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雑感何となく感じたこと雑感何となく感じたこと

食事情 二皿目 食事情 二皿目

  若い頃は肉類や揚げ物系が好物だったが、そんな若さでも容易には挑めない食べ物があった。 以前に努めていた会社の近くにあった蕎麦屋さんで出している天丼がそれである。 何が凄いといって、とにかく油ギッシュであり、丼が光り輝いている。 OL さんなどは食べ終わった丼に顔を映して化粧を直すとまで言われていた、食後には胸焼け必至の恐るべき天丼なのである。

  その店の昼は会社員で一杯になるので、あまりにも忙しく、天ぷらの油を切るヒマもなく丼に載せているのでギトギトしているのだろうと好意的に解釈していたことと、丼つゆが美味しく天ぷらの品数も多かったので、一定の間隔を置いて食べたくなってくる不思議な代物だった。

  後輩の K太にその話を聞かせ、天丼を食べさせてみたところ、「美味しいじゃないですか」 と言う。 それならば、「(平日の) 5日間、毎日食べ続けたら賞品として天丼をもう一杯おごってやる」 ということになった。 2日目までは元気に食べていたのだが、3日目にはテーブルに置かれた天丼を見てため息をつきはじめた。 そして、4日目には 「参りました」 と 5日連続食いを断念してしまったのである。

  それほど油っこく、「最後には油の中に米が浮いていた」 だの 「食後に喫煙しようとしたら丼を持った手に引火した」 だの散々な言われ方をしていた天丼だが、妙に懐かしく、もう一度くらいは食べてみたくなってくるが、この年齢になって口にすると命に関わるかもしれない。

  その会社が自社ビルを建設したので移転し、社員食堂まで完備するようになった。 コンピュータ業界は仕事時間が不規則なのに加え、出勤、退社時間が自由なフレックスタイム制だったことから、社員食堂は朝早くから夜遅くまでやっていたので便利なことは便利だったのだが、メニューは不評だった。

  週末になると翌週のメニューが配布され、毎日の昼と夜、二種類の定食が用意されている中から好きな方を選択し、一週間分まとめてオーダーしておくのだが、週末には 100%に近い確立でカレー系のメニューになっている。 それも A定食を選択しても B定食を選択してもカレー系、さらには夜もカレー系となっており、週末の社員はカレーから逃れることができない。

  社外で食事をしようにも ”辺境” と呼ばれるほど街の中心から離れた場所にあったので外に食事ができるところなどないのである。 当然のことながら社員からは不満の声があがり、社員食堂の責任者に改善要求を付きつけるという事態にまで発展したが、かなり以前の雑感に書いたとおり、厨房で働いた経験を持つ自分には少なからず事情が理解できるので、強く言うことができなかった。

  カレーは食堂を運営するのに必要不可欠なものなのである。 いつも決まった人数分を作っていれば良いのであれば問題はないのだが、実際にはそうはいかない。 オーダーしていなかった人が急な残業で晩御飯を食べる場合だってあるし、社外の人が訪問してきたときに昼食を摂ることだってある。 ただでさえ忙しい食事時に、温めるだけで出すことのできるカレーは大きな武器となる。

  お客さんの側も長い時間待たされるより、「すぐにできますよ」 言えばカレーで我慢してくれる。 したがって、カレーを常備しておくことになるのだが、毎日かかさず火を通すとはいえ、作り置きは一週間が限度である。 そうなると廃棄するのは無駄なので、カレーうどんやらカレーコロッケなど、なんとかして消化しようと努めることになるのである。

  一般の人は事情を知らなかったり理解しなかったりするので、それが大きな不満となる訳だ。 自分が働いていた部署は一年くらいで移転したので抗争の渦中に身を置かなかったが、社員と食堂責任者の争いは、その後も長く続いたと伝え聞く。 一方は経営のことを考え、一方は楽しみな食に関することだったので、どちらも相譲れなかったのだろう。

  一方、その頃の自分はと言えば、戦場を離れ、平和な気分で出前のラーメンを 「ぞぞぞ〜」 とすすっていたりしたのであった。

2005 / 03 / 19 (土) ¦ 固定リンク


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