ひきこもり ひきこもり
「ひきこもり」という言葉を最近になってよく耳にするようになったが、「ひきこもり」と表現するようになったのはいつからなのだろうか。
心を完全に開くことなどできるはずがない。親、兄弟、親友、友人にでさえも自分のすべてをさらけ出すことは難しい。それでも、人はそれぞれ対人関係を築いているわけだが「ひきこもり」と分類されてしまう人たちは最低限の対人関係さえも拒絶してしまっているのであろう。学生時代にも登校せずに、ついには卒業まで顔を見ることができなかった同級生もいる。
昔を思い起こせば、成績も良くなく、決して勉強が好きではなかったが、学校に行くのは好きだった。授業を真面目に受ける気などさらさらなかったが、友達と会えることだけが楽しみで登校していた。学校へは勉強しに行くよりも、遊びに行くという感覚で通っていたものである。
同級生には嫌いなヤツもいたが、それ以上に好きなヤツ、気の合うヤツが多くいた。勉強一筋で頑張っているヤツも、不良と呼ばれているヤツも一緒になって遊んだりしていたので、政治家のような派閥もなく学生生活を楽しんでいた。
風邪などで学校を休むと、自分がいない間に「ものすごく楽しいことが起こったらどうしよう」と不安にさえ思ったものだ。先生からは「本校始まって以来の”悪”」とか「衆悪の根源」と罵られたが、何も気にせず登校して友人達と遊び、笑い、同じ時代を共有した。
中学生の頃、全国的に”風疹”が流行した。流行に鈍感だったせいか、級友が次々に休み、クラスの人数が減っていくのを「大変だな〜」と静観していた。一時は学級閉鎖の一歩手前までいったが、さすがの風疹も若い力に屈したようで、発症する人数よりも復帰組の人数が上まったため平穏な日々に戻りつつあった。
猛威をふるった風疹も終息に向ったある日、朝から寒気がしていた。「少しからだがだるいな」とは思っていたが、とくに気にも止めずに登校し、いつも通りに友達と遊び、授業中は寝ていた。
ところが、お昼近くになると”寒気”を通りこして、体がポカポカし、気分が妙に”ハイ”になってきたのである。なにをするにもフワフワした感覚で、楽しい気分で過ごしていた。極楽だった休み時間も終わり、授業が始まってすぐに担任の教師が「おまえ酒でも飲んでいるのか?」と聞いてきた。
当然、酒など飲んでいないのだが、顔が異様に赤くなっているらしい。近寄ってきて顔を覗き込んだ担任は、あきれたように「こりゃ風疹だな。すぐ帰れ」と言った。本人としては気分も悪くなく、むしろ”ハイ”になっているものだから「イヤだ」と言って机にしがみついていたが、「他の人にうつったらどうするんだ!」と無理やり教室を追い出されてしまった。
しかたないので外には出たが、帰る気にはなれないので教室の窓から中を覗いていた。級友がこちらに気付き、クスクス笑ったり、ノートに「早く帰れ!」と大きく書いて見せたりしていたのだが、教師が気付き、イヌを追い払うように手で「シッシッ」とされてしまった。
フワフワした気分のまま帰宅すると、玄関を掃除していた母親が「学校をさぼったな!」と言いながらホウキを振り回し、「学校にもどれ!」と怒っている。自分としても、学校の方が楽しいので再び戻り、窓から顔を出したり廊下を行進したりしていたら教師が鬼のような顔で出てきてつまみ出されてしまった。
その後 4-5日は高熱で動けなくなり、休むことになってしまったが、一人で寝ていてもつまらないので、早く学校に行きたくてたまらなかった。問題の多い生徒でもあったが、今のように自分の部屋に「ひきこもり」、学校にも行かない生徒より少しはましだったのではないかと自分を慰めているのである。
2001 / 04 / 22 (日) ¦ 固定リンク