給湯器や浴室乾燥機の事故が続いている。 電気業界が打ち出すオール電化とガス業界のオールガスが熱い戦いを繰り広げているが、今回のトラブルはガス業界にとってイメージダウンとなり、電気業界に絶好のチャンスを与える結果となってしまった。 今後はオール電化住宅へのシフトが加速度的に増えていくことだろう。
自分としては、オール電化にしてしまうことに若干の不安を感じる。 仮に災害が起こってライフラインに障害が発生した場合、電気とガスを使用してれば、どちらかが止まっても一方さえ供給されていれば何とかなりそうな気がするが、オール電化にしていたら電気の供給が止まると何もできなくなる。 そういう事態を想定した場合、やはり双方の器具があった方が良いような気がする。
そのためにもガス器具には、より厳格な安全基準を設けていただきたい。 少し前にあったシンドラー社製のエレベータにしてもパロマ社製の給湯器にしても、今回の件にしてもあってはならないことではあるが、「人間はどこまで貪欲なのか」 と感じてしまったりもする。
上の階へは階段で上がれば良いものを、楽をしようとしてエレベータが作られる。 お湯などは瞬間的に沸かなくても良さそうなものだし、浴室を乾燥させる必要が本当にあるのだろうか。 確かに高層階まで階段を上るのは疲れる。 給湯器を使えばヤカンで湯を沸かす時間を節約できる。 しかし、便利になった分だけ危険を伴なうリスクを覚悟しなければならないのかもしれない。
自動車も運転手をサポートする機能が次々に追加された分だけ電子制御されている部分が増えて機能も機構も複雑化する一方だ。 その分だけ欠陥が増えてリコールの対象も広がる。 家電も同様に高機能化が進んだ結果、想定外の操作をしてトラブルを招く結果となっている場合が多い。
ここ数日マスコミを賑わせているシュレッダーも同様だ。 機能こそ単純なものではあるが、使用する側の欲求に応じて改良を加えた結果、社会問題になるほどの事故を引き起こすことになってしまった。 最初の頃は紙の挿入口も指が入るほど広くはなかったし、指を切断するほどモーターが強力ではなかった。 昔のものは 2-3枚の紙を入れるとすぐに止まっていたものだ。
しかし、使う側はそれに対して文句を言う。 それならばと、10枚でも 20枚でも裁断できるようにモーターを強力にし、まとまった枚数の紙を入れやすいように挿入口も広くなる。 この事故が起こるまではユーザもそれを受け入れ、便利に使っていたはずだ。 ユーザーの欲求に対してメーカーが応えた結果、みんなが満足して使えるものができあがった訳だ。
2005年 4月 25日に発生した JR福知山線脱線事故も JRばかりを非難できるのか疑問である。
3/23 の独り言にも書いたように、時間にゆとりを持たずに出勤し、たかが 1-2分の電車の遅れに対して鬼のような形相で駅員さんを怒鳴り散らす馬鹿がいる。 過密ダイヤが問題視されていたが、短い間隔で電車が来てくれるから遅刻しなくて済んでいた人も大勢いるはずだ。
確かに私鉄との競争で JR が過密ダイヤにした面もあるが、ユーザー側の欲求も、「もっと速く」 「もっと本数を多く」 という点で一致していたはずである。 そして、あの大きな事故がある以前はそのサービスを享受し、わざわざ私鉄ではなく JR を選択していた人も多いはずである。
JR にせよシュレッダーやその他の件にせよ、被害に遭われた方は本当にお気の毒としか言いようがないし、全ての製品開発、サービスには安全第一で取組んでいただきたいが、欲求にどこまで応えるか、安全を考慮した場合のギリギリの落としどころを見極めるのはかなり難しい。
そして、このようなことが起こった際にメーカーやサービス提供者を一方的に責めるのではなく、楽をしすぎている自分たちの行動や欲求を反省することも必要なのかも知れない。