『
管理人の独り言』 にも書いているが、髪を切るタイミングを逃してしまい、ここ数年では最も髪が伸びている。 前髪が目にかかって邪魔だし、横は耳にかかって鬱陶しい。 早く切りたいのだが、サッパリして新年を迎えたいため、年末ギリギリに切ろうと思い、今は耐え忍んでいる。 ここ何年もの間、髪を短くしているので、少しでも長くなると鬱陶しく感じるが、10代後半から 20代前半までは長髪だった。
いや。 長髪なんていうものではなく、最も長いときは腰に届きそうなくらいだった。 今は、どこから見ても完璧なオッサンであるが、当時は痩せていて体の線も細く、ヒゲもまったくなく、よく女の子と間違われたものである。 世間には男なのか女なのか判別困難な人がいるが、近所の商店街で見かけるお年寄りにも、おばあさんなのか、おじいさんなのか分からない人がいて、見かけるたびに首をひねっている。
その人の髪は短く、グレーのズボンに黒いベルト、Y シャツ姿で歩いている。 最初は ”おじいさん” だと思っていたのだが、夏の暑い日には赤系のムームーのようなものを着て歩いていた。 おばあさんが、おじいさんの服を借りて着ているのか、おじいさんが、おばあさんの服を借りて着ているのか、さっぱり分からない。 見かけるたびに男性か女性か確認しようと思うのだが、あまりジロジロ見るのも失礼なので、通りすがりに横目で見たりしていたのである。
それでも判断できずにいたのだが、血液検査のために病院に行ったところ、待合室にそのお年寄りが座っていた。「これは確認するチャンス!」 と思ったのだが、診察室に呼ばれるときは姓だけで、名前は分からなかった。 よく見るお年寄りは、待合室で近所のうわさ話に花を咲かせたり、「あれを食べると健康になる」 などと、延々と会話が続くものであるが、その人は誰とも話さずにいた。
帰る時は 「ありがとうございました」 とか、何か話すに違いないと期待していたのだが、タイミングが悪く、ちょうどその時は診察室の中にいたので、その人が帰るところも見ることができず、声も聞けなかった。 その後も何度か商店街を歩いているのを目撃しているのだが、結局、その人がおじいさんなのか、おばあさんなのかは謎のままなのである。
先日、JR 千里丘駅を出て線路沿いの道を歩いていると、前には体格の良い、パンチパーマの人が、大手を振って歩いていた。 左手には金色に輝くブレスレットをしており、タバコの煙をくゆらせ、黒い皮ジャンを着たその肩は頑丈そうに盛り上がっている。 「恐そうなオッサンだな〜」 と思いつつ、後ろを歩いていると、その人は駐輪場に入って行き、係のおじさんに 「こんばんは〜」 と挨拶した。 その声を聞いて 「ん?」 と思い、その姿をよくよく見ると、なんとバッチリ化粧をしたオバチャンだったのである。
男か女か分からない人はいるが、髪を長くしていた当時は、知人以外は誰からも男だと思われず、女としか見られていなかった。 盛り場でナンパされたことなど何度あったか分からない。「一緒に飲みにいこう」 と近寄ってきた男に、「あ?」 と言うと顔色を変えて逃げていく。 タクシーに乗って行き先を告げると運転手さんは 「わぁ!」 と驚き、「どこからどう見ても女にしか見えなかった」 と言うのである。
友人からも 「お前と一緒に撮った写真は人に見せられない」 と言われた。 人に写真を見せると、必ず 「隣に映っているのは彼女か?」 と聞かれたり、「この子を紹介してくれ」 などと言われたらしい。 水商売でバイトしていた時も、お客さんが 「歳はいくつ?」 などと聞いてくるので、それに答えると、「わぁ!お、男か」 と驚かれた。 おかまバーのママ(?)から引き抜かれそうになったこともあった。 高額のバイト料を提示して 「うちの店で働きなさい」 と熱心に勧めるのである。
当時住んでいたボロアパートには風呂がなかったので銭湯に通っていた。 そこでも番台のオバチャンに 「違う!女湯はあっち!」 と止められる。「男なんですけど・・・」 と言うと、しばらく固まってから 「失礼ですけど、そういう商売の人?」 などと聞かれたりした。 その時は、ただでさえ女にしか見えないのに、予備も含めたタバコ 2箱を両胸のポケットに入れていたので、胸が膨らんでおり、どこからどう見ても疑いようのないくらい女に見えたらしい。
当時の写真を見ると、自分でも 「女にしか見えないな〜」 と思う。 知り合いからは、「お願いだから、その写真を見せて」 と言われるが、我家では 門外不出の 『私の恥ずかしい写真』 として、押入れの奥深くに硬く封印されているのである。