基本的に人は人、自分は自分という考え方であるため、人より劣っている部分があろうと深く気にすることはない。人に自慢できる学歴ではないが、良い大学を出た人を羨むこともコンプレックスを感じることもない。腹が出ているし白髪も多いが 「おっさんなのだから仕方あるまい」 と開き直っている。中途半端で見苦しいと予想されるため、もっと白髪が増えて真っ白になった方が嬉しいは事実だが。
そんな自分にもコンプレックスと言うか、ちょっと恥ずかしい身体的欠点がある。それらはすべて ”毛” に関することなのだが、人からは逆に羨ましがられることの方が多い。それでも自分にとっては情けない部分であるため、人に指摘されたりすると 「トホホ」 な気分になってしまうのである。「いいですね〜」 などと誉められようものなら 「ほっといてくれ!」 と毒づきたくなってしまう。
以前の雑感にも書いたが、まず第一にヒゲが情けない。アゴの下にはヒゲと呼べるヒゲが生えるが、鼻の下はチョロチョロと濃い産毛(うぶげ)程度のものしか生えない。ほっぺたにはヒゲがなく、モミアゲの下にもない。ヒゲの濃い人であれば朝剃っても夜までにある程度は伸びるものだが、伸びる速度も遅いようだ。したがって、二日に一度しかヒゲ剃りをしない。
人からは 「楽でいいですね」 と言われるが、自分では情けなく思っている。ヒゲが濃すぎて永久脱毛まで真剣に考えていた人から 「贅沢言うな!」 と叱られたこともある。確かに濃すぎるのも考えものだが、せめて鼻の下くらいは ”まともな” ヒゲが生えてほしい。鼻の下にはなく、口の横に近づくとだんだん濃くなっているため、伸ばすとあやしげなマジシャンみなくなってしまうのである。
第二に体毛も濃くない。今はあまり流行らないのかもしれないが、胸毛など一本もないし、腕にも薄い毛しか生えていない。前に勤めていた会社では女性社員に 「羨ましい」 と言われたが、そんなものは男にとって自慢にもならない。「毛ぐらい生えてるわ!」 とワイシャツの袖をまくって見せたら 「うす〜い」 と笑われてしまった。隣にいた同僚が勝ち誇った顔で 「ふふん」 と袖をめくると自分より三倍は濃かった。
第三には髪の毛である。あまり目立たないが、くせ毛で軽くウェーブがかかっている。この目立たないというのがクセ者で、人からは 「毎朝のブローが大変でしょう」 と言われるが、洗いっぱなしで何もしなくても自然に髪が後ろに流れる。長髪にしていた頃など、若い頃の松田聖子みたいな髪型になってしまうのである。「何もしてない」 と言っても 「このオシャレさん」 とか言ってバカにされてしまう。
「くっそ〜」 と腹が立ったので社員旅行に行った際、髪を洗った後に何もしなくても勝手に髪がウェーブすることを証明して見せたら女性社員からはやっぱり 「羨ましい」 と言われる始末である。女性に羨ましがられても誉められても男としては嬉しくなく、むしろ 「トホホ」 な感じになってしまう。「ふん!」 と無視してやったが、遠くに何人か集まってヒソヒソ話しながらこちらを見て笑っている。
第四にはまつ毛である。これがまた困ったことに、まつ毛もくせ毛で上に向かってクリンとカールしている。そしてそれは女性社員から格好のターゲットとなってしまい、「毎朝ビューラーしてるんですか?」 とか聞かれてしまう。「ビューラーってあのアイスクリームすくう器具みたいなやつか?」 と聞いてこれまた大笑いされてしまった。「そんなもん使うか!」 と言っても信じてもらえない。
どこの世界に毎朝まつ毛をクリンクリンにする男がいるのだろうか。この件も髪の毛と同様に顔を洗った後でも放っておけば自然にカールすることを証明してやったが、予想通りの 「羨ましい」 という言葉ですまされてしまった。何度も何度も言うようだが、男である以上はそんな所を女性に羨ましがられても嬉しくないのである。どうせならもっと男らしいところで誉められたい。
性格は荒っぽく、口も悪いので仕事中は恐れられていたが、休憩時間や酒の席では 「まつ毛クリンクリンのくせに」 などと人からバカにされてきたので、”毛” に関しては少なからずコンプレックスを感じつつ、これからも生きていかねばならないのである。