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雑感何となく感じたこと雑感何となく感じたこと

ゆかいな仲間 一人目 ゆかいな仲間 一人目

  今でこそ、世の中で起こるくだらない事件を見てはブツブツ文句を言い、悲惨な事件を見ては心を痛める単なるオッサンになってしまったが、若い頃は何も考えずに虚無な生活を送っていたものである。 そして、類は友を呼ぶの例え通り、自分の周りに集まる仲間も変な奴が多かった。

  仲間の一人とは部屋にこもってゲームをしていることが多かった。 夜も寝ないで 24時間以上も続けていたことすらある。 当時は 『みんなで うさぎ小屋』 にもある、『テトリス』 が全盛で、どちらが高得点を記録できるか競っていたものだ。 高得点を得る方法として、複数の段を一度に消すのが近道である。 その場合、縦一列だけを残して隙間なくブロックを積み上げ、縦長のブロックが落ちてくるのを待つ。

  ところが、そういう時に限って望むブロックが落ちてこない。 そんな時、そいつは 「リスッ!リスッ!」 と呪文のように念じ始める。 最初は 『テトリス』 の 『リス』 なのかと思っていたが、話を聞くと動物のリスのことだと言う。 リスは英語で squirrel (スクワーレル) というらしく、彼曰く 『信じる者はスクワーレル』 の意を込めて縦長のブロックが落ちてくることを 「リスッ!」 と祈っているのだそうだ。

  実は彼は小学校の教師をしているのだが、見かけはとても教師に見えない。 身長 180cm くらいで体重は 90kg はあろうかという巨漢、パンチパーマをかけて西部警察の団長がするようなサングラスをかけ、肩を揺すって歩く。 彼の職業は?と十人に聞いたら十人ともヤクザと答えるに違いない。

  ある日、翌日が参観日であり、普段はジャージ姿で教壇に立っているが、さすがにスーツくらいは着た方が良いのではないかということになり、紳士服売場に同行したことことがある。 気に入ったスーツを見つけたのだが、それは手持ちの金額をはるかに超えていた。

  「金貸して」 と言われたので 「いくらだ?」 と聞くと 「五万円」 と言う。 彼には金を貸しても確実に返ってくることが分かっていたので 「おうっ」 と言って貸してやった。 そのやり取りを店員さんが直立不動の姿勢で見ており、もの凄く丁寧に支払いのカウンターまで案内された。ズボンの裾直しが必要なこと、それには数時間が必要なことことを額から汗を流して説明する。

  預り証に氏名と職業を記入する蘭があり、そこに 『教師』 と書いたのを見た店員さんが、「が、学校の先生だったんすか〜」 と裏返った声で問いかけ、「はぁ〜」 と深いため息をついている。 「どうして?」 と聞くと両手をパタパタしながら 「いえっ!な、なんでもありません」 と、まだ裏返ったままの声でごまかしていたが、見かけの恐い男が簡単に金の貸し借りをしたりしていたので危ない職業だと勘違いしていたものと思われる。

  その証拠に店を出る際に振り返ってみると、店員さんはカウンターに左手を置いたまま、ガックリと頭を下げて疲れ果てていた。 きっと店員さんは閉店までの体力と神経を使い切ってしまったに違いない。 数時間後に裾直しが終わったスーツを受け取りに行き、帰る際にも 「ありがとうございました〜」 という相変わらず裏返った声で店を送り出されたりした。

  そんな仲間とも今は疎遠になってしまい、年賀状のやり取りくらいになっていたが、今年の正月には宛先不明で返ってくるようになってしまった。 今も問題など起こさずに先生をしているはずだが、他の仲間を介して調べてみても彼の消息は杳として知れない・・・。

2006 / 07 / 01 (土) ¦ 固定リンク


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