通販は便利なものである。
どんなに小さな町に住んでいようと、過疎化の進む山村に住んでいようと、どんな離島に住んでいようと送料の差以外は全国どこでも同じサービスを受けられ、同じ品質のものが手に入る時代になった。
日本では普及が思ったほど急速ではなかったネット通販も、今となっては一定以上の売り上げを記録している。
日本で普及が遅れたのは、そもそもクレジットカードの文化が根付いておらず、ネットでの決済手段がなかったことが大きい。
それに加えて臆病な国民性ゆえ、住所登録したりクレジットカード番号を登録するほどネットのサービスを信頼していかったこともあるだろう。
今では有名企業となった楽天も当初は単なるベンチャーに過ぎず、黒船のごとく現れたアマゾンなども含めてどこの馬の骨かも分からない企業のことなど誰も信用していなかった。
加えて日本の有名企業は老舗百貨店も含めてネットビジネスへの参入に積極的ではなかったため、ネット通販では誰もが知っている名の通ったショップ、信頼の置ける企業が存在しなかったことから、なかなか文化が根付かなかったものと思われる。
しかし、今やネット通販は数少ない成長産業で、これからも益々参入企業が増えて消費者にとっては選択肢も広がり、便利な世の中になっていくことだろう。
しかし、テレビやラジオで放送している通販も含め、当たり前のことだが売り手は良いことしか言わないので、消費者は本質を見極めることが大事になってくる。
まずは価格だ。
これは悪意を持ったスーパーなどの実店舗でも同じことが言えるが、特売と銘打っていながら普段と大差ない価格で販売している場合が少なからずある。
20%OFF、30%OFFなどと謳いながら、実は普段から似たような価格で販売しているか、通常¥1,000 → 特売価格¥500などと告知していても普段から¥600くらいで売っているなどということもあるだろう。
実際、数年前にプロ野球で東北楽天ゴールデンイーグルスが優勝した時、楽天がスーパーセールを開催したが、その際には上述したような悪質な行為が多く見られた。
普段からネット通販を利用しており、いつも価格を見比べている人なら気づくだろうが、その特売価格とお祭り気分で初めてサイトを訪れた人には知る由もない。
テレビでよく見る化粧品や健康食品の販売価格にしても、あまりにも適当で笑えてくる。
「今回に限り半額の・・・」
「今回ご注文のお客様に限り、2個で 1つ分のお値段・・・」
などという文言をよく聞くが、それは
「初めてご購入のお客様に限り・・・」
という初回限定のサービスならいざ知らず、そんな限定などなく常に半額だの何だのと言っている。
常に半額で買えるのであれば、それが通常価格であり特価でも何でもないではないか。
むしろ、
「いったい、いつになれば通常価格で売るんだぁ!」
とテレビ画面に向かって絶叫したくなってしまう。
次に気をつけなければならないのはプライバシーポリシー(個人情報保護方針)だ。
どこのネット通販の規約を見ても、プライバシーの保護には万全を期していると書いているが、Aの場合、または Bの場合は、しかるべき手順に則った上でメールアドレス、住所などを利用する場合があると、長い規約文章の中に埋もれるようにひっそりと書かれていたりする。
アマゾンは実にしっかりした企業で、商品を発送する業者、アマゾンに出店している業者が注文を受けた時ですらユーザーのメールアドレスを知らせることはない。
ユーザーと業者を繋ぐのはアマゾンのシステムであり、何か質問があった場合でも互いのアドレスを知らずともすべてアマゾンのサーバーを通して連絡しあう仕組みになっている。
従って、サイトに住所や電話番号、メールアドレスを登録してもサイバー攻撃を受けて情報が流出しない限りは誰にも知られることはない。
ところが楽天はその点がとてもルーズだ。
楽天にユーザー登録し、どこかで買い物でもしようものなら、その数時間後から山のようなジャンクメールが届くようになる。
もちろんサイトから送られてくる宣伝メールが大多数だが、楽天はアマゾンのように堅牢なシステムづくりをしていないので業者にはユーザーの住所からメールアドレス、電話番号まで筒抜けだ。
従って、モラルの低い業者に個人情報を知られた場合は名簿業者に売られることも覚悟しなければならないし、どこの誰か分からないところから低俗、下劣なメールが来るかもしれないことを覚悟しなければならない。
実際、楽天で買物をするようになってからというもの毎日びっくりするような数のジャンクメールが届くようになった。
楽天で買物をする場合は Gmailや Yahoo!メールなど、いつでも捨てられるアドレスを利用すべきだろう。
そして最近、見るたびに腹の立つ通販商品がある。
それは、母親のために開発したという触れ込みで、しみ・そばかすの緩和に飲んで効くと謳う『キミエホワイト』だ。
CM冒頭のセリフ
「私の母になりますがぁ・・・」
・・・なんだ、その訳の分からない日本語は。
「私の母の“こと”になりますが・・・」
であれば理解できるし、母親の写真を見せながら
「こちらが私の母になりますが」
と言うのなら分からないでもない。
今から話すことが母親のことであるという意味であれば、
「私の母になりますがぁ・・・」
は、明らかに間違っている。
で、その母親のキミエさんが悩んで性格まで暗くなっていたのは 6年前の話しらしいが、そこで一発奮起してキミエホワイトを完成、販売したのであれば息子である社員は超ド天才だと思う。
一般的に薬の開発というのは莫大な費用と期間を要し、有効成分を発見するまでに早くて数年、効果を実証するまでに早くて数年、医薬品としての申請をして認可されるまで数年という遠くて長い道のりだ。
そのプロセスを 6年でやってのけたのだとすれば、よほどの強運の持ち主、よほどの頭脳の持ち主なのだろうが、そんな偶然などある訳がないので、あの CMは一切信用していない。
やはり通販というものは、すでに存在する定番商品を、どんな場所からでも都会の人と同じ価格で 24時間注文することができ、個人情報が守られつつ迅速に届けられるのが一番だと思う。
今の今まで見たこともないのに
「業界売り上げ No.1!!」
とか
「もっとも支持されている」
などという大風呂敷を広げたようなものに手を出さないのが吉だと思われる。