'02春のファッション事情 '02春のファッション事情
すっかり春めいてきた。ここ 2-3日は 4月並の気温とのことなので少し暖かすぎるのかもしれないが、九州から順に桜の便りも聞こえてきている。この時期に一番困るのが何を着たら良いのか分からないことだ。街を行き交う人を見ても、この季節は皆バラバラのファッションに身を包んでいる。
知り合いに毎年ゴールデンウィーク近くまでダウンジャケットを着ている人がおり、「暑くないの?」 と聞くと朝(出勤のため)自宅から駅までが寒いのだと言う。しかし、電車に乗ってから会社に着くまでの間に汗だくになっている。通勤時間の中で寒く感じる時間よりも暑く感じる時間のほうが長いのであればジャケットを着なければ良いのに暑くてしょうがなくなるまで着続けているのである。最近は会っていないが今年も未だにダウンジャケットを着込んでいるに違いない。
もっと以前の知り合いにも変わった人がいた。某有名国立大学の大学院生だった彼は、もう夏の足音が聞こえ始める 6月になってもトレンチコートを着ていた。年齢が上だった彼に 「暑くないんですか?」 と聞くと 「心は寒い」という答えが返ってきた。「そ、そうなんですか?」と聞くと 「うむ」とうなずきながら去っていってしまった。どんなに有名な大学の学生であろうと変な奴は変な奴なのである。
極端に人目を気にするほど自意識過剰なわけではないが、周りから見てあきらかに浮いた存在になるのは避けたいものである。したがって、今の時期は何を着たらよいものかと観察してみると、今でもダウンジャケットを着ている人、オーバーコートを着ている人、薄手のコートを着たり、コート類を着ずにジャケットだけの人など様々である。
色んな職業の人が行き交う大阪(梅田)では毛皮のコートを着た ”その筋”の女性、ダウンジャケットを着込んだサラリーマン、脱いだ皮ジャンを手に持った Tシャツ姿の大学生など皆バラバラで 「いったい今は何月なんだ!?」と道行く人に大声で問いかけたくなってしまう。
もうフリースの季節も終わりかけであるが、一世を風靡したユニクロの業績が振るわない。既存店の売上が前年の実績を割っているとのことだ。日本人の習性に振り回された典型的な例であろうと思う。ちょっと評判になると蜜に群がるアリのように大勢の人が押し寄せ、熱が冷めると潮が引くように去って行く。
高品質のものを低価格で提供するユニクロは、物を見極める賢い消費者が選ぶ店として存在しているはずだったのに、単なる ”流行”に終わってしまった。ユニクロ側も流行に乗ってしまい短期間に店舗数を拡大しすぎたようだ。下着やソックス、Tシャツであれば、同じ物しか売っていなくても継続的に買い換えるが、セーターやシャツなどは毎年のように流行が変わるため同じ物を買い換えることは少ない。
フリースも ”今年の新色”と言われても何着も必要ないし、いくら流行だと言っても人民服ではないのだから、日本人全員が同じ格好をするはずもない。ユニクロのフリースはあまりにも流行りすぎてしまったようだ。以前は電車の中などでユニクロの紙袋を見かけると 「おっ!ユニクロだ」 という反応だったが、最近では 「うわっ!ユニクロだ」という目で見る人と無反応な人が多くなってしまった。
企画から生産、流通、販売までを自社で行う ”ユニクロモデル”は経済・経営評論家も絶賛していたが、熱しやすく冷めやすい日本人の流行になってしまったのが落とし穴だったようだ。ユニクロブームは終焉を迎えつつあるが、高品質で低価格なものを望む声はなくならないので、これからは安定した需要に対して商品が供給されていくのだろうと思う。
しかし、なぜ日本人は流行に流されやすいのだろう。何年か前に流行した厚底サンダルやブーツも去年あたりから圧倒的少数派になってしまった。以前 TVで厚底のブーツは自宅での保管が大変なので専用の棚を作り有料で預かる商売を始めた人を見たが、あの商売はどうなってしまったのだろう。
歴史は繰り返すと言うがそれはファッションも同様で、上述の厚底などは若かりし頃の母親が嬉々として履いていたと記憶している。流行があるのはサラリーマンのスーツ姿も同じで、ネクタイが太くなったり細くなったり、襟が太くなったり細くなったりボタンが 3つになったり 2つになったりしている。正確な周期はないようだが父親の時代に流行したものが現代に蘇えったり、自分が若い頃に着ていたものが最近になって流行ったりしている。
いいかげん ”おっさん”になってしまったので、若い人が着るような流行を追いかけるつもりはないが、あまりにも古臭い格好のまま堂々としている根性も持ち合わせていないので、あまり流行を追わず定番と呼ばれるメーカやブランドのスーツを選ぶようにしている。それだと何年着続けようが流行に左右される事が少ないからである。
で、今の季節は何を着るべきなのか・・・。普段着は寒くなっていくと、どんどん重ね着をしていく十二単方式なので、暖かくなるにしたがって少しずつ脱いでいけば良いのであるが、外出着や通勤の時が問題なのだ。色々と考えはしたが、結果的には自分にとって快適な格好をするしかないようである。
そうとは思いつつも、コート類を着ている人と着ていない人のどちらが多数派なのか、周りの様子を横目でうかがいつつ通勤している今日このごろなのである。
2002 / 03 / 17 (日) ¦ 固定リンク