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雑感何となく感じたこと雑感何となく感じたこと

視野 視野

  視野(しや)は視力に関する意味と思慮、観察、知識的な意味の二通りの使われ方をする。どちらの意味においても見える範囲が広かったり狭かったりすることなわけで、日本語というのはまことに便利なものであるとつくづく感じてしまう。もう 2カ月以上も前のことだが、朝起きると片目が開かなかった。何が起こったのか判断できずにあわてて鏡を見ると左目のマブタが ”ボ〜ン” と腫れていたのである。

  それも尋常な腫れ方ではなく、幽霊のお岩さんみたくなっており、上マブタと下マブタがくっつきそうな勢いなのである。おまけにどうして腫れているのか見当もつかない。虫に刺されたのであれば痛いなり痒いなりの症状が出るはずだが、触ってみても痛くも痒くもない。感触としては耳たぶを 10倍ほど柔らかくした感じで、触っている分にはプニョプニョしていて気持ちが良い。

  しかし、そんなことをして喜んでいる場合ではないのである。こんな状態では目を開けていることもできず、一日中 PCを見つづける仕事などできるはずもない。会社には休む旨を伝えて眼科に行くことにした。以前の雑感にも書いたとおり、自分にとって誇れるものは 2.0の視力だけだったのだが、年齢のせいなのか最近になってどうも調子が良くない。夕方を過ぎると右目がぼやけてくるのである。仕事帰りに道路を歩いていても遠くの景色が二重に見えたりする。眼科に行くついでに視力の検査もしてもらうことにする。

  とても人様にお見せできるような状態ではないので、とりあえず眼帯をして出かけることにしたのだが、片目しか使えないと距離感がなくなるのに驚いてしまった。家を出るときにドアノブに手をかけようとすると指がドアに当ってツキ指しそうになるし、一階まで降りる階段がとても恐い。自転車のカギを鍵穴に入れるのも苦労した。

  そして何よりも恐かったのが、いつもならスイスイと通っていける道のりなのに感覚が違うのである。前から車が来たので避けようとしてもハンドルを切りすぎて電柱にぶつかりそうになってしまう。やっとの思いで病院にたどり着いた時には乗り物に酔ったように気分が悪くなってしまった。いつもと感覚が違うだけなのに人間の体というものは繊細なものだとひどく感心してしまったのである。

  診療してもらった結果は 『急性のアレルギー性結膜炎』 とのことだった。抗生物質の飲み薬と目薬を出してもらい、大人しくしていたら翌日には目立たないくらいまで腫れは引いたのだが、なぜ結膜炎になってしまったのか、アレルギー性とは何のアレルギーなのかも教えてもらわなかったので、自分にとって結果的には原因は謎のままである。

  ついでの視力検査の結果は両目とも 1.5で以前より一段階悪くなっていた。すくなからずガッカリもしたが 「この年齢で 1.5もありゃ充分だ!」 と自分で自分を慰めたりしている。夕方過ぎから目がぼやけてくるのは ”疲れ目” とか ”かすみ目” といった典型的な中年の症状であるわけなので 「長いこと使っていると、あちらこちらの ”部品” にもガタがくるものだ」 とそれも諦めることにした。

  もうひとつの意味である視野には個人差が大きく影響するものである。「外国旅行をして視野を広げる」 などと言うが、自分はさっぱり広がらなかった。帰国直後はそれなりの影響を受けているのであろうが、日々の暮らしを続けているうちに元に戻ってしまう。きっと元々の器が小さいので無理に広げようと思っても無理なのであろう。

  悩み事を抱えている場合は極端に視野が狭くなってしまう。麻雀や将棋、囲碁などの勝負事も人がやっているのを見ていると 「ああすれば良いのに」 とか 「こういう手もある」 とか次々に思いつくが、それと同じように悩んでいる人の話を聞くと、多くの場合は広く、客観的に見ている ”他人” の方が有効な解決策を見いだせるものである。

  「しょーもないことで悩んで・・・」 とか 「小さなことでクヨクヨするな」 とは、部外者だからこそ言えることであって、当人にとっては頭の 100%近くをその悩みが占めているわけなので当然のことながら視野も狭くなっている。一歩引いて客観的になることすら困難になっているのである。そして、これも多くの場合は時間が解決してくれるのを待つしかない。時が経てば少しずつ冷静になり、少しずつ視野も広くなって進むべき道を見つけることができる。

  人間も含めた動物にはオスとメスが存在するが、狩をするオスは周りよりも獲物に集中し、巣や子供を守るメスは襲われないように周りに気を配るものらしい。そういう点から考えた場合、男性よりも女性に悩み事を相談した方が周りのことも考慮した上で上手な解決策を与えてくれるのかもしれない。

  それと付随した話で、世の多くの夫婦が喧嘩する原因の一つとして、奥さんが生活のこととか子供のことを相談したり愚痴を言ったりした時に旦那さんがろくに返事もしないとか、上の空で話を聞いているために奥さんがヒステリーを起して・・・というパターンが多いと聞く。それも 「狩をするオスは周りよりも獲物に集中・・・」 という野生時代からの DNAが体内に組み込まれているのが原因で、TVを観ていたり新聞を読んでいるときに周りの音は耳に入らないのである。

  奥様達は 「男の悲しい性(さが)と諦めていただくわけにはいかないものであろうか」 と小さな声で問いかけてみたりするのであるが、それはいかがなものであろう。

2002 / 08 / 11 (日) ¦ 固定リンク


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