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歯医者 * 一軒目 * 歯医者 * 一軒目 *

歯医者 一軒目 二軒目 停滞期 三軒目 序章 三軒目 終章

  最近では少しでも歯の調子が悪くなると、すぐに歯医者に行くことにしているが、以前は長い間 ”ほったらかし” にしていた。何せ 20年間ほど歯医者に行かなかったものだから、もうこれ以上は悪くなり様がないだろうというくらいボロボロだったのである。知り合いに歯医者で治療されるときの 「キュイ〜ン」 という音と、歯を削られる感覚が好きだという人がいる。あまりにも気持ちよくて寝てしまうのだそうだ。

  そんな人は珍しいのだろうが、自分は歯医者で治療を受けるのは決して好きではないが、眉をひそめるほど嫌いというわけではない。痛いのはもちろん嫌いだが、治療のときの痛み程度は我慢できる。だったら、もっとマメに通えば良さそうなものだが、歯医者の難点は通わなければいけないというところである。一回の治療で治るのであれば面倒ではないが、一本の歯が完治するまでに何度も通わなければならない。

  若い頃は金がなかったのと、遊ぶのに忙しいという理由で、歯医者には行く気になれなかった。子供の頃は自分に行く気がなくても親が勝手に予約を入れて無理矢理にでも通わされた。記憶の限りでは最初に歯医者に行ったのは小学校の二年生くらいだったように思う。

  その歯医者は腕(技術)には定評があるものの無愛想なことでも有名なところだった。大人でさえ 「あの先生は怖い」 と言うのだから、子供にとってはゴジラよりも怖い存在だったのである。歯医者まで一緒に来るような親ではなかったため、一人でトボトボと向かう足取りは重い。行ったことにして帰ってしまおうかと考えたことも一度や二度ではなかったが、そんな嘘はばれるに決まっているので勇気をふり絞り、重い足を引きずるようにして通ったものである。

  行く前に一応は歯磨きをして行くのだが、そこは子供のやることなので、どうしても磨き残しがある。それを見つけるとマスクの奥で 「ん゛ー!」 と声を出し、器具でガリガリと削りながら叱られる。「ちゃんとキレイに磨きましょうね〜」 などと優しく諭す人ではないのである。治療中も 「はい、うがいしてください」 などとは言わない。小さな声ながらも鋭く 「うがい!」 と命令される。

  長く口を開けていると疲れてきて、少しずつ開きが小さくなってくる。そんなときもアゴをワシヅカミにされて 「ん!」 と口を開けられる。まるで拷問にあっているような、軍隊で絶対服従させられているような恐怖の時間が過ぎていく。いくら怖くても声を出して泣くこともできず、恐怖におののき、目に涙を溜めたまま、時間が過ぎるまでただひたすら耐え忍んでいた。

  ところが、ある日を境にその先生の態度が一変した。子供を恐怖のどん底に叩き落し、大人にでさえも恐れられていた先生が、「はい。あ〜んして」 とか 「はい。ガラガラ〜ってうがいして」 などと、とても優しい。子供ながらに気味が悪く、違う意味で恐怖を感じたりしてしまった。その変貌ぶりを家に帰って親に報告したところ、「孫ができたからかね?」 と言う。

  鬼のような先生も自分に孫ができてみると 『子供は可愛い』 と感じるようになったらしいのである。当時聞いた話によると、子供に対する態度だけではなく、大人にも優しくなったらしい。人は何かのキッカケで変われるものだと、今になって思ったりしている。それからは、「腕は確かだけど偏屈な先生」 という評価から 「腕も確かで優しい先生」 という評価に変わり、多くの患者をかかえる評判の歯医者になった。

  それから長らく黄金期は続いたのだが、先生が高齢になり、後を継ぐ人もいなかったのか廃業することになってしまった。残された患者は大変である。通う歯医者は簡単にコロコロと変えられるものではない。人から評判を聞いたり右往左往しながら次に通う歯医者を探すことになってしまった。

  次に通うことになったところが、それから 20年もの間、自分を歯医者から遠ざける原因となった因縁の歯医者なのだが、その話は次の機会に譲ることにしようと思う。

2003 / 05 / 18 (日) ¦ 固定リンク


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