日本人は、その道を極めることにこだわり、それを是とするところがある。
華道、茶道、そして武道。
さらに武道は剣道、柔道、合気道、空手道、弓道などなどに分別される。
それぞれ稽古にいそしみ、精神までも鍛えて作法を学び、その道を極めるのは良い。
ただし、日本発祥のものならいざしらず、海外発祥のスポーツまでにそれが及ぶのはいかがなものか。
野球(ベースボール)を野球道と呼んでみたり、ゴルフをゴルフ道などと言ってしまう日本人。
もっと楽しくもっとエンジョイできないものかと呆れてしまうことも少なくないし、海外の人から見ると真面目すぎる日本人が滑稽に見えてしまうこともあるに違いない。
最近、少し競技人口が増えて人気が出始めているというスポーツ吹矢。
少し前、テレビ番組で紹介し、レポーターが体験取材をしていた。
これは日本発祥の競技であるから日本的なルール、作法があっても仕方ないのかもしれないが、遠く離れた外野席であぐらをかいて見ている自分としては、それがあまりにも度が過ぎていて普及の妨げになっているのではないかと思ってしまう。
画面には『一般社団法人 日本スポーツ吹矢協会』なる団体のお偉いさんだと思わる爺さんが登場し、この競技は礼に始まって礼に終わるとか訳の分からないことを言い出した。
レポーターが吹矢の筒を口に当てて的を狙おうとすると、
「いやいや、まずは的に向かって礼をして・・・」
など言って動作をさえぎり、
「次に筒を両手で持って高く持ち上げて構え・・・」
などなど、いちいちうるさい。
同協会のWebページを見ると、なるほど写真と解説つきで細々と説明されているが、要は射的やダーツと同じで的の中心に当てたら良く、それが目的で、それを競う競技であるはずなので最初と最後の礼と構えなどはどうだって良いはずだ。
それをゴチャゴチャと事細かに作法まで決め、それに忠実に従わせようというのが実に日本らしい。
吹矢というものに少なからず興味がないこともないが、こんな面倒な作法を守るのが絶対条件なら興味は半減どころか限りなく0になってしまう。
吹矢などというものは日本だけではなく世界各地に古来から存在するもので、何もこの爺さんたちが創りだしたものではない。
たしかに元々は呼吸法に力点を置いて健康目的のため始めたものであるらしいので、ある程度は仕方のないことかもしれないが、広く普及させようと思ったり子どもまで楽しめるものにしようと思うならば礼だの構えだのにこだわるべきではないと思う。
ビリヤードにしてもダーツにしても酒を飲みながら軽く遊べるから良いのであって、うるさいことを言わないから楽しいのではないだろうか。
協会の設立など早い者勝ち、言い出したもの勝ちだ。
少し前にブームのようになった漢検、その漢字検定を実施している『公益財団法人 日本漢字能力検定協会』は理事長らが法人の利益を私的に流用してみたり、ファミリー企業4社に250億円も不当に流出させていたりとドロドロの組織だった。
協会の頂点、茶道や華道の家元、道場の元締めなどは、その看板料だけでえらく儲かる。
日本スポーツ吹矢協会も加盟料を徴収したり、用具を公認してみたり、ガイドブックを出版してみたりと、したたかに金集めをしているようだ。
どうも善意、厚意、仁徳だけで普及に努めているのではないドロドロした部分が垣間見える。
そして、日本のみならず世界に競技を広めようと目論んでいるようだが、それには作法が邪魔をすることだろう。
海外の人を相手に
「まずは礼をせよ」
「作法に従って構えよ」
「最後にまた礼をせよ」
などということが通用するとは思えない。
そもそも新しく生まれたスポーツを高貴な物に昇華させ、吹矢道のようにしようというのに無理がある。
権利とか地位にしがみつく爺さんどもの暗躍は老害でしかないのだから、若い世代を登用し、誰もが楽しく参加できるものにすべきだろう。
そして、爺さんたちは別の場所で私利私欲の道を極めたら良いのである。