デジタルな社会 デジタルな社会
2週続けてデジタルの話になってしまうが、典型的なデジタル機器である PCの進化は凄まじい。日に日に性能が良くなり価格も安くなるものだから購入や買い替えのタイミングが難しく、なかなか決断できないものである。グズグズしていると次期製品が発表になり、当然のことながら現行製品より性能が向上している。その製品の発売を待って・・・と繰返しているといつまでたっても踏ん切りがつかない。
コンピュータ業界には ”ムーアの法則” というものがある。それは 「インテル入っている」 でお馴染みのインテルという会社を創ったメンバーの一人であるゴードン・ムーア博士が唱えた法則で、「半導体の性能と集積は、18カ月ごとに 2倍になる」 というものだ。「もうそろそろ限界だ」 と常に不安視されながらもムーア博士が法則を唱えた 1965年から現在に至るまでその通りになっている。
PCに組み込まれているハードディスク(記憶装置)の容量もどんどん大きくなり、価格はどんどん安くなっている。10年前、20MB(メガバイト)のハードディスクは 20万円と高価なものだったが、今では 120GB(ギガバイト)のハードディスクが 2万円程度で売られている。記憶できる容量が約 6,000倍になっているのに価格は 1/10になっているわけだ。
こうやって PCで使われる部品の性能が向上し、価格も安くなっていくのだから当然の結果として PC本体の性能もどんどん向上して価格は安くなってくるのである。”ムーアの法則” が崩れない限り、これから先も性能向上が進むわけなので PCの買い時などというのは無いに等しい。つまりは ”いつ買ってもいっしょ” なので現状の PCに満足できなくなった時に買い換えれば良いのである。
さて先週の雑感で 「コンピュータに毒されてはいけない」 と書いたが、実社会ではすでに毒された人々が現れている。”毒” ではないが、メール交換やチャットで知り合った人と結婚した人もいる。ひと昔前にバーチャルリアリティ(Virtual Reality(仮想現実))という言葉が流行ったが、まさにデジタルな ”仮想” 空間で知り合った人が結婚という ”現実” に至ったわけだ。
そんなおめでたい話はめったにあることではなく、現実には犯罪絡みの ”毒” に犯される場合が多い。出会い系サイトで知り合った人と会って殺されてしまった事件やネットオークションや通販での詐欺事件などである。その他にもネット上で個人情報を不正に取得しようとする奴もいればダイヤルQ2や国際電話に不正に接続して利益を得ようとするサイトもある。
そのようなサイトはだいたいがアダルト系のサイトで 「無修正の画像や動画が見られる」 という甘い罠にひっかかって、閲覧するための専用プログラムをダウンロードしてしまうと、それは画像や動画を見るためのプログラムではなくダイヤルQ2や国際電話に接続するためのものだったりするのである。鼻の下を伸ばしながら 「でへへぇ」 とアダルトサイトの中をウロウロしていると NTTなどから巨額の請求が来てビックリする事態になるので ”あやしい” プログラムはダウンロードしないことである。
本人の意思とは無関係に ”あやしい” プログラムを送りつけてくるウィルス被害も後をたたない。ウィルスに感染すると最悪の場合は OS(Windowsなど)そのものが正常動作しなくなったり、ハードディスクの中の情報が破壊されたりするので注意が必要だ。eメールにファイルが添付されていたら差出人が 「添付しましたよ〜ん」 と宣言していない限りは開かないのが吉である。
添付ファイルではなくメールそのものを開いただけ、またはホームページを見ただけで PCの動作が怪しくなるワームというものも存在するのでこれも注意が必要だが、どこのホームページを見てはいけないのか、どのメールを開いてはいけないのかなど特定し、その情報を得ることは不可能なのでブラウザ(IEなど)やメーラ(Outlookなど)を更新しておく必要がある。OSが Windowsシリーズで IEや Outlookを使用している人はマイクロソフト社のセキュリティ情報のページを見て必要な対応策を施しておくことをお勧めする。
このようにバーチャルな空間で発生する問題や現実社会で発生する問題だけではなく、バーチャル(仮想)とリアル(現実)の区別ができなくなってしまう人もいる。格闘ゲームといわれる対戦型の TVゲームがあり、ゲームの中のバーチャルな空間で対戦相手を殴ったり蹴ったりと、まさに格闘して相手を倒すのが目的なのだ。そのゲームの中では派手な ”技” が繰り広げられるのだが、それを現実で試して相手を死なせてしまう事件も発生している。
相手をどの程度の強さで殴ったら怪我をさせてしまうのか、どの程度攻撃すれば死なせてしまうのかが分かっていないのだろう。実際にゲームの中の技を試したのであれば、やはり注意が必要なのかもしれないが、事件がおこるたびにゲームを問題視する風潮もいかがなものかと思う。そもそも現代っ子は子供の頃から塾通いなどで忙しくて昔の子供のように泥だらけになって遊ぶことを知らない。
子供同士が元気に遊び、時にはケンカもしていろいろな事を学習していく。どの程度の強さで殴れば相手が怪我をするのか、殴られるとどれほど痛いのかも知らずに育った子供がゲームの中で派手に殴りあうのだから感覚も分からずに現実の世界で実践してしまうのだろう。そういう意味からゲームだけが問題なのではなく、現実の世界にも問題が多いような気がしてならない。
今やインターネット先進国となった韓国ではもっと深刻な問題も発生している。掲示板でイジメにあい、自殺してしまった人。インターネットゲーム(インターネットを利用して複数の人が参加するゲーム)の中で使いものにならないアイテム(道具)を高額で買わされた人が、売りつけた奴の身元を教えろとゲームを運用している会社に空気銃を乱射しながら侵入したり、ゲームの世界で知り合った人が(ゲームの世界の中で)殺されたため、殺された相手を ”現実の世界” で殺してしまったりということが起こっている。
20年以上前に TV(ビデオ)の中の世界と現実の世界が区別できなくなってしまうという SF映画があったが、SFではなく現実にそういうことが起こっているのである。しかし、それとてゲームやインターネットが諸悪の根源なのではないと思う。ネット上には善人ばかりいるわけではないので他人の言うことを真に受けたり、他人が操るゲームのキャラクタを人間と同一視するような利用者がいることが問題なのである。
ネットの中で起こっていることはネットだけのこと、現実は現実のことと切り替えられることができない人はネットを利用すべきでない。そういう一部の人がいるからインターネットの世界が誤解されてしまうのである。インターネットは道具にすぎないのだからそれを ”薬” にするのも ”毒” にするのもやはり使う側の問題なのである。
2002 / 05 / 26 (日) ¦ 固定リンク