夏季休暇

お盆真っ只中である。

真っ只中ではあるが、先祖を敬い、感謝し・・・などという尊信の念は薄い。

祖父母が眠る墓にはもう30年以上は行っていないのではなだろうか。

そして1994年に亡くなり、20年以上が経った我が父が眠る墓標など一度も見たことがない。

帰省すれば実家にある仏壇に手を合わせはするが、それとて初日だけであって最終日に線香もあげずに実家を後にするのが毎度のこととなってしまっている。

そもそも我が家は親の代から信仰心というものが薄く、帰省の際に父親の眠る寺に行ってみようか、一度くらいは行ってみたいと伝えても
「行かなくてもいいんじゃない?」
とか
「大丈夫、お寺さんがちゃんとやってくれてるから」
などと言って母親は重い腰を上げようとしない。

祖父母の眠る墓には子供の頃から何度か行ったことはあるが、それも毎年という訳ではなく何年かに一度、天候に恵まれ、たまたま気が向けば行くという感じだったので父親も信仰心というものが希薄だったのだろう。

そんな親であるからして、超親不孝者の自分が墓参りをしないからと言って恨みもしないだろうし、化けてでてくることもないものと思われる。

よくよく考えてみると、祖父母の新しい墓があるということは祖父は長男ではなかったのだろうが、その先祖の墓にお参りに行ったこともないし、それどころか墓がどこにあるのかも知らない。

つまり祖父母は親の墓参りをあまりしなかったのではないだろうか。

ということは信仰心のなさは祖父母の代から脈々と続く家系なのかもしれない。

そう言えば子供の頃から盆に何らかの法事をしたこともないような気がする。

祖父母が健在だった頃、その家に父親を含めた七人きょうだいが勢揃いし、飲めや歌えやの大騒ぎをするのが盆暮れの習わしだったが、祖父の父母、つまり自分にとっての曽祖父、曽祖母の法事などただの一度も経験したことがない。

祖父が、そしてその三年後に祖母が他界したが、祖父との別れが人生で初めての法事だった。

しかし、その祖父の三回忌、七回忌など営まれた記憶もないし、祖母のそれも同じだ。

父親の三回忌までは出席したが七回忌、十三回忌は帰省すらしなかったように思う。

十七回忌も自宅で簡単に済ませたように思うが正確な記憶はない。

本来であれば母親に任せっきりにしないで、長男なのだから自分が色々とやらなければいけないのだろうが、何せそういう家系なのでまったくと言っていいほど気が回らないのである。

そもそも、北海道に帰ってきて帰省を再開したものの、盆はみんなが帰省するので交通機関も宿泊先も混んでいて面倒だったり億劫だったりするという理由から、九月になってから帰省することが常態化しているので法事も何もあったものではない。

そんなこんなで、ただひたすらに、とことん親不孝、先祖不孝を続けている自分だが、父親も祖父母も文句は言えないだろうし、言えた義理ではないはずだ。

世間一般にお盆は地獄の釜の蓋が開く日であり、この日を境に墓参などしてご先祖様等をお迎えする日ではあるが、そんな自分にとって夏季休暇は単なる夏休みにしか過ぎなかったりするのである。