企業にはキャッチコピーというものがあり、その多くは一言で企業イメージを表している。 世の中にはコピーライターなどという職業もあって、そのライターが寸暇を惜しんで頭をひねった結果が、短いコピーの中に企業のイメージや消費者へのメッセージを込めた、まるで暗号とも呪文とも思えるようなインパクトの強い文字列へと昇華させるのだろう。
自分のような文才のない者にとって、それは芸術品のようであり、見事なまでの美しい光を放って目や心に飛び込んでくる。 小説や詞のように文字数の制限を受けないのであれば、主義主張や思いを読み手に伝えることができるのかもしれないが、たった一行、それも数文字で心に響く言葉を綴るなど神業としか思えない。 世の中には、素晴らしい才能の持ち主がいるものである。
■ 『お口の恋人』(ロッテ)
これはもう、子供の頃から目や耳に馴染んでおり、今さら何も言うまい。
■ 『目のつけどころがシャープでしょ。』(シャープ)
最初は何を言っているのかと思ったが、90年代の終わりから 「家庭用テレビをすべて液晶にする」 と宣言し、事実、業界をリードしてきたシャープを思うと、このコピーが何年ごろから使われだしたのか分からないが、「確かにあんたは鋭いぜ」 と認めざるを得ない。
■ 『ココロも満タンに』(コスモ石油)
原油価格の高騰でガソリン代も大幅に値上がりし、なかなか満タンにはできないかもしれないが、このコピーは心温まるものがある。
■ 『お金で買えない価値がある。』(マスターカード)
「二人で過ごした時間・・・Priceless」 などと、こちらも心に染み入るコピーだ。 マクドナルドの Smile は¥0だが、なんか Priceless の方が美しい感じがするのが不思議だ。
■ 『一瞬も 一生も 美しく』(資生堂)
これも素晴らしい。 男の自分でさえ 「う~む」 と唸ってしまうのだから、女性の心には強く響くものがあるのだろう。
■ 『水と生きる』(サントリー)
飲料系が主体となっている会社で、ここまで強く宣言されると、その決意の固さと水に対する思いがヒシヒシと伝わってくる。 きっと水の汚染などにも気を使い、浄化などにも積極的に取り組んでいるのではないかと、勝手にプラスの想像が働く。
■ 『味ひとすじ』(永谷園)
こちらも力強い宣言だ。 もう何もかにもなく、とにかく徹底的に味にこだわるのだろう。 企業である以上は、いろいろなことにこだわったり、色々なことを考えているのだろうが、余計な文言は一切排除する思い切りの良さが嬉しくすらある。
■ 『あしたのもと AJINOMOTO』(味の素)
ちょっぴりダジャレ系である。 あしたの ”元気の” もとなのか、あしたの ”活力” のもとなのか、アミノ酸を主に扱う会社なので ”健康” のもとなのか。 いろいろな意味が込められているとは思うが、ラップのように韻を踏んでいるのが、ちょっとオシャレだ。
■ 『からだにピース CALPIS』(カルピス)
こちらもダジャレ系。 それでも決して悪ふざけしているのではなく、直訳すれば 『体に安心』 ということであり、これも韻を踏みながら見事に企業姿勢を現している。
誰が考えたのか分からないが、どれもこれも本当に素晴らしいキャッチコピーだと思う。 消費者に伝わるメッセージもあれば、社内の意思統一にも一役かっているに違いない。 食の安全を脅かす不祥事が相次いでいるが、それらの企業に理念などがあったのだろうか。 キャッチコピーを調べてみようと検索したら、『石屋製菓』 と 『赤福』 はお詫びのページ(11/17現在)なっていて分からなかった。
キャッチコピーで、もう一つ気になっているのが、日本通運。
■ 『With Your Life』(日本通運)
たしか、With Your Life というキャッチは、ギフト販売のシャディが使っていたのではなかったか。 気になって調べてみると、シャディは今年の 6月に UCC(上島珈琲)の完全子会社になっており、キャッチコピーも変わっていた。
■ 『ギフトの国に、ギフトのお店』(シャディ)
シャディは、昔のキャッチを他社が使っても気にならないのか。 日通は他社が使っていたことを気にしないのか。 双方とも、
■ 『そんなの関係ねぇ!』(© 小島よしお)
と言ったところか。 ちなみに上記はキャッチコピーではなく、単なる 2007年流行語大賞候補であって、来年には忘れ去られる危険性が最も高いものと思われる。