異文化 異文化
天高く馬肥ゆ・・・というわけで、食欲の秋のはずだが日によって寒暖の差が激しく秋なんだか、このまま冬になってしまうんだか分からない気候が続いている。大阪に来て食文化をはじめとする様々な文化の違いに驚いたり戸惑ったりすることが多かったことを何故か唐突に思い出してしまった。
関東圏の人の中には関西を否定する人もいるが個人的には、ちょっとした事情から関西にはなじみがあったため、引っ越してきた当初はそれほど違和感を覚えることはないだろうと考えていた。当然のことながら、真っ先に違いを感じるのは言葉である。しかし、その関西弁もどちらかと言えば好きなほうであったし、TV を見ても関西の人が活躍しているため大きな戸惑いはなかった。一部、ネイティブ関西人の会話を聞いていて理解できない単語などはあったが今では克服したつもりでいる。
次に違いを感じたのは食文化で、いまだ「お好み焼き定食」にはチャレンジできずにいる。「うどん+米」は「汁物+米」なので問題なくクリアできたが、お好み焼きは”主食”のイメージが強く、それが定食となると「主食+主食」となってしまい、二の足を踏んでしまう。
こちらに来て教えられたことで、どうしても疑ってしまったのは節分に関しての様々な”しきたり”というか”ならわし”についてである。大阪生活のまだ日も浅い頃 「節分には決められた方角を向き、無言のまま、切っていない太巻きを丸かじりする」と教えられたが、にわかには信じがたいものがあり、猜疑心の塊と化して「じとー」と人の目を見ていた。すると教えた本人もむきになり、いかに多くの家庭で実践されているか、また、いわしを焼いて丸かじりにするとか、魚の頭をなんとかいう木の枝に突き刺すだのとんでもないことまで言い出した。その場では「はいはい」と相槌を打っていたが、心の底では「だまされるものか」と思っていたのである。
しかし、その日の帰り道で目にした光景は、教えにうそ偽りがなかったことを証明してくれた。商店街のあちらこちらで”太巻き”が切らずに売られており、「今年の方角は南南西です」などという張り紙まである。おまけに家の近所では魚を焼くニオイがあちらこちらから漂い、大勢のネコがキョロキョロしながら走り回っていた。翌日、疑ったことを素直に詫び、翌年からは我家も”ならわし”に従うことにしたのだった。
細かいことだが、もうひとつ驚いたことは”床屋”での出来事である。美容室のような理容店が増え、こちらに来てからもそのような理容店に通っていたが、何かの事情で昔ながらの床屋、散髪屋というのがぴったりな理容店に入った。髪を切り終わり、洗髪が終わったところで唐突に「どうぞ」といわれ、頭の上にでっかい?マークがボヨヨ〜ンと浮かんでしまった。横を見るとおばさんがタオルも持ってニコニコして待っている。「・・・ど、どうぞ?」無い知恵を絞って必死に考えているときに思い出したのが、その数日前に見た TV で、こちらの理容店では洗髪の後に自分で顔を洗う光景が映し出されていた。その時、隣の席から「どうぞ」という声が聞こえ、言われたお客さんを観察しているとジャブジャブと顔を洗い、タオルを受け取ってゴシゴシ拭いている。顔だけではあきたらないのか、耳の裏や首まで拭き出すのである。
そんな訳で、この件に関しては事なきを得た訳であるが、これが大阪特有の”ならわし”なのか、関西はたまた西日本全体の”ならわし”であるのかは分からない。この件以外にもまだまだ知らない文化や”ならわし”があるのかもしれないが、大きくも小さくも異文化を感じてしまった出来事であった。
2000 / 10 / 02 (月) ¦ 固定リンク