暑い!文書の書き出しとしてはどうかと思うし、暑いという台詞は聞きあきてもおり、見あきてもいる。しかし、暑いものは暑いのである。今年は 4年だか 5年周期でおとずれる猛暑らしいので仕方ないのかもしれないが気力も体力も弱ってしまっている。
かなり前に聞いた話によると、暑くなると脳の活動が 20%程度低下するらしい。それが原因なのかは分からないが昨日の夜、JR大阪駅で”忘れ物”の現場に直面してしまった。
いつもの通り、地下鉄 御堂筋線から JRに乗り換えるため自動改札機に定期券を入れたところ、前の人の定期券が取り出し口に残っていたため自分の定期券が出て来ない。投入口を確認しても定期券がないため、改札機の中で出る順を待っているらしい。
前を見ると持ち主である女性が定期券のことなど忘れてスタスタと歩いて行く。とりあえず女性のものである定期券を取り、次ぎに出てきた自分の定期券も取って改札を通り抜けた。
”彼女”の持ち物である定期券を返そうと目で追ったところ、5-6m先を歩いている。
以前の雑感にも書いたように走ることが嫌いなため早足で”彼女”を追った。本来向うべきホームとは異なる階段で追いつくことができた。
早足で歩いたのですっかり息が切れてしまい声をかけることができなかったため、手で”彼女”をツンツンしたところ、ものすごく怪訝な表情でこちらを見ている。たしかに見知らぬオッサンにツンツンされたら嫌なものだろうと想像できるが、忘れ物を返そうとしているのにそんな顔で見られる筋合いはないと思い、こちらもムッとした顔と、息も切れ切れの声で「て、定期・・・」と言って忘れ物を見せた。
すると”彼女”の表情が一変し、「あ、あ〜、すみません」と言った。力なく「・・・いいえ」と言い残し、トボトボと階段を逆行する背中に「ありがとうございました」という”彼女”の声が追ってきた。ここで振り向き、ニッコリ笑顔でも見せるのがダンディな”おじさま”なのだろうが、疲れ果てたオッサンは後ろ向きのまま手を振るしかなかった。
最近の話ではないが、同じく暑い季節に若い兄ちゃんの忘れ物を返したこともある。地下鉄で電車を降りようとしたところ、目の前の”兄ちゃん”が席を立った。その席には携帯電話が落ちている。どう考えてもその”兄ちゃん”の持ち物に違いないので、その携帯電話を手にして持ち主である”兄ちゃん”を探したところ、自分が向うべきホームとは違う方向に進んでいる。これまた仕方ないので早足で追った。
基本的に足の長さが違うのかもしれないが”兄ちゃん”の足は速く、こちらが早足で歩いても追いつくことができない。とうとう自分が目指すホームとは反対のホームまできてしまった。悪いことに電車がすでに到着している。”兄ちゃん”が電車に乗ってしまったので、しかたなく反対方面に行くその電車に乗り込み、やっとの思いで携帯電話を返却した。
”兄ちゃん”はわざわざ席を立って「ありがとうございます!」と感謝してくれたので悪い気はしなかったが、電車はすでに発車していたのである。次の駅で「実は反対方面に乗るんで・・・」と言って電車を降りた。背中には”兄ちゃん”の「ど、どうもすんませんでした!」という声が聞こえたが、昨日と同様に後ろ向きのまま手を振って別れた。
暑い時期はボーッとして忘れ物が多くなるのだろうか。電車内での忘れ物が多い季節などの統計情報があるのであれば、一度見てみたいものである。
自慢ではないが、大切なものを忘れた記憶はあまりない。忘れ物はしないが、そのかわりに物忘れは確実に多くなってきている。単に年齢のせいなのかも知れないが、人の名前、単語などは思い出せなかったり、度忘れすることが多い。カタカナなどは忘れる以前に覚えられないことも多くなってきた。
忘れ物や物忘れを暑さのせいにしていられるうちは良いが、オッサンがジイサンになった結果だと「人から言われないように心がけねば」と強く思ったりしている今日このごろなのである。