一般用医薬品ネット販売

一般用医薬品のネット販売の規制緩和が不十分だと楽天の三木谷社長が吠えまくっているが、彼の主張が自分の商売の利益しか考えないエゴイズムだったとしてもコンピューター業界に身をおく者としては原則として賛成であるし、何でもかんでも規制すれば良いというものではなく、官僚、業界の利権構造を守るかのような決定には不満を感じないでもない。

今回、政府が固めた方針は、一般用医薬品のネット販売を認めつつも、劇薬 5品目は禁止、市販後間もない 23品目については 3年間かけて安全性を確認できればネット販売を認めるというものだ。

一般用医薬品に占めるこれらの割合は 0.2%程度なので、99.8%の一般用医薬品はネット販売が認められるのだから、これ以上キャンキャン吠える必要はなかろうという論調も目立つ。

確かに一理あるが、その先のことも考慮する必要があるだろう。

アメリカ、イギリス、ドイツなどでは医師が処方する医療用医薬品のネット販売も解禁されており、将来的には日本でもネット解禁の機運が高まってくることが予想されるが、市販薬にすら規制があるのであれば医療用医薬品などネット解禁されるはずもなく、それが最大の問題であるというのが三木谷氏の主張だ。

医師、薬剤師、製薬会社、薬販売店、そして厚生族の政治家や厚労省は、この牙城を死守するべく今の段階から規制を盛り込んでおこうという魂胆が透けて見える。

というのも医療用医薬品の市場は一般用医薬品の 10倍、6兆円以上とも言われ、ここに多くの利権が渦巻いており、ネット解禁によって薬価が値崩れして利益が減ったり店舗への客足が遠のいたりするのを警戒しているのだろう。

中には医療用医薬品のネット販売など危険だと思う人もいるだろうが、医師が患者の具合を見てアレルギーなども把握した上で処方するのだから問題は起こらないものと思われるし、今になって薬局が患者との対話を心がけるように見せかけてはいるが、昔は病院で薬を受け取る際に会話などなく、処方された薬を事務的に渡されていただけだった。

つまり、医者が処方した以上は薬局もそれに従って患者に渡しているだけであって、顔色を見たり会話によって何らかの問題を発見して処方を中止したり薬を変えたりしている訳ではない。

ということは処方箋を提示さえすれば購入先が店舗であってもネットであっても大きな違いはなく、もしそれに反対するのであれば今も広くサービス提供されている FAXでの受付だって顔を合わせないのであるから禁止すべきだろう。

対面販売は薬剤師の五感を働かせて購入者の特徴をつかむことができるなどと、訳の分からないことを言って茶を濁す厚労省だが、医学的に説得力のある説明だとはとても思えない。

そんなこんなで薬のネット販売には基本的に賛成ではあるのだが、その副作用の恐ろしさを経験した今、すべての薬を解禁して良いのか多少なりとも疑問を抱くようになった。

それは火曜の定期通院、CTスキャンを受けた 『お買い物日記』 担当者は前の週に行った健康診断で胃のレントゲン撮影のために飲んだバリウムが大量に残っていることが判明し、これは一大事と医師に処方された下剤を服用したことに始まる。

24時間で出なければ医者に相談するよう促されているバリウムが 5日経っても大腸から小腸にまで残っているのは決して良いことではなく、一刻も早く出してしまうべきとの医師の判断に間違いはないだろうし、その婦人科の医師は 『お買い物日記』 担当者の目の前で内科の医師とも相談して出した結論だった。

処方されたのはラキソベロンという下剤。

副作用の少ない安全な薬であり、重い副作用はまず起こらないので高齢者や妊婦にも使用できるらしいのだが 『お買い物日記』 担当者には当てはまらず、とんでもない副作用に襲われることになってしまった。

その副作用を順に挙げると・・・。

●腹痛
 下剤なので一定程度は仕方がないが、服用して数時間後には腹痛が始まった。

●吐き気・嘔吐(おうと)
 これは辛かったらしく、何度もトイレに駆け込むこととなってしまったが、なにせ下剤の副作用なものだから上から下から状態であり、結果的に使いはしなかったものの念のためトイレ内に洗面器を準備したほどだ。

●目まい
 立っていられないほどの目まいに襲われながらも下剤が効いているのでトイレには行かなければならず、這って行くようなことが何度もあり、トイレの中でもフラフラでドカドカ、ドッカ~ン!という音が鳴り響いたので慌てて見に行くとドアの外に頭を出したまま唇を真っ青にして倒れていたことも一度や二度ではない。

●一過性の意識消失
 顔も唇も色を失い、冷や汗を流しているので貧血を起こしているのかと思っていたのだが、そのうちに問いかけに答えなくなり、眼球が上下左右に激しく動き出したので目まいと意識消失を併発したのだろう。

大量の冷や汗を流したからか、ガタガタと震えだして寒いと訴えたので布団乾燥機で温めた中に寝かせて様子を見ると少し落ち着き顔色も戻ってきた。

少し眠ると症状が緩和されたようだったが吐き気と下痢は続いた。

●頭痛
 夜になってやっと落ち着き、普通に就寝したのだが翌朝になって目を覚ますと 『お買い物日記』 担当者は頭痛になっていた。

ただでさえ頭痛持ちなのに副作用として頭痛を誘発する可能性があるのであれば頭が痛くなってしかるべきといったところではあるが、前日のひどい副作用に続いての頭痛は体力的にも精神的にも辛いことだろう。

便秘は解消し、バリウムも出たことと副作用が辛かったこと、意識消失を担当医にメールで報告すると、救急搬送されるまでの事態に至らず幸いだった旨の返信があったらしい。

人によってはもっと激しい副作用で救急搬送される可能性もあったということか。

副作用の少ない安全な薬とされているものでさえ、体調や体質によっては重篤な副作用を及ぼす危険性があるということは、やはりネットで販売できる薬も一定の規制が必要なのではないかと考えないでもないが、医師が処方して薬局で薬剤師から受け取った薬でも今回のようなことはあるし、厚労省が何を言おうと 『薬剤師の五感を働かせて購入者の特徴をつかむ』 ことなど不可能だという証左でもある。

とどのつまり、やはり利権を守ろうとしているのは医薬業界、官僚、政治家の側であってネット解禁による危険性は規制があった今までと大差ないのかも知れないが・・・。