政界再々編

何ともまあ、拍子抜けして開いた口がふさがらないくらいの安倍首相辞任劇で、不運な人だと哀れみを感じつつも、世間で広く言われているように無責任の極みであり、あまりにもタイミングが悪いところなんぞは KY(空気読めない)とギャルばりに責められても返す言葉もないのではないかと思わざるを得ないような失態を世間にさらけ出してくれたものである。

参院選での敗北は、格差社会の広がりと地方の反乱が招いた結果だと分析されているが、安倍政権が誕生した当初は政策の中に 『弱者救済』 『社会的セーフティーネットの構築』 『再チャレンジ支援』 など、格差是正のスローガンも含まれていたはずだが、それがいつの間にか 『美しい国づくり』 『戦後レジームからの脱却』 のみが語られるようになってしまった。

それは安倍首相自身が望んだことなのか、マスコミが導いたものなのか分からないが、『美しい国』 と言われても具体的にはどういうことなのか理解できず、まさか日本中をお花畑で一杯にしましょうと言いたいのではないだろうことくらいは察することはできても、どういうプロセスを経て具体的に何をすれば美しい国になるかを一般人にも分かるように説明する能力に欠けていた。

『戦後レジームからの脱却』 などと言われても 「何それ?」 と思う人が圧倒的多数であろうから、戦争に負けてアメリカに占領された日本が、アメリカの事実上の 『植民地』 あるいは 『属国』 になってしまい、その植民地の運営を自民党が請け負ってきたが、終戦以来続いているそういう政治体制を見直さなければならない時が来ていると、分かりやすく伝えれば良いのである。

俗に言われる BRIC’s (ブリックス)、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の成長が目ざましく、ユーロ圏のパワーが世界を圧倒し始めている今、いつまでもアメリカが超大国として君臨できる訳ではなく、日本もそろそろ一人歩きできるようにならなければ、かつて栄えたが今は遺跡しか残らない古代文明のように、都市部にビル群だけが残され、日本という国から人が消え去るかもしれない。

そうならないためには世界に通用する企業を育て、ロンドンやニューヨークのように世界に通用する東京 City を構築し、国際社会で戦える日本にしなければならず、多少の痛みは伴なっても引きかえしたり立ち止まったりしていると、日本という国そのものが吹き飛んでしまうということを分かりやすく説明すべきだった。

そして今、派閥政治の復活とか予算ばら撒き政治の復活などと危惧されているが、小泉元首相の破壊力は凄まじく、事実上の派閥などというのは存在価値を失い、単なる政策グループに過ぎず、昔のように数の論理がまかり通ることなどあり得ないので、その心配は単なる杞憂に終わることだろう。

ばら撒き政治と言われても、地方が疲弊しているのはまぎれもない事実である訳だから、日本も競争力が多少はついてきた現在、都市部に集中している益を少しずつ分配する時期になってきたのは確かだと思われ、以前のように公共事業で必要もない道路を作ったり、山を削ったりするのではなく、何らかのかたちで予算をまわす措置は必要だと思う。

そして、それらをバランス良くできるのは福田氏であろうと思われるので、今の流れのまま首相になってもらうのに反対ではなく、むしろ麻生氏の前に ”いっちょかみ” して頂くのは理想的なのではないかとさえ思えてくる。

なぜなら麻生氏の後に総裁として相応しい人物が自民党内に見当たらず、次の政権が短命に終わると仮定した場合、たとえ衆院選で勝てたとしても次の顔がなくなってしまう危険性が高く、自民党、いや、日本がリーダー不在となってしまうことになる。

いずれにせよ、麻生氏の後に総裁となる人物が見当たらないのであれば、そろそろ自民党による政治支配も終焉を迎えて民主党との二大政党制が確立され、その時こそ本当の意味で 『戦後レジームからの脱却』 となるという、皮肉な結果に終わることになるかも知れない。