自分解体新書 - 4 -

自分解体新書 ~目次~

■ 脳 – その2 –

以前、会社勤めをしていたころは毎日スーツを着用し、ネクタイもしていた。

毎日、毎日、来る日も来る日も、年間 250日くらいネクタイを締め続けていたのだが、どういう訳だか数年に一度か二度くらいの割合で、毎日しているはずのネクタイの締め方が分からなくなることがあった。

どうやったらネクタイが結べるのか、何度やり直しても思い出せない。

会社に行く時間は迫り、どうやってもネクタイが結べず、焦りが頂点に達して冷や汗が流れる。

まるで自分が記憶喪失にでもなったような、得も知れぬ不安感、恐怖感に襲われる。

そんなことは自分にしか起こらないのではないかと不安にも思っていたが、世の男性陣の複数人に確認したところ、やはり同じような体験をしている人が多かったので少し安心したりしたものだ。

あの時、脳の中では何が起こっているのだろう。

いや、脳ではなく神経で何かが起こっているのか。

加齢が原因かといえばそうでもないらしく、それは 20代でも 30代でも起こるものらしい。

■ 脳 – その3 –

しかし、確実に記憶力は衰えてきている。

さっき食べた昼飯の内容が思い出せなかったりすることなど日常茶飯事だ。

お買い物日記』 担当者に訊いても記憶力の低下具合は似たようなもので、二人揃って腕組みをしながら 「う~む」 と考え込む事態に発展してしまう。

これは加齢が原因であり、誰にも起こる自然なことである。

いつかのテレビで、どこだかのお医者さんがこう言っていた。
「何を食べたかを忘れるのは誰にでも起こること」
「問題なのは食べたことすら忘れてしまうこと」

そう、少なくとも朝、昼、晩の食事をしたか否かくらいは覚えているので少々の記憶力低下くらいは甘んじて受け入れなければいけないのだろう。

■ 鼻

相変わらず慢性的に鼻炎は続いている。

鼻炎用の点鼻薬はかかせないし、就寝前にはヴィックスヴェポラップを鼻の周りに塗っているのも相変わらずだ。

掃除機でホコリが舞えば鼻も目もグシュグシュになるし、風邪気味になれば一発で鼻に来る。

こんな体質で花粉症になっていないのが不思議なくらいだ。

しかし、その割に嗅覚に問題はないらしく、散歩中に漂ってくる香りを嗅ぎ分け、
「味噌汁を作っているらしい」
とか
「玉子焼きの臭いだ」
「サバを焼いている」
「白身魚のフライを揚げている」
などと 『お買い物日記』 担当者と話し、腹をグーグーいわせている。

スーパーの近くを通れば惣菜の煮物やらミートボールやら中華のあんかけ系の匂いやらがしてきて野生に返りそうになるが、『お買い物日記』 担当者が一番に反応するのはミスタードーナツの仕込みの匂いだ。

賞味期限に関わらず、まだ食べられるか否かの判断を下すくらいの嗅覚は慢性鼻炎であっても備わっているので、今のところ問題なく生活できている。