マルチ世代

原油価格の高騰でガソリンは勿論のこと、石油製品であるプラスチックなどが値上がりしており、海産資源の高騰から竹輪やカマボコ、穀物価格の高騰からインスタントラーメンや、それに由来する菓子類まで値上がりは広がり、輸送費の値上がりで生鮮食品にまで価格転嫁が始まっている。

安易な値上げなど消費者が許す環境でもないので、各社とも内容量を減らすことによって事実上の値上げを実施しているが、夜食で食べることの多い竹輪が明らかに短くなったことに一抹の寂しさと怒りを覚えつつ、竹輪であれば目立たないように穴を大きくすれば良いのではないかなどと、くだらないことを考えながら生活に忍び寄るインフレに怯えたりしてるところだ。

日本もそろそろ健全なインフレにならなければいけないのではあるが、デジタル家電、機器の価格下落は止まらないようで、それはメーカー各社の予想を大きく裏切る年率 20%以上に達しており、プラズマや液晶テレビなど、あれよあれよいう間に 1インチ 1万円を切り、今となっては 1インチ 5千円以下、3千円以下で売られることも珍しくはなくなった。

メーカーは価格下落を防ごうと、画像の美しさや表示速度を競うだけではなく、様々な機能を盛り込んで付加価値をアピールするが、それら全ての機能を使いこなしている人など何人いるのか問いただしてみたい気分であり、使われもしない余計な機能を付加して高価格で売るくらいなら、シンプル操作のものを安く売ってくれというのが消費者の正直な気持だろう。

少子高齢化のおり、増え続けるシルバー世代向けに、機能を絞り込んだ簡単操作の家電や携帯電話などが続々と発売されているが、低付加価値なのに価格が変わらないのはどうしてなのか納得できない部分もあり、メーカーに小一時間くらい問い詰めたくなったりするが、まだ需要が大きくないため小ロット生産になってしまうのが原因なのだろうと勝手に解釈したりしている。

しかし、シルバー世代向けの製品が喜ばれるのも、あと数年間くらいのものではないかと想像され、あまり力を入れて開発しても採算が合わないという結果になりそうな気配を感じているのは自分だけだろうか。

現在は、アナログ機器を使っていた人が高齢化し、最先端の技術について行けなかったり、便利さを理解できなかったり、複雑な操作をすることができなかったりすることが簡単操作を望む声となっていると思われ、それ以外の世代は便利に使いこなしているはずであり、決して無駄な機能ではないはずだ。

インベーダーゲームが流行した 1979年頃にゲーム機の上に百円玉を山積みにしていた 20代の人は、そろそろ 50代に突入する頃であり、その後に次々と生み出されるデジタル機器に順応してきた世代であって、ある程度の複雑な操作を厭わない人たちである。

操作パネルやリモコンの文字が大きい方が嬉しいことに変わりはないだろうが、『簡単操作』 を前面に出したものなど 「馬鹿にするな!」 と言って見向きもしなくなる可能性も否定できず、シルバー世代向けの製品寿命はこの先 5-6年でしかないのかもしれない。

そうなれば高齢者向けにターゲットを絞った開発も必要なくなり、ますます差別化しづらい製品が世の中に氾濫し、結局は価格競争に陥る結果となってしまいそうな、メーカーにとっては嫌な流れが世の中に渦巻き、最終的には価格競争力のある韓国製とか中国製、ベトナム製などの製品に家電売場が占領されて日本メーカーが駆逐されてしまうのではないかという危機感がある。

自分に商品企画力などはないが、マルチ世代に受け入れられる商品を開発できるメーカーだけが、数十年後に生き残っていられるメーカーなのかも知れない。