真実

最近は特に実感する。

あ~歳をとってしまったな~と。

若いころ、いや、もっと前の子供のころ、近所のおじさんやらおばさん、母親や父親が言っていたことが身にしみてよく分かるようになってきた。

「いやぁ~ちょっと見ない間に大きくなってぇ~」

・・・そんなはずなかろう。

そんなにちょっとの間にびっくりするくらい大きくなるはずがない。

まして、ちょっと見ない間などと言っているが、前回会ったのは一年も前で 「ちょっと」 などという単位ではない。

一年も経てば背が伸びていて当然であり、何をいい加減なことを言っているのかと思っていた。

ところがである。

歳をとると一年などあっという間で、子供はその一年でびっくりするくらい背が伸びている。

大人の言うことに嘘はなかった訳である。

「大人になると一年なんてあっという間なんだからね」

・・・そんなはずなかろう。

子供にとっても大人にとっても一年は一年であり、多くの場合は 365日と決まっている。

大人の一年が 200日などということがあるはずがない。

ところがである。

上述したように一年などあっという間で、それは年齢とともに恐ろしいスピードで流れていく。

「そんな暗いところで本読んでて字が見えるの?」

・・・なに言ってんだか。

十分な明るさがあって字を読むのなんか困らない。

ところが最近は夕方になって薄暗くなってくるともうだめだ。

照明を点けなければ文字なんか読めたものではない。

「今年で何年生になった?」

あほか!去年会った時 5年生だったんだから今年は 6年生に決まってるだろ。

・・・歳をとると去年の会話なんて覚えていない。

それどころか昨日の夜に何を食べたのかすら思い出すのに時間がかかる。

「え~と、ほら、あのドラマに出てた人」

・・・有名人の名前を忘れるか!?

ああ、忘れるとも。

誰かを思い出そうと、その人が歌っていた曲を伝えようとすると、それが思い出せないし、出演していた映画やドラマのタイトルすら忘れており、結果的に
「ほら、あの映画にも出てて、あれを歌っていた、メガネのあいつ」
などとなり、唯一の情報がメガネということになってしまう。

「大人になると美味しく感じるの」

人間の味覚や好き嫌いなんぞ簡単に変わってたまるか。

いや、確かに変わる。

もともと好き嫌いはなかったが、好んでは食べなかった山菜類やキノコ類、セロリに春菊などの香味野菜が死ぬほどうまい。

キノコやセロリを一週間以上も食べない日はない。

「あ~やっと春が来たね」

そう、春が待ち遠しい。

そして草花も木々も色づき、虫や動物、鳥たち姿を見ると生命を感じることができる。

大人が言っていることは、すべて真実だったのだ。

自分がある程度の年齢に達し、今になってやっと実感することができる。