身の程

オリックスが熱い。 シーズン中は何をやっているのか分からないが、ここ数年は毎年のようにオフシーズンになると話題を提供してくれる球団だ。 1月 1日付けで球団新社長に就任した雑賀氏は 「野球は素人ですが」 とか 「オリックスの選手は清原ぐらいしか分からない」 とか言っているし、しまいには 「ここ数年オリックスの野球に関心をなくしていました」 などと言い出す始末だ。

昨年 12月 7日には谷選手を巨人へトレードすることが発表されたし、今月 7日には前川投手が無免許ひき逃げで逮捕されたりと話題に事欠かないが、現在もっとも熱いのが中村紀洋氏に関する件だろう。 10日に開かれた会見で 「向こうがオリックスでプレーできないと言って来て、こちらはやむなく了解したのに、いったい彼は何を目指しているのか」 と怒気すら含んだ口調で話したという。

弁護士などを使って代理人交渉するのは契約上、言った言わないを避けるためのはずなのに、今回はそれが逆転してしまったようだ。 任せるなら最後まで任せたら良いのに、中村氏自身が記者会見で訳の分からないことを言い出したら話がこじれるのは当たり前だろう。

しかし、自分はどちらかと言えば球団側を支持する。 『男を上げた』 という言葉があるが、ここ数年の中村氏は 『男を下げる』 ことばかりやっており、自分が球団職員だったとしても呆れて交渉など続ける気にならないと思う。

かなり以前の雑感に書いた、『ファンに 1回手を振ればいくら (金) と要求する選手』 というのは中村氏のことで、急速な人件費高騰とファン離れを引き起こし、球団運営を断念せざるを得ない状況に追い込んだ張本人でもある。 2002年には FA 権を行使してメジャーに行くだの巨人に行くだの、やれ阪神に行くだのと大騒ぎしたあげく、土壇場になって近鉄に残留した。

その時から 「なんじゃ?コイツは」 と良い印象を持っていなかった彼は、2005年の 1月にポスティングシステムでドジャースへの入団を決めた。 ドジャーズは前述した 2002年の FA 権行使の際に交渉を進めていてドタキャンされた経緯があったからか、マイナー契約で年俸も近鉄時代の 10分の1 程度という屈辱的な内容での契約となったのは当り前だ。

メジャーで通用するはずがないと思っていたら、オープン戦でこそ少し活躍したものの開幕ではマイナー行きを通告され、 「納得できない」 「オファーがあれば日本も含めて考えたい」 と、過去にドジャーズを裏切った自分を棚に上げて吠えまくること吠えまくること。 彼には期待に応えるとか屈辱的内容とは言え行き場のない自分を救ってくれた恩に報いるなどという気持はないらしい。

シーズンも終盤に差し掛かった頃、中村選手は 「誘われているうちが華だし、日本の球団からそういう話があれば考える」 と翌季の日本球界復帰を示唆し、古巣の近鉄と合併したオリックスが、さしたる実績を残せなかった彼に対して 2億円も用意して呼び戻してくれた訳だ。

本来ならここで頑張るのが筋というものだろうが、昨シーズンはろくな成績を収められなかった。 スポーツ選手には波があり、良くないシーズンもあるので、そのこと自体は責めるべきではないだろうが、我が身を救ってくれた球団の期待に応えられなかったのだから 60%の減額もやむなしと諦め、来期に活躍して大幅な年俸アップを勝ち取れば良いのである。

それをガタガタと文句を言うから呆れられる。 おまけに自分で代理人交渉を選択していながら真意が伝わらないとは何事か。 ここまで男を下げると愛想もこそも尽きてしまい、顔を見るのも鬱陶しい。 12日、オリックスの退団が決定したが、今日現在はどこの球団も 「いらない」 と言っているらしい。 彼の野球生命が終わるかもしれない危機的状況ではあるが、同情する気にすらなれない。

やはり人というのは身の程を知って、謙虚に生きなければいけないのである。