デジタル化の波 Signal-10

デジタル化の波 ~目次~

Appleのスティーブ・ジョブズ氏が亡くなった。

まばゆいばかりの光を放ち、Appleという組織、そしてコンピュータ業界、人々の暮らしさえも未来に導いてくれた巨星だ。

その、あまりに強い輝きを道しるべとしていた Appleは、今後どこに向かうのか。

進むべき方向を自力で見つけられるのか。

経営理念のひとつである 『顧客に最高の体験をさせよう、驚かせてやろう』 の精神に基づいて数々のヒット商品を生み出し、確実に世の中を変えてきた影響力を、今後も維持していくことは可能なのだろうか。

携帯音楽プレーヤー 『iPod』 では音楽マーケット、流通を一変させ、消費者の購買ルートから音楽の楽しみ方、生活パターンまで変えてしまったし、高機能携帯電話 『iPhone』 の登場によって業界の勢力図にも変革が起きた。

そしてタブレット型端末の 『iPad』 の登場で出版業界まで変革の波にもまれ、時代の変革に取り残された出版社は淘汰の荒波に襲われている。

Appleは以前から他社と一線を画していた。

1984年1月に発売されたパーソナルコンピュータ Macintosh(マッキントッシュ)は、当時からすでにアイコンとウィンドウ(窓)からなるGUI(グラフィカルユーザインターフェース)を採用した OSで稼働していたのは驚くべきことだ。

現在主流となっている、いわゆる Windowsパソコンは、その当時は文字(コマンド)入力によってパソコンに命令して実行させる、とても分かり難い操作を強いられるものだった。

Microsoftがアイコン、ウィンドウによる操作を可能にし、速度的にも何とか使い物になる OSを発売したのは 1991年の Windows 3.0、世の中に認められたのは 1993年の Windwos 3.1、そして、広く世に知れ渡るようになったのは 1995年の Windows 95になってからである。

つまり、Appleは Microsoftより 10年は先を行っていた訳だ。

そして今、文章から写真、音楽、動画までデジタル化され、それを利用するための端末機器のありようが問われている。

より便利に、より簡単に誰でもが自由に使えるものが必要だ。

技術力を誇示するあまり、顧客の利便性をないがしろにしてきた日本企業は大きく方向転換しなければ世界を相手に生き残るのは難しいだろう。

Appleを見習い、顧客である我々に最高の体験をさせてほしい、驚かせてほしい。

そして、Appleも独創性を失うことなく、スティーブ・ジョブズ氏が見据えていた未来に向かって、これからも躍進していただきたいと思っている。