格差社会

参院選で自民党が歴史的大敗を帰し、安倍総理の去就に関して党内すら二分する議論が交わされており、その行く末をマスコミ各社、評論家まで様々な意見を述べるにいたり、政治的混乱とアメリカ株の暴落から東証一部銘柄も近年まれに見ぬ下げ幅を記録し、経済的にも混乱期を迎えている日本である。

敗戦の責任論として安倍総理辞任を積極的に促す議員もいるが、代わりに誰を立てたら良いのかという具体論はなく、この混乱期に本命の生太郎 (そうたろう (麻生太郎氏の俗称)) 氏をかつぐのはあまりにももったいなく、ワンポイントで谷垣氏をかつごうにも、根っからの消費税値上げ論者である彼を頭に据えると衆院選にすら大敗するのではないかという不安を払拭できずにいるようだ。

今回の参院選の総括として 『小泉改革の光と影』 と称し、影の部分である格差社会に焦点を当てて敗因とする政治家やマスコミが多く、民主党その他の政党も 『格差社会の是正』 をスローガンに選挙戦に勝ったのも事実であるため、所得格差、地域格差に目が奪われがちになっている。

確かに資本主義、自由競争社会の実現に向けて小泉純一郎・竹中平蔵の両氏がひた走り、その結果として所得格差が生じてしまったのは事実ではあるが、それを悪とするのが正論であるかは、はなはだ疑問が残り、資本主義経済における階級的不平等の克服を目的とした社会主義など成り立たないことは歴史が証明していることからも悪とは決め付けられないと思う。

我家は決して勝ち組みなどでなく、将来に不安がないほど潤沢な金融資産を保有している訳ではないが、世に言われる勝ち組み、成功者を恨んだり憎んだり、ましてや妬んだりする意識はなく、もちろん羨むことはあれど、格差が生じるのは成功者にはそれだけの才能があり、努力を怠らなかったのだと素直に認めざるを得ない部分が大きい。

法を犯してまで手荒く利益を追求した元ライブドアの堀江氏や、村上ファンドの村上氏などは厳罰に処されるべきだと思うし、「金儲けがそんなに悪いことですか?」 という村上氏の問いに関しては、「悪くはない。 ただし、正当な方法であれば」 と答えたい。

地域格差問題では地方都市、農村部、過疎地などに不満が広がり、それが多くの票を失う結果になってしまったと分析する議員も多いが、果たしてそれは小泉改革の影なのだろうかという疑問が頭をもたげ、さらに民主党だったら改善されるのかという巨大なクエスチョンマークが頭上でボヨンボヨンと音を立てて跳ね回る。

確かに地方交付税やら何やらと、税金の通り道や使い方を変えようとして、結果的にそれが痛みを伴なうことになってしまったのは事実ではあるが、それは既得権益、省益を保持しようと改革の内容を違うものに組替えてしまった役人が悪いのであり、責められるは中央官庁の公務員ではないのか。

民主党が票田である組合を意識すれば、この問題を解決する能力があるのかに大きな疑問があり、ましてや人員削減を伴なう小さな政府の実現、民にできることは民に任せる構造改革、規制緩和などの実行力があるとは決して思えず、国内外を問わず多くのエコノミストが指摘する、税金のばら撒き行政による一時的なカンフル剤的手法しかとれないような気がする。

そして、小泉改革が改悪だったのであれば、今でも多くの政治評論家、経済エコノミストから小泉待望論が出るはずがなく、海外メディアや評論家までもが小泉待望論を展開するはずがない。

従って、参院選の敗因は小泉改革の影にあったのではなく、安倍首相とその仲間達が招いた政治不信、本人はおろか自民党の支持率まで下げてしまった言動や思想にあったのではないかと思い、全責任は本人も認めているように首相にある訳だから、ここはタイミングを見計らって辞任すべきなのではないかと思う。

ただし、次の総理候補がいないという厳然たる事実に変わりはないが。