犬たちのいる風景 2013冬

隣に住んでいたワンプが引っ越したのは去年の7月

近所に住む犬のテリーくんは、まだワンプが帰ってくると思っているのか、しばらくの間は散歩の途中に犬小屋のあった場所まで入っていって様子をうかがったりしていたらしく、昨年の暮れまで雪に足あとを残していた。

雪が積もってからは足あとが続くことはなくなったが、奥に進むことができないだけであり、ワンプのことを忘れた訳ではないと思われる。

テリーくんは何年も前に飼われていてすでに死んでしまった友だちのことも覚えていて、いつも散歩の途中に犬が飼われていた場所を見に行くのだそうだ。

北海道に帰ってきてもうすぐ丸五年、その間に近所に住んでいた三匹の顔見知りの犬が死んでしまったが、テリーくんは何匹の友だちを失ったのだろう。

映画 『わさお』 によく似た大型犬をたまに見かける。

もちろん勝手にわさおと呼んでいるが、その犬が神出鬼没で、朝の散歩の途中、買い物の途中、様々な場所を歩いているのを目撃する。

我が家も月曜から金曜まで違うコースを散歩するので神出鬼没だと思われているかも知れないが、きっと飼い主であるお父さんは無理にリードを引っ張ることなく、わさおの気の向くままに歩かせているのだろう。

散歩の第二、第五コースで歩く小学校の裏の遊歩道、それと並行して流れる小川の向こうに飼われている雑種犬も可愛らしいやつだ。

独り言に川向うの犬と書いている犬のことだが、実は間近に見たことはない。

場所は川向うの家の、さらに庭の向こう側、約 50メートルほど離れているだろうか。

毛の長いモッサリした犬で、いつも寝てばかりいるのだが、たまに体を起こして飼われている家の中をじっと見たりしている。

きっと餌をもらえる時間か散歩に連れて行ってもらえる時間が近く、飼い主が出てくるのを待っているのだろう。

お~いと呼びかけても、なかなかこちらを見てもらえなかったが、最近になってやっと匂いを覚えてくれたのか、パンパンと手を叩くと寝ていてもむっくりと顔を上げてこちらを見るようになった。

近所の動物病院で飼われているゴールデンリトリバーは子どもたちの人気者だ。

毎朝散歩しているのだが、いつも通学途中の子どもたちが周りをかこみ、一団となって歩く。

犬も子どもたちを友だちだと思っているのか、一緒に歩道橋を渡り、そのまま学校に向かって行くのだが、どこまで一緒に歩いているのか定かではない。

金曜の散歩道である第五コースの途中、アパートなのに犬が飼われているところがあった。

一般的にアパートは生き物を飼うことはできないと思うのだが、そこに住んでいた茶色の柴犬は他の住人からも可愛がられているようだった。

飼い主が一階に住んでいたので玄関ドアの横に犬小屋を置いていた。

いつも散歩時間が重なるようで、小屋の前にいる姿を数回、散歩している姿を数回しか見たことがなかったのだが、飼い主のお母さんと仲良くしているのが印象的だった。

ここまですべて過去形で書いてきたのは、その犬が、いや、飼い主さんも含めて引っ越してしまったらしいのである。

昨日の散歩は 『お買い物日記』 担当者の頭痛、悪天候、朝マックのためのコース変更などが重なり、昨年末以来、実に一カ月以上ぶりの第五コースだったのだが、その間に犬小屋ごと消えてしまっていた。

黒柴リュウくんのことはいつも独り言に書いているが、今は一番お気に入りの犬である。

リュウくんと飼い主のお母さんとの関係も実に微笑ましい。

最初、リュウくんは交差点に立って子どもたちの通学を見守ったりはしておらず、近くにある寺の広い敷地内を散歩して帰るだけだった。

お母さんはあまり足が良くないらしく、スタスタは歩けないのでゆっくりと散歩するが、リュウくんはリードをぐいぐい引っ張ることもせず、同じ歩調で一緒に歩く。

寺の境内ではリードをはずしてもらってお母さんと遊ぶ。

お母さんは石や小枝を拾い、面倒くさそうにあさっての方向に投げるのだが、リュウくんは必死に走って追いかけ、咥えて戻ってくる。

そのチョコマカと走る姿も本当に可愛い。

いつもの交差点には数人の大人が立って子どもたちが道路を渡るのを見守っているのだが、リュウくんのお母さんはそこで立ち話しをするようになって話す時間がどんどん長くなり、ついには毎朝の日課となってしまったのである。

そしてリュウくんも一緒に子どもたちを見守るようになり、ついにはユニフォームまで作ってもらったという訳だ。

実にキリッとした精悍な顔で、すくっと大地を踏みしめながら堂々と子どもたちを見守ってはいるのだが、リュウくん、実は豆柴なので背丈は大人のひざ下までしかなかったりするのであった。