テレビで妙な言葉遣いが広まっていることを伝えていた。
会社で上司なり先輩なりに
「これコピーして」
などと言われると、
「ありがとうございます」
と返事をするのだそうだ。
教科書どおりの返しであれば
「かしこまりました」
と言うのが正しいのだろうが、確かにこれでは硬すぎるような気がしないでもないし、『かしこまりました』 などと、それこそかしこまった言い方をするのも妙にこっ恥ずかしいものと思われる。
しかし、『ありがとうございます』 はあまりにも的はずれな返事だ。
なぜ頼まれごとをされて礼を言わねばならないのか。
私だって忙しいのに雑用なんか頼んでくれて 『ありがとうございます』、他にも新人がいるのに私めなんぞを選んでいただいて 『ありがとうございます』 という嫌味だと受け取られかねない危険性を微妙にはらんでいるような気がするのは自分の性格がひどく歪んでいるからかもしれないが。
そこは素直に
「はい」
と返事すれば良いだろうし、良いお返事をするのが照れるのであれば、
「何枚コピーしましょうか」
とか言って場を繋げば良いだろう。
最近、特に気になっているのは
「~じゃないですか」
「~じゃないですけど」
というやつだ。
言葉を重んじるはずの民放はおろか NHKのアナウンサーまで使い始めており、それが耳障りで仕方がない。
前者は
「明日はひな祭りじゃないですか」
などと使うのだが、普通に
「明日はひな祭りですね」
と言えば済む話であるし、
「明日はひな祭りですけど、家で何かされますか?」
と続ければ良いだけのことである。
それをわざわざ
「明日はひな祭りじゃないですか」
と相手にふっておいて
「はい」
とか
「そうですね」
と返事をさせた上で
「家で何かされますか?」
と会話を続けることが実に多い。
中には
「私ってぇ、家事とかできないじゃないですかぁ」
とか言うアホもいたりするので、テレビ画面に向かって大声で
「そんなこと聞かれても知らんっ!!」
と言ってやりたくなる衝動を抑え切れない。
後者は本当であれば肯定すべきところを否定的に言うパターンで、
「後悔先に立たずじゃないですけどぉ」
「あの時あーすれば良かったとか思ってるんですよぉ」
と、否定したくせに後に続くのは前文を肯定する文言だ。
なぜ素直に
「後悔先に立たずで、あの時は・・・」
とか
「後悔先に立たずと言いますけど、私も以前に・・・」
と話せないのか。
これらは芸能人が使っていたものが若い人に広まったものだが、いつまでも若いふりをしたいオッサンやオバチャンにまで感染しつつあるのが恐ろしい。
今までも、私って、俺ってまだまだ若いでしょと痛々しさ丸出しの中年が若者に迎合して妙な言葉や文化が根付いてしまったことは多い。
きっと、この
「~じゃないですか」
「~じゃないですけど」
という訳の分からない日本語も定着し、肯定文なのか否定文なのかの判断を困難極まりないものにし、日本語習得を目指す海外の人の脳を混乱させることだろう。