自己責任

長崎県でとても残念な警察の不祥事が起こってしまった。

被害届の受理を先延ばしにした理由が北海道への慰安旅行で、それをひた隠しにするどころか事件の検証開始直後に慰安旅行の事実を把握していたにも関わらず、その日のうちに 『問題なし』 と結論づけていたというものだ。

確かにストーカー事件の扱いは難しい。

妙な男に好意を持ち、積極的に自分に近づけたというのであれば多少は自己責任を問われる部分もあるかも知れないが、ある程度の付き合いをしなければ相手のことは分からないのだから仕方がないだろう。

ましてや好意もなく、また知り合いでもないのに一方的に付きまとわれ、身に危険が迫るまで事実を把握できなかった場合などは被害者に何の落ち度もなければ責任を問われることもない。

長崎ストーカー殺人事件はインターネットサイトでの出会いが発端となっていることも被害者にとって不利に働いた可能性も否定できないものと思われる。

出会い系サイトで犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たないのは周知の事実であり、それにも関わらずそんなサイトを閲覧したり、そんな場所で知り合ったからといって実際に会ったりするのは認識の甘さゆえのことだという意識が働くこともあるだろう。

確かに自分のように保守的な臆病者からすると、たかがネットで何度かやり取りした程度の人と実際に会うなど信じられないことであるし、余程の度胸があるか何も考えていないか思慮が浅い愚かなことだとは思う。

しかし、実際に起ってしまったことをやり直せはしないし、これを教訓に二度と軽々しい行為は行わないと深く反省もするだろうから身に及んだ危険を回避してやるべきだったことは間違いない。

自己責任、自業自得と思われることは多くある。

何年か前に殺人事件の被害者になったのは 16歳の女子高生で、犯人を憎んだし将来のある子どもが死に至ってしまったことを悲しむ気持ちもあったが、事件の経緯が明らかになってくると夜中の 2時に外出して男性と歩いている姿が防犯カメラに写っていた。

そうなると少し事情が違い、そんな時間にフラフラと遊んでいることが大きな問題だと思うようになってしまうが、それでもやはり、人を殺めた犯人が悪いのだから罪を裁かれるべきだし捜査当局は全力で捜査すべきだ。

理論的に有り得ないような配当金につられて訳の分からない案件に投資し、詐欺行為だと分かると急に被害者然として巧妙な手口にだまされた哀れな人間を演じ始める人たち。

誰がどう考えても信じ難く、明らかに嘘だとわかるような話に乗せられて金を出すということは、余程お金に余裕があるか欲の皮が突っ張っているのだと思ってしまう。

しかし、それでもやはり人をだます犯人が悪いのだから、捜査は行われるべきだし犯人は罰せされるべきである。

話を元に戻して長崎ストーカー殺人事件では、マスコミは被害届の受理を先延ばしにした警察を総攻撃して習志野警察署長が事実上の更迭となったが、その論調をまともに受けてはいけないような気がする。

たしかに怠慢だと言われても仕方がない事実ではあるが、受理を一週間延ばしたことが引き金となって事件が起こった訳ではないと思うからだ。

間違いなく昨年の12月6日に受理を見送っているが、3日後の9日には当時ストーカーの犯人だった容疑者に警告を発し、実家に連れ戻すということはしている。

その後、14日に届けを受理したタイミングと容疑者が実家から姿を消したタイミングが重なってしまい、その2日後の 16日に殺人事件が発生したので問題がこじれてしまった。

仮に 6日に被害届を受理していたとしても、それがストーカー行為に対する被害届であれば、警察にできることは 9日に行った警告と同様のことでしかなかっただろう。

実際に危害を加えられたりしていなければ現状の法律では逮捕したり身柄を拘束したりすることはできないのではないか。

被害届を受理しても受理していなくても、やれることは同じで少なくても9日に警察はやれる範囲のことはしている。

つまり、6日に受理していたら今回の犯行を防ぐことができたのか疑問であるし、それが引き金となって犯行が行われた訳ではないように思う。

警察の落ち度を全面否定する気はないが、いかにも警察の責任で事件が起こったかのような報道をそのまま鵜呑みにするのは避けるべきではないだろうか。

マスコミの報道をどう解釈するかも自己責任ということである。