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2002年 9月01日

犬や猫のいる風景 2002残暑 犬や猫のいる風景 2002残暑

  先々週は涼しい日が多く、夏も終わって秋の足音が聞えてきたのだとばかり思っていたら先週はひどい暑さと湿気だった。油断してはいけないと分かっていても、ついつい気が緩んでしまった体にこの残暑は相当なダメージを与えてくれたようだ。寝つきも悪く食事も思ったように喉を通らなくなってしまい、寝不足が原因だと思うがとっても 「だる〜い」 一週間を過ごすことになってしまった。

  先々週はセミの声に代わってコオロギの涼しげな鳴き声が聞えていたのだが、暑さが戻った先週はセミの声まで戻っていた。いくらなんでも今の時期になってノコノコと地面から出て来ても他の仲間はとっくに死に絶えているので、いくら 「ジャカジャカ」 鳴いても誰も寄っては来ない。7年間も土の中で暮らして、やっと地上に出てきたら季節はずれという本当にタイミングの悪い奴なのである。

  そう考えるとコオロギも出てくるのが早すぎたわけだから仲間と出会うこともなく息絶えたことだろう。自然の摂理に従って生きている野生の動植物や虫などは、気温の変化が不安定だと一生を棒に振ってしまう事態になるので大変だ。その点、人間や人間に飼われているペットは若干でも自然に抵抗できるので幸せなのかもしれない。

  自転車に乗って近所を走り回っていると扇風機を横に置いてもらっている犬を目撃した。「犬のくせに生意気な」 とも思ったが、全身が毛皮に覆われているのだからさぞかし暑いことだろう。扇風機から送られる風に目を細めて気持ち良さそうにしている姿を見て思わず笑ってしまった。鎖につながれていなければ涼しい場所を探すこともできるのだから犬にとっては当然の権利なのかもしれない。

  よく 『猫がいる場所は涼しい』 と聞くが、見ていると確かに涼しいそうな場所で寝ていたりする。かなり以前の雑感にも書いたがエアコンの室外機から出てくる風を扇風機代わりにして涼んでいる奴や、西日の当らない所にある大きな石の上で寝ている奴もいる。きっと石が冷たくて気持ちが良いのだろう。他にも風通しの良さそうな屋根の上で寝ている奴もいれば、植え込の中から首だけだして寝ている奴もいる。

  見ていて 「気持ち良さそうだな〜」 と思うことが多いのだが、実際に猫の横で寝てみるわけにもいかないので横目で見ながら通り過ぎている。日差しの強い日は道路のアスファルトが焼けて、そこから出る熱は相当なものだと思う。犬や猫は靴を履いていないので歩くと足の裏が焼けそうになるだろうし、体が路面から近いのでかなり暑いことだろう。

  ある日、近所を歩いていると道路の横にある排水用の溝で変なものが動いている。棒のような物がツツーっと立ったまま前を横切ろうとしているので近くに寄ってみると、それは猫の尻尾だった。溝の中を見ると下を向いたままトボトボと猫が歩いる。路面があまりにも熱いため、日が当らない溝の中を選んで歩いているのだろうが、あまりにもダルそうに歩いているので 「暑いね〜」 と声をかけるとピュ〜と走っていってしまった。

  毎度おなじみの黒い犬はかなりの ”箱入り娘” らしく飼い主がいろいろと気を配っている。会社帰りにその家に近づくと犬の横に不思議な発光体が見える。「なんだろう?」 と思いながら前を通ると電気式蚊取りが置いてある。犬が蚊に刺されないようにという飼い主の心遣いなのだろうが、肝心の犬は怪訝そうな顔をして蚊取りから離れて座っていた。

  第一、ああいう物は室内で使用して空気中に成分が充満するから蚊が死ぬのであって、屋外で使用しても何の効果もないものと思われる。飼い主もそれに気がついたらしく、何日かするとペット用の蚊取線香が置かれていた。蚊を殺すことはできないだろうが虫除け程度の効果は期待できるらしく、犬もその横で安心した顔をして寝ていた。

  その犬は自分で玄関の引き戸を開けることができる。鼻先を戸の格子の間に入れ、首を横に動かして 「カラカラ」 と開ける姿を始めて見た時は指を刺して 「わははは」 と笑ってしまった。この間、会社帰りに家の前を通ると犬の姿はなく、蚊取線香の筒から煙だけがユラユラと立ち昇っていた。お腹がすいたのか、暑くてたまらなかったのかは分からないが、例によって勝手に家の中に入っていったに違いない。

  犬も猫も、そのほかの生き物たちにとっても厳しい暑さは続いているが、あと少し、あと少し我慢すれば 「涼しい秋がやってくるからね」 と、半分以上は自分に向かって慰めている今日このごろなのである。

2002 / 09 / 01 (日) ¦ 固定リンク

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