知的財産 知的財産
ここ数試合はモタモタしている阪神タイガースだが、優勝するのは間違いないだろう。結果的に球団側に譲渡されることが決まったが、千葉県に住む男性が 『阪神優勝』 のロゴを商標登録していたことが世間の注目を集めた。「ずるい」 だの 「金が目的」 だのと、この件に関しては悪く言う人が多かったが、肝心の商標権を所有していなかった阪神球団の方がマヌケである。
自身が優勝することなど夢にも思わなかったのか、優勝したとしても 『阪神優勝』 のロゴ入りグッズを製作するつもりがなかったのか。いずれにせよ球団側のブランドを防衛する意識が低かったと言わざるを得ない。一般企業は知的財産を守るために大変な努力をしている。これだけの人気球団であれば当然のことながら、あらゆる可能性を考慮して知的所有権を確保しておくべきだった。
ベトナムや中国などのバイク大国では HONDA や YAMAHA 、KAWASAKI など日本メーカのロゴが平気でコピーされている。最近まで著作物などの国際的な保護機関に加盟していなかったこともあり、東アジアではバイクに限らず電子機器から映画、音楽に至るまで野放し状態のコピー天国だった。そんな中で日本メーカ各社が受けた被害額は計り知れないことだろう。
今は何でもデジタルな時代になったため、音楽や映像も劣化することなく容易にコピーが可能になった。個人のホームページでも他のサイトから安易に画像をコピーして使用したり、他人の著作物である音楽を無断で鳴らしたりしているのを見ることがある。サンリオのキャラクターやポケモン、ドラえもんなどを代表とする著作物を無断で使用すると高額な賠償や訴訟のリスクがあることを心得ておかなくてはならない。
個人相手に FBI が乗り込んでくることはないと思われるが、洋楽、邦楽を問わず音楽の無断使用も著作権を侵害することになるので気をつけるべきである。次々と新しいハードが生み出された時代は終焉し、これからはハードで利用するソフトが重要な時代になってくる。そうなると知的財産保護の重要性も高まり、それらを所有する企業の監視や取締り、罰則も厳しさを増してくるに違いない。
しかし、日本人はそういう意識に欠けるためか、国の対応自体が他国と比較して遅い。何年か後にはガソリン車がなくなり、燃料電池車の時代になることは誰の目から見ても明らかである。アメリカは国家予算まで投入し、国を挙げて研究に取り組んでいるにも関わらず、日本はメーカまかせになっている。燃料電池車に関わる基本特許を他国に抑えられてしまったらライセンス料を支払わなければならない。
さらに怖いのが麹菌(こうじきん)特許問題である。誰もが知っているとおり、日本酒や味噌、醤油などを作るのに不可欠なのが麹菌だ。今までは製法の秘密を職人たちが守ってきたが、麹菌が酒や味噌、醤油などを生み出す過程を科学的に解析して、それを特許として権利化しようとアメリカや中国の企業が動き出している。特許が成立してしまえば製造し、販売する際にライセンス料を支払わなければならない。
海外で日本食がブームとなり、日本酒や味噌、醤油などが輸出量を増やしているが、製造・販売するのにライセンス料を支払うことになれば利益は海外に流出してしまう。第一、日本古来の食品を製造するのに 「勝手に作ってはいけない」 とか 「お金を払え」 と言われるのは腹立たしいではないか。何が何でも他国に特許を抑えられるのを避けなければならないと思う。
もうひとつ現代社会で問題になっているのは 『デジタル万引』 である。カメラ付き携帯電話が普及し、被害が大きくなってきているのが書籍などの知的所有物だ。技術系の本や料理本のレシピなど、必要な部分だけ撮影して帰る人が増えているらしい。書籍なども音楽と同様の著作物であるから無断で複製や撮影などしてはいけないのである。それをすることは立派な犯罪であることを広く告知すべきだ。
かつては 『電子立国日本』 と言われたが、今ではその座をアメリカや韓国に奪われてしまった。『物造り日本』 と言われたが、その座は中国に移りつつある。これからは 『知的立国日本』 にならなければいけないと言われているが、それに真剣に取り組んでいる政治家や政党は見当たらない。それどころか今の政治家は党首選挙、衆議院、参議院選挙で頭がいっぱで、国益など考えている暇はないだろう。
このままだと 10年後、20年後の日本は知的財産権もお金もない貧しい国になってしまうに違いない。
2003 / 08 / 03 (日) ¦ 固定リンク