大阪を出てこの町に移り住み、やっぱり問題になるのは歯医者選びだった。
古くから住む人達にリサーチしてみる。
実はこの家から徒歩 3分のところに一軒の歯医者さんがあり、それは 『お買い物日記』 担当者が子供の頃から存在するので言わば老舗的なところだ。
歯科医の過当競争が激しさを増して弱肉強食のごとき生き残りかけた争いが繰り広げられる時代にあって、淘汰の波にさらわれずに続けていられるのは、医師は相当に腕が良く、固定客が数多くいるのではないかと予想される。
当然のことながら評判も上々なのではないかと聞いてみたところ、これが予想に反して微妙な反応なのである。
みんなが共通して言うのは
「先生が怖い」
ということだ。
なんでも
「すぐ怒る」
とか
「しょっちゅう叱られる」
のだそうで、なかには
「もの凄く怖いから絶対に行きたくない」
という人まで現れる始末だ。
ただし、話を総合すると腕は決して悪くないらしい。
いくら腕が良くてもそんなに恐ろしい歯医者をわざわざ選択することもなかろうと、結局はどこに行くのか決めあぐねていた。
例年であれば 6月と 12月に何もなくても検査を受けに行っていたのだが、昨年は急な引越しをしたこともあったり、『お買い物日記』 担当者が大病を患ったり、歯医者をどこにするかグズグズと迷ったりしているうちに日が経って行きそびれてしまった。
そんなこんなで過ごしていた 2008年の 10月、以前から何度もとれている差し歯が食事中にポロリと抜け落ちてしまった。
そうなったらグズグズしていられない。
「行くとしたらここかな?」
という程度には目星をつけていた歯医者での治療となった。
その歯医者は妙に空いていた。
受付を終わらせ、待合室に行っても誰も居ない。
奥からは治療中である歯医者特有の音も聞こえてこない。
当日のことは 『管理人の独り言』 にも書いたように、先生が少々荒っぽい感じはしたものの、大きな問題があるとは思わなかった。
しかし冷静に考えてみると、ちょっと腑に落ちないことがある。
大阪では何度だって入れなおしてくれた差し歯なのに、形状が合っていないから作り直したほうが良い的なことを言ってくる。
大阪では抜こうとせず、食べ物が挟まらないようにしてくれていた親知らずも抜いたほうが良い的なことを言ってくる。
そして歯の検査をしてもらったところ、多くの歯で歯周病が進んでいるから治療したほうが良い的なことを言ってくる。
10カ月前に大阪で検査してもらったときは歯周病の“し”の字も言われなかったのに、そんなに急速に進行するのだろうか。
最後に歯石を除去してもらったのだが、その際に感じた歯茎全体の痛みは半月ほど癒えることがなかった。
そして何よりも、あんなにスカスカに空いているのは人気がない証ではないのか。
「また 3-4カ月したら歯周病の検査に来てください」
と言われたが、もう二度とその歯医者に行くことはなかった。
そして、他に良い歯医者はないものかとリサーチを続ける日々が再び続いたのである。