味覚 味覚
暦の上では秋になったはずなのだが相も変わらず暑い日が続いている。今週も連日 35℃を超えていて、まだまだ夏の勢いは衰えそうにない。『暑さ寒さも彼岸まで』 というが、これから先も一か月ほどは暑い日が続くのかと思うと憂鬱な気分になってしまう。暑さでボ〜っとしているし、食べることが少々辛くなってきている。「食べたいものは?」 と聞かれても何も思いつかないのである。
しかし、今年は昨年ほど食欲が落ちずに済んでいる。去年は食欲がなくなり、何度も麺類のお世話になったが、今年はそれよりも暑いのに麺類に頼らずにここまで乗り切ってこられた。確実に歳を重ね、体力も衰えてきているはずなのに、どうして今年の方が元気なのだろうと考えた結果、去年とは明らかに水分の補給量が違うことに気がついた。
去年まではいくら汗をかいても口にする水の量はそれほど多くはなかったのだが、今年はこまめに補給している。この暑さではカップに氷を入れておいてもすぐに溶けてしまい、水もすぐにぬるくなってしまう。のどが渇いても人肌に温まった水など飲む気がしない。何度も注ぎ足すのが面倒でついつい水分の摂取を怠ってしまうというのが去年までだった。
我家には日本茶を飲む習慣がないのでポットがない。しかし何故なのかよく解らないが水筒があったのでそれに氷と水を入れて手元に置いておくようにしたところ、少しでも喉が渇いたと思ったらすぐに飲むことができるし、常にキンキンに冷えた状態を保つことができる。必要な分量だけカップに注いで飲み干せば ”人肌” に温まってしまうこともない。おまけに冷蔵庫の開け閉めの回数も減り、節電効果も得ながら水分補給できるというまことに効率の良いシステムを確立することに成功したのである。
そのお陰なのか、去年のような脱力感もなく ”ダラリ〜ン” とすることが少なくなった。ボ〜っとしているのは元々なので去年と変わらないが、動きたくもないという程ではない。そして食欲増進効果を期待できるカレーですら食べられなくなった去年とは違って今年は食べることができている。やはり身体から抜け出た水分は補給する必要があるようだ。
それにしても子供のころはジュースや炭酸飲料を飲み、アイスクリームなどを食べていたはずなのに今は水が一番美味しい。コーヒーは好きなので今でも冷たくして飲んでいるが、夏の定番である麦茶などは飲まなくなってしまった。補給する水分の大半が水になってしまったのである。今でもたまにジュースを飲んだりアイスクリームを食べたりするが、結局は喉が渇いて水を飲むことになる。
あんなに甘いものが好きだったのに ”おっさん” になってからは好んで口にすることがなくなってしまった。味覚というのは歳をとるごとに少しずつ変わっていくようである。元々から変な子供だったので好き嫌いは少ないほうだった。子供が嫌いな食べ物のベスト 10に必ずと言っていいほどランキングされるニンジン、ピーマンも平気で食べていたしネギ類もワシワシと食べていた。
ニンジンは、むしろ好きな方で料理に使われいると喜んで食べていた。カレーを食べていると父親が自分の皿にあるニンジンまで分けてくれたので 「なんて優しい親なのだ」 と感激したものだったが、後年になって聞いたところによると父親はニンジンが嫌いだったらしい。自分が嫌いだからといって子供をおだてて食べさせるとは何事だ!と文句のひとつも言ってやりたいところだが、すでに上界の人なのでそれは叶わないのである。
そんな好き嫌いの少ない子供ではあったが、”フキ” や ”ワラビ” などといった山菜系は好んで食べなかった。出されれば渋々ながらも口に運んではいたが、心の中では 「こんな地味な物なんか食べたくないやい!」 と毒づいたりしていたのである。食材ではなく料理としては ”ハンバーグ” だの ”オムライス” には心がときめいたが、”煮しめ” だの ”ふくめ煮” などの煮物系は出されてもそれほど嬉しくなかった。
ところがこの歳になると煮物系がとても美味しい。子供のころは喜ばなかった料理や食べ物が今となっては大好物になってしまった。オムライスには今でもドキドキするが、洋食よりも和食を体が要求しているようだ。ピザやハンバーガー、フライドチキンも食べることは食べるのだが、和食を口にするとやっぱり安心して 「は〜っ」 とため息がでてしまう。
最近、知り合いの方から山菜系の食べ物をいただいた。ここ何年もの間、山菜系を食していなかったのと、子供の頃の記憶があったことからそれほどの興味を示していなかったのだが、食べてみるととても美味しい。フキと竹の子、山椒が使われて上品な味付けになっている。子供であれば絶対に自分から進んで食べないであろう料理が、今となっては美味しく感じられる。
日本人でよかったと思う反面、年寄りくさくなってしまったのかな〜と思いながらも和食を食べながら 「は〜っ」 とため息をついている今日このごろなのである。
2002 / 08 / 18 (日) ¦ 固定リンク