信じる者は

どこの国の、どの時代の哲学者なのか忘れてしまったが、「人は聞きたいと思っている話を聞くと信じる」 と言った人がいる。 それは正にその通りであって、単純には健康志向の人が 『みのもんた』 の話を聞けば 「なるほど」 と感心し、体重を気にしている人が 『あるある』 のダイエット特集を見れば、その信憑性など疑うことなく納豆を食べまくったりすることになるのだろう。

その他にも、良く思っていない人の悪い噂を耳にすれば、その情報の精度が低かろうと 「やっぱり」 と思ってしまうだろうし、自分の考えに近い意見を聞くと、それが正しいか間違っているかに関わらず 「思ったとおりだ」 と納得してしまう。 事が単純なものであれば大きな問題にはならないが、似たようなことがきっかけで大きなうねりの中に身を投じてしまう結果を招くこともあるので注意が必要だ。

欲の皮が突っ張り、利益を求めすぎた結果、誰がどう考えても怪しげな儲け話を信じてしまい、詐欺などに引っかかる人もいる。 去年の夏、自分にも怪しげな話を持ちかける人がいた。 プラチナやゲルマニウム、パラジウムなどのレアメタル (希少金属) の採掘現場 (国) から需要国まで運ぶ船を共同出資で借りると、40%以上の配当が得られるという儲け話だ。

そんなことにまったく興味がなかったし、40%以上という常識を逸脱した配当などあり得るはずがないので、口では 「へぇ~すごいですね~」 とか適当なことを言いつつも心のなかでは 「あほかっ!」 と馬鹿にしながら話しを聞いていた。 しかし、あまりにも熱心に勧めるのでイライラ感が MAX に達してしまい、矛盾点をいろいろ突いて相手を質問攻めにしてやることに。

それほど利益が上がるのなら、なぜ一人で儲けようとせず、複数の出資を募るのか。 それに対する答えは金額が大きすぎて一人で用意できる金ではないということで一応は 「なるほど」 と思える内容だが、その次がいけない。 この儲けをみんなで分かち合いたいから。 その時点で嘘臭さ 230%増しであり、そんなに徳のある人が儲け話など持ち掛けるか! と言いたくなる。

40%以上の配当の根拠はいかに? それに対する答は出るか出ないか分からない鉱石を今から採掘するのではなく、すでに出ているものを運ぶだけなので間違いがないこと、すでに売り相場も決まっているので価格変動リスクもなく、唯一のリスクは悪天候などで船が沈没することだけだと言う。 だとすれば保険をかけた上で銀行融資を申し込めば何も問題はなく、出資を募る必要がないではないか。

その後もグチグチと説明しようとしていたが、あまりにも腹が立ったので、この手の話を持ちかけるようであれば、今後一切、会うことも話すこともないと告げて席を立った。 その後、それとは違う事情で彼とは会っていないが、今頃どうしているだろう。 そして、あんなに怪しげな話に乗って金を出した人はいるのだろうか。 いや、金が欲しくてたまらない人は投資したりしたのかもしれない。

このような詐欺まがいのことだけではなく、自分が苦しくて助けを求めた結果、それがたとえカルト的宗教でも信じてしまう人がいる。 誰がどう考えても変な教えや、不必要なくらいの金品強要、しまいには空を浮遊することができるという非科学的な体験談を披露する教祖様まで現れる始末なのに、それを信じて疑おうともしない。 高額なグッズに身を包み、幸せそうな顔をしている。

一般常識から見れば、どんなに理屈に合わないことであれ、本人が幸せならばそれで良いのかも知れないが、それは一過性の心のよりどころでしかなく、現実に返った時には抜けるに抜けられず、たとえ抜けられたとしても、すべてを吸い上げられた後で金もなく、一般社会に復帰するのも大変な苦労を伴なうというのがオチである。

別に自分が冷静であるとは思わないが、何でも疑ってかかる性格なので、今のところは妙な誘いに乗らずに済んでいる。 しかし、それと同時に UFO の存在やツチノコの存在は信じて疑わなかったりするアンバランスな考えの持ち主であるのが困ったものであるのは自覚していたりするのだが・・・。