『
管理人の独り言』 でも触れているが、1/31 の夜遅くになって訃報が飛び込んできた。 以前勤めていた会社で、他部署の上司だった人である。 健康に不安を抱えた人ではあったが、これほど早く逝ってしまうとは、夢にも思っていなかったのでショックを受けてしまった。
2/2 のお通夜には行けなかったが、翌 3日の告別式には参列させてもらった。 式場には懐かしい顔も何人かおり、故人についていろいろと話をした。 懐かしい話をして少し笑い、故人を思い出して悲しみ、近況を報告しあって少し笑い、また故人を思い出して悲しんだ。 それぞれが、それぞれに年齢を重ね、以前ほど無理はできなくなっているが、故人の分まで頑張らねばならない。
世の中の上司には、大きく分けて 2通りのタイプの人がいる。 部下に命令をする際に、手順を含めてこと細かに指示を出し、完全に任務を遂行させようとするタイプと、結論だけを伝えて、手順などは本人に考えさせるタイプである。 故人は明らかに後者タイプの上司だった。
仕事で解らないことを質問しても、「君はどう思うのか」 「君ならどう処理するのか」 と問いかけて考えさせる。 考えあぐねていると 「以前の似たような事例では、こう処理された」 と、ヒントは与えてくれるものの、「こうすべきである」 「このように処理せよ」 などと具体的な指示は出してもらえない。 人によっては上司としての資質に欠け、判断能力が乏しいが故に部下をコントロールできないという場合もあるが、故人は高い能力がありながらも、あえて部下に考えさせるように仕向けていた。
細かく指示を与え、自分で結論を出す上司に仕えると、指示どおりに任務を遂行する人材は育っても、自分で手順を考え、自分で判断する能力を伸ばすことは難しく、結果的に指示されるのを待ち、指示がなければ動かない部下が育ってしまうことが多いが、故人のようなタイプの上司に仕えると、自分で考えて判断する能力が伸ばされるので、指示がなくても行動し、自分で仕事を見つける部下を育てることができる場合が多い。
そういう育て方をするというポリシーを部下に宣言している場合は分かりやすいのだが、故人は自分のことを多く語る人ではなかったため、一部の部下に 「明確な指示を出せない上司」 と受け止められていたが、それはとんでもない誤解である。 故人ほど部下を思い、能力を伸ばそうと努力する上司には、なかなか巡りあうことはできない。 故人のような上司に仕えたことを感謝すべきである。
故人は大手メーカーに勤めていたが、そこでリストラによる大規模な人員削減があった。 故人は削減される側の人間ではなく、削減する側の人間であり、労使交渉など困難な問題にも取り組み、会社側の要求どおりに人員削減を断行したのだが、「多くの人を解雇した人間が、会社に残るわけにはいかない」 と、人員削減を終らせた後、自ら辞表を提出した人である。
故人となってしまったため、今さら確認することはできないが、リストラの対象になった人を見て、指示待ち型の部下を育ててはいけない、 会社にとって有益な人材を育てなければいけないと、痛感したはずである。 それが故に、一部の人間から誤解されようとも、自ら考え行動できる部下を育てることに徹していたのだと思う。
直接の上司ではなかったが、そんな上司と知り合いになれて良かったと思っている。 以前の会社を退職した後も、故人にはお世話になり、様々なことを教えていただいた。 自分に能力が乏しいため、故人の教えを完全には消化できていないが、これからも教わったことを忘れずに、自分なりに身に付けていきたいと思う。 困難な局面に立った時に、もう相談することはできなくなってしまったが、今までの教えを基に自分なりに考え、そして行動したいと思っている。
故人の教えに感謝し、心からご冥福をお祈りしたい。