風貌 風貌
今までの雑感の中でも「人を見かけで判断してはいけない」という種の話題に触れたことがあるが、外見が恐そうでも優しい人がいたり、外見は優しそうに見えて実は腹黒い人がいたりするので、やはり外見で判断してはいけないのであるが、性格と外見に差がある場合は少し不幸かもしれない。
などと書いている自分も実はその一人だったりする。第一印象は決まって「冷たい」とか「気どっている」とか言われてしまうのである。実のところはズボラでだらしなく、気どってなどいないのであるが、そうは見られない。”暖かい人柄”かどうかは自分で判断できないが、少なくとも”冷徹”な人間ではないと思っている。充分に感情に動かされるし、物事を冷静に鋭く見とおすことなどできない。
その風貌から初対面の人に少し警戒されてしまうので「こまったな〜」と思っている。以前勤めていた会社では数人のアルバイトを雇っていた。当時はその部署を任されていたので、面接とか採用の際に業務内容の説明などをしなければならなかったのだが、みんな緊張した面持ちで話を聞いている。
それは”初対面””面接”ということもあり、当然といえば当然のことなのだが、採用して何か月たってもこちらから話しかけると緊張しながら返事をしたり、側に行くと警戒したりしている。自分ではそれが何故なのか分からなかったのだが、アルバイトも含めた女性社員には”冷徹”な人間だと思われていたらしいのだ。
宴会の席で会社の仲間と「わーわー」言いながら酒を飲んだり食事をしたりしていた時、女性社員から「第一印象が恐い」という話を聞いた。業務の説明をする時も、あまりにも事務的に説明し、冷たい目で人の顔を見ていると言うのである。
そんなこと言われても、仕事内容をおちゃらけて説明する訳にもいかないし、勤務時間が何時だの時給がいくらだの、支給日がいつだのという説明で笑いが取れるはずもない。冷たい目と言われても、それは生まれつきであるし、事務的な話をニコニコしながらできるものでもないと訴えても「いーや。あの目は冷たい」とか「私達も恐かった」などと言われてしまった。
その時に聞いた話によると、アルバイトの子達は側に来ると「何か言われるのでは」と警戒し、話しかけると「叱られるのでは」と警戒しているらしいのある。「違うんだぁ〜!」と声を大にして言いたかったが、採用した後はアルバイトの面倒を女性社員がみていたため接点も少なく、誤解されたままでも問題はなかったので放っておくことにしていた。
しかし、身内や社内であれば問題はないのであるが、社外の人にまでそのような印象を持たれるのは仕事をする上で決してプラスではない。仕事の関係で人と会う時は努めて明るく感情豊かに話をしようと思っているのだが、なにせコンピュータ業界であるため、電子機器や部品、ソフトウェアの仕様を聞いたり説明したりするのを明るく感情豊かにできるものではないので、結果的に人に与える印象は変えられずにいる。
付き合いが長くなってくると、相変わらず「最初に会った時の印象と違いますね」言われたりしているので、どのように見られているのかを聞くと「ウソや偽りがないかを探るような目つきだった」と言うのである。確かに話を聞く時は人の目を”じ〜”っと見ているし、もともと上目使いなのでそう思われてしまうのかもしれない。
最近はなるべく顔を上げて上目使いをやめようと努力しているが、真剣に話を聞いているとついついアゴを引いて”じ〜”っと相手を見てしまう。「この目が相手を警戒させてしまうんだ」と分かっていても持って生まれたものは簡単には直せそうもないようである。
そして自らの努力では限界があるものとしては「年齢」がある。いくら若い服装をしていても他人から見ると確実に”おっさん”なのである。別に若く見せようとか思っていないし、客観的に見て現在の自分はどのような印象を持たれているのかなどは考えたこともなかったのであるが、最近あることで少なからずショックを受けてしまった。
少し前、ちょっとした事情で親戚縁者の集合写真を撮った。最近になってその写真を見たところ、自覚していた以上に”白髪”が多いのである。鏡でまじまじと見るほど”うっとり”できる顔ではないのでヒゲ剃りや洗顔の際、鏡に映った自分の顔の一部分を見ている程度だった。髪をとかす時にも見ることは見るが、「ポツポツ白髪があるな〜」という程度にしか自覚していなかったのである。
ところが出来上がった写真を見ると、あきらかに白髪の束が「もさっ」と生えている。それも左右メッシュを入れたようになっているのである。「俺の頭ってこんなん?」と聞くと身内は「そうだ」とあっさり言ってのける。「ちがう〜光線の加減で光ってるんだ〜!」と力説しても、「それは白髪」と言われてしまった。あまりにもショックだったので会社の仲間に話していると「でも、あきらかにメッシュ入ってますよ」とトドメをさされる結果に終わってしまった。
人それぞれの風貌があり、年齢なりの風貌もあるという事実をあらためて思い知らされ、なんとなく横目で自分の写真を睨んだりしている今日このごろである。
2001 / 12 / 09 (日) ¦ 固定リンク