どうも演出が過剰なものが好きになれない。
テレビや映画を見ていて
「何もそこまでやらんでも」
とつぶやいてしまうこともしばしばだ。
それは特に日本のドラマや映画に多く、別れのシーン、再会のシーンなどで必要以上の時間をかけ、必要以上のセリフを言わせ、必要以上の量の涙を流し、もの悲しい音楽を流し、見ている側を泣かせよう、泣かせようと必死である。
そんな過剰な演出を見せられた時、ひねくれ者の自分などは興ざめしてしまって感情移入もできず、感動の度合いも半減してしまう。
その点、海外のドラマは実にあっさりしたものだ。
しかし、あっさりとしているのに十分に悲しかったり寂しかったり、逆に再会のシーンでは嬉しかったりするので演出のテクニック、シナリオが優れているのだろう。
テレビCMでたまに見かけるのが細菌などを可視化した映像だ。
食器用洗剤の CMでは除菌効果を謳うため、CGで可視化した菌が汚れた食器からスポンジへ、そのスポンジから別の食器へと移動し、菌が付着したコップで水を飲む笑顔の子供が映し出されたりする。
浴槽洗剤では浴槽の汚れからお湯に菌が浮かび、そのお湯で顔を洗う子供に菌が移る様を映し出す。
空気洗浄機では部屋の空気中に菌がウヨウヨしている様子が映し出され、これまた子供がそれに襲われているシーンが強調される。
布団用掃除機では繊維の奥にひそむダニの死骸や卵などを映し、またまた子供が登場して布団で寝ている様子を映す。
菌が付着したりするのは何も子供だけではなく、おっさんにだって菌は寄って来るのに子を思う親心を突き、消費者心理に恐怖を植え付ける過剰な演出がそこかしこに見られる。
世の中には意図して人工的に作り出した密閉空間でもない限りは無菌状態などあり得ず、ごく一般的に菌は付着していたり浮遊していたりするもので、それを目の敵にしたところで意味はない。
それなのに CGを駆使して気持ちの悪い映像を作成し、恐怖心をあおるような CMを流す企業の方を菌よりも嫌悪してしまう。
そのような CMを見せられると、むしろその製品は買いたいとは思えなくなる自分はやはりひねくれているのだろうか。
過剰演出とは異なるかもしれないが、無添加、オーガニック食品の安全性の主張の仕方にも疑問が残る。
確かに発がん性が認められた物質が入っていたら危険だろうが、その他の一般的な添加物が入っていたら、その食品は危険なのか。
合成甘味料、合成着色料など入っているのが当たり前で、それを口にしたからと言って死ぬわけでも病気になる訳でもない。
農薬にしても添加物にしても世界一厳しい安全基準の範囲内で使用していて、検査体制だって世界一厳しく、完全に機能しているのだから人体に影響があるはずがなかろう。
ここでもまた、だしにされるのは子供で、
「将来のある子供たちに安全、安心な食品を」
などと訴えているケースを多く見かけるが、もう爺さんになりかけている自分にだって子供の頃はあったし、その頃は今よりもはるかにゆるい規制で製造された製品を思いっきり食べてきた。
体の 1/3は添加物でできているのではないかと思われるが、今のところ大病はしていないし訳の分からない牙も角も生えたりしてきていない。
売り文句として安心、安全は訴求力があるのだろうが、普通に売られている食品が不安、危険であるかのような過剰な宣伝はやめていただきたいものである。
とにかく、大げさな表現、大げさな宣伝文句、過剰な演出は好きになれない。
世の中で過剰なくらいで丁度良いのは演劇やミュージカルの舞台とプロレスくらいなものだろう。