私的漫遊記 その四 私的漫遊記 その四
前の会社に勤めていたころは出張も多く、飛行機の利用回数も多かったので空港のシステムに疑問を感じたり、変な人を目撃することが何度かあった。自分が常識人であるとは思っていないが、どう考えても不思議なことや納得できないことが多々ある。
まずは人の迷惑を考えない奴が多いのに腹が立つ。飛行機に搭乗するときは皆が一斉に乗り込むわけだから後ろから来る人を気遣えば良いのに、上の棚にノロノロと荷物を入れたり上着を脱いで、それを綺麗にたたんで棚に入れたりと通路でモチャクチャしている奴がいる。そこで人がつかえて大行列になっているのに自分のことしか考えていない。
そういうアホはどこにでもいるので仕方ないのだが、航空各社も飛行機の後ろの座席の人から搭乗させるとか対策を講じれば良さそうなものである。そうすれば搭乗に費やす時間も短くて済むのだから結果的に効率化を図れると思うのだが、そうしていないところを見ると何か事情があるのかもしれない。
腹の立つことが多いのだが、度が過ぎると笑ってしまうこともある。かなり以前の話になるが、空港のゲートを通過する時に受ける手荷物検査で何やら係員ともめているオバチャン軍団に遭遇した。あのゲートも人が並んでいるわけだから、なるべく後ろの人の迷惑にならないように、さっさと通過すべきところなのに長い時間をかけて言い争っている。
何事かと話を聞いてみると、機内に果物ナイフを持ち込もうとしているのである。誰がどう考えてもナイフなど持ち込めるはずもないし、そんなものを持ってはいけないのであるが、オバチャン軍団は係員の言うことを聞こうとしない。「私達はハイジャックなどしない!」 と、だから 「持ち込んでも心配ない」 と係員を説得しようとしている。
いくら説得工作を図ってみたところで持ち込めるはずがないという常識をオバチャン軍団は持ち合わせいないようだ。「規則ですから」 と言う係員に向かって発せられた言葉は 「じゃあ、このリンゴの皮はどうやって剥くの」 という質問だった。その言葉を聞いたときは後ろで長時間待たされてイライラしている怒りを忘れて笑ってしまった。
すっかり旅なれてしまい、一泊の出張程度であれば替えの下着と靴下をスーツの内ポケットに入れ、手ぶらで飛行機に乗るという大胆不敵な態度だったので、機内で放映される非常時のビデオなどろくに見もしなくなってしまったが、以前に見た人生において初めて飛行機に乗ったと思われる親子連れは真剣そのものでビデオを食い入るように観ていた。
母親と中学生くらいの男の子は、シートベルトの説明を観ると自分のベルトをカチャカチャと付けたり外したりして確認し、救命胴衣の説明を観ると座席の下に手を突っ込んで 「あるある」 と確認している。今にも取り出さんばかりの勢いだったので見ていてドキドキしたが、確認作業だけだったので少し安心した。
酸素マスクの説明を観ると天井を指差し確認しながら 「ここだ、ここだ」 と言っている。非常口(扉)の説明を観ると、それも扉の場所を指さし確認している。最後の 「座席の前にある冊子を見ておくように」 という説明にも素直に従い、二人で真剣に読んでいた。
非常時のことを一通り確認し終わった親子は、冊子に載っている機内放送に興味を持ったらしく、肘掛にあるスイッチ類をあれこれ言いながら触っていた。その放送を聞いてみようという事になり、イヤホンを袋から取り出して装着したのだが、普通はお医者さんの聴診器のように耳から下にぶら下げるべきところを頭の上から装着してしまった。
頭の上からコードがピョコンと出ているものだから、とても邪魔くさそうにしている。そのままの目を閉じて音楽に聞き入っている親子の姿を見て、失礼だとは思ったがこらえきれずに吹き出してしまった。誰にでも初体験というものはあり、当然のことながら知らないこともあるわけだから、そんな姿をみて笑ってはいけないと分かってはいたのだが、その可笑しさをこらえることができなかった。
旅行をすると疲れてしまうと分かってはいるが、このところの雑感を書いているうちに少しだけ遠出をしてみたい気分になってきた。しかし、仕事でやっている訳でもないのに 「ホームページの更新を休むわけには・・・」 という妙な責任感が頭をもたげてしまう。
・・・というのは単なる言い訳で、アウトドアよりも家でコチョコチョと地味な作業をしている方が性にあっていたりすのであった。
2002 / 11 / 03 (日) ¦ 固定リンク